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2017/11/21 00:36 |
NEW WINDの物語 第42話「一期生」

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその53「復権」およびその54「お嬢様」に該当するお話です。)


◇6年目5月◇

 第一試合で南利美&ハイブリット南組が登場するのが今月の定番だ。
「多分私が完璧な試合を出来るのはあと一年。だから…その間に伝えておきたいと思うの」
 今年21歳になる南は、女子プロレスラーとしての成長のピークを過ぎ、女性へとなろうとする体を誤魔化しながら維持している。
 一般社会であればまだ若い21歳であるが、女子プロレスラーの本当の寿命は短い。
 選手によって差異はあるものの、24歳までで本当の能力は発揮できなくなって引退してしまうことが多いものだ。南は自分の現役期間をあと2年くらいとみているのだろう。
 今年1年はなんとかキープできるかもしれないけど、来年からはそれも辛くなる…と感じているようだ。
 南は16歳でデビューしている。他の選手が15歳でデビューしているわけだから、1年選手寿命は短いはず。
「サザンクロス伝承…なんて柄じゃないけど、ハイブリットにはできるだけ残しておきたいと思っているの。」
 南がいなくなる団体なんて考えたくないが…しかしこれは現実に起こる事だ。いや、南だけじゃない。他の1期生たちも遠からずリングを去るかもしれない。団体を経営する者としては頭の痛い話だな。折角ここまでになってくれた大事な選手達が抜けることも考えないといけないのだから。
 「ずっとこのメンバーでやっていければいいな」と思うのだけど、それは適わぬ夢だろう。
 結局南&ハイブリット南の姉妹タッグは3勝4敗でシリーズを終える。
 姉の力での勝利がほとんどだったが、ハイブリットは最終戦で初勝利を上げた。『脇固め』での勝利。姉、南利美の最初の勝利もそれだったような気がするけどね。
 なお、このシリーズでは『EWA王座戦』が開催され、王者武藤を前王者結城が下し、王座に返り咲いている。

 旗揚げ6年目に突入した興行も大成功。全ての会場で札止めを出し、連続札止め記録を40へと伸ばしていた。
「会場が埋まるのはありがたいけど、マッチメイクに悩むよな…」
 私は一人呟く。
 まず6期生のハイブリットに当てる選手がいないのが大きな悩みだ。南とタッグを組むときはいいけど、シングルで使おうとすると本当に相手がいない。なにしろ一期上の吉田との差がありすぎる。これは毎年の事なのだが、うちの選手は1年の間に想像以上に成長してしまうものだ。
 NEW WINDは厳選した人材しか入団を許さない。そして、他の団体では数年かけてジュニアを卒業するのにうちの所属選手は1年でヘビー扱いしている。
 一年後に後輩がデビューする頃には、ジュニアには誰も相手がいなくなるという繰り返しになってしまうのだ。同期がいれば問題ないのだが、4期永沢以降は毎年一人づつしか入団していないからなあ。
 そして…一期生の実力差もマッチメイク上では頭痛の種だ。エースの伊達と南は、トップ戦線に踏みとどまっているし、それぞれハイブリットとの姉妹タッグや、永沢との師弟コンビがあるので困らない。
 だが『ジューシーペア』の二人と氷室は完全に主軸から外れてしまっている。実力の世界だから仕方がないことかもしれないが、デビュー前から知っている私としては複雑な思いだ。
 マッキー&ラッキーは『ジューシーペア』として休憩前後で外国人チームと対戦したり、後輩タッグ(永沢&吉田)の壁になったりしている。うーん、一時期はタッグ戦線でも主軸だったのだが。そして氷室は一期生で…いや、新人のハイブリットを除く所属選手で、唯一ベルトを巻いた事がない選手だ。
 彼女に言わせると「それも運命です。」だろうけども…氷室の実力は1期生ではNo3あたり…団体ではトップ6の下あたりになるかな。
 前は隠れた実力者というポジションだったのだが、今では隠れるというよりも埋もれてしまっている。氷室にはベルトを巻かせてあげたいのだがなあ…ファンクラブの人数と応援の熱さと暑苦しさ(※)ではダントツの王者なのだけどな。(※ファンクラブの構成バランスで一番男性比率が高い)
 確かに私から見ても可愛いと思う。今はタイトル戦への目が厳しくて、ある実力差があると思われるカードは組めない。すぐに管理団体から返上しろって命令がくるからね。
 シングルではトップ6+カオスぐらいしか認めてもらえないだろう。タッグなら可能性もあるけど、パートナーがいない。チーム『運命』イザベラとのタッグでは実力不足だしね。
 このあたりは一期生を奇数にした私に責任があるので、氷室には申し訳ない感じだ。ここらで、何か氷室を売り出すきっかけが欲しいと思っているのだが…なかなかも思いつかないものだ。シングルでも無理、タッグも相手がいないとなると、どうしたらいいのだろうか。6人タッグではベルトはないしなあ。

「社長、氷室さんに映画出演のオファーが来ていますが。」
 考え込んでいた私に、いつの間にか現れた秘書の井上さんが声をかけてきた。
「氷室に映画か?ふーん、どんな作品なのだろう?」
 私は企画書に目を通した。
「なるほど…確かに配役としてはあっているけど、本人がやるっていうかが問題だな。」
 映画の内容は女子プロレスを題材にした映画で、人気絶頂のお嬢様アイドルがプロレスデビューするという設定だそうで、『女子プロお嬢様伝説 ユイナ』というタイトルだそうだ。
なお主演は超人気お嬢様アイドルの神楽坂ユイナだ。天然系だけど元気一杯。ま、この子が主演ならコメディぽくなるだろうけど。
 氷室の役回りは、普段は人気カリスマ占い師、そして夜になるとリングに上がる神秘のお嬢様レスラー氷室紫月役。氷室ならお嬢様ぽく見えるし、それに映画の中とはいえベルトを巻くシーンもあるそうだ。氷室にベルトを巻かせてやりたい…そう思った私は氷室を呼び、映画のオファーの話を提示した。

「これも運命ですね。」
 氷室はそういって台本を受け取り、台本をめくった。
台本をめくっていた彼女のおよそプロレスラーらしからぬしなやかな指の動きが止まる。
「…ベルト…巻ける。」
 彼女の呟きは嬉しそうだった。それを聞いて私は、彼女の本当の気持ちを理解した。
 いつも運命という言葉でごまかされてしまっているけど、本当は彼女だってベルトを巻きたいに決まっている。初めて氷室の心を理解できた私は…なんだかはじめて告白された男子学生のような気持ちになっていた。
「氷室…受けるか?」
「はい。これも運命…ですから。」
 氷室の映画出演はこうして決定したのだった。 

 なおスポンサーは、あの市ヶ谷財閥なので、市ヶ谷財閥の令嬢である、あのビューティ市ヶ谷(フリー)もお嬢様トップヒールとして登場予定らしい。ある意味そのまんまの役だな。
 みことにも同映画への出演依頼が来ていたが、同時期に二人は出せないという事でお断りさせていただいた。それに氷室の方が出番が圧倒的に多かったしね。
 氷室の映画出演を聞いた他のメンバーは…
「かーっ、アタシにはオファーなかったのかよ。ぴったりじゃねえか。」
「…マッキー先輩のどこがお嬢様なんですか。お嬢様性なんてゼロじゃないですか。」
「なんだとこらあ、武藤のクセにナマイキだぞ!」
 またはじまったよ。
「二人ともお嬢様役は無理ね。他にうちで受けられそうなのは…遥かな。」
「えっ…私…?」南の言葉に伊達が恥ずかしそうにうつむく。
「この映画は第2弾も作る可能性はあるそうだし、頑張っていれば話くるかもしれないぞ。」
 私のこの言葉に映画出演に憧れる面々は目が輝いていた。みんな映画に出たいのかなぁ。だとしたら、スマン。お前達の映画出演のチャンスは、私がほとんど握りつぶしているのだから…興行を優先させるためにね。 

「マッキー先輩ならぴったりの役ありますよ。」
「へーそうかな。」
「『ヘラクレス』とか『アマゾネス』…それと『ゴリラ』とかね。」
「おーイメージぴったりかもなあ…って武藤この野郎!」
 逃げる武藤に追うマッキー。このやりとりで道場は笑い声に包まれた。




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2008/09/02 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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