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2024/03/28 23:05 |
NEW WINDの物語 第55話「太陽がいっぱい」  

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその70「太陽がいっぱい」に該当するお話です。)

 ◇7年目9月◇

「只今の試合は、30分時間切れ引き分けです!」
 氷室とハイブリットのシングルマッチは、両者が白熱のカウント2.9の攻防を繰り広げている最中に試合終了のゴングが鳴らされた。
 引き分けという結果に氷室は負けたように憮然とした顔で退場し、また先輩と引き分けたハイブリットも勝てなかったことを悔やみながら引き揚げていった。それにしてもハイブリットの実力は予想以上についてきているようだ。
 これに活気づいたのか、新世代と呼ばれる永沢舞・吉田龍子も結果を残す。永沢が氷室を必殺のテキーラサンライズで撃破すれば、吉田は先輩マッキー上戸をこれまた必殺のプラズマサンダースライド(ハイアングル・プラズマサンダーボム)で撃沈。もう完全に新世代が一期生を押し始めたといっていいだろう。
 そして…その勢いは留まる事を知らず、さらに衝撃的な事件が起きるのであった。

「すっごいのいきまーす!!」
 永沢はアピールしてから南を引き起こし、テキーラのクラッチに入る。
「おおっ!」
 すでに永沢のテキーラは必殺技として認知されており、クラッチに入っただけで沸く技になっている。
「くっ・・・このっ・・・」
 振りほどこうとする南だったが、永沢はそれにお構いなしに強引に技に入る。
「てええええええいいいいいっ!」
 永沢は完璧なフォームで南を投げ切った。あれだけ強引に持っていきながら完璧なブリッジで投げ切ったのは強靭な足腰を持つ永沢だからこそできる芸当だろう。
「返せ~~!!南~~!!!」
 ファンからの声援が飛ぶが、南はまったく動かない。
バン! バンッ!2度マットを叩いたトニー館が首を左右に振った。
 ああっ・・・ついにその時が来てしまったか。 
「あ~~~~っ…」
バンッ!そして・・・カウント3が入った。
「21分54秒 テキーラサンライズにより勝者、永沢舞!」
 ついに南まで陥落したか。・・・永沢の成長恐るべし。嬉しいような寂しいような複雑な気分になってしまったが、経営者としては歓迎すべきなのだろうな。永沢の成長と南の衰え・・・反比例する成長曲線がいつかは交わり、永沢の成長が上回る日が来るのはわかっていたけど・・・
 なお最終戦のメインのEWA認定世界ヘビー選手権は、王者結城が粘るカンナを下し3度目の防衛に成功している。
 
◇一期生との懇談会◇

「皆強くなってきちまったな。アタシたちは喜んでいいのか悪いのか複雑だぜ。」
「後輩達の成長は喜ばしいですよね。でも私たちは現役のレスラーです。やっぱり抜かれるのは悔しいです。」ラッキーのこの言葉が全てを表現しているだろう。
「でも、これも運命。」
「かーっ!またそれかよ、紫月は。」
マッキーは右手で頭をボリボと掻く。
「でも・・・紫月がいうのも間違ってないわ。」
「南さん・・・」
「私達は先に生まれて、先にデビューした。これがそもそもの運命だと思う。」
「そう・・・なのかな?」
伊達が口を挟む。
「遥はまだトップスターレスラーだから、わからないんじゃない?」
「・・・そんなこと・・・ない。私・・・だって後輩に負けているから・・・」
「負けているっていっても2期生と3期生だろう。」
「あの子たちは素質が抜けているからね。」
「それは言い訳よ、佐知子。それに蒔絵もだけど。」
南がジューシーペアをたしなめる。
「でもよー、あいつらおかしいって。」
「そうよね。成長のスピードが異常だもの。」
「彼女たちの才能も運命です。」
氷室は場の空気に関係ないマイペース発言。
「確かに、2期生・3期生は才能に恵まれているわ。だけどそれが何?才能で劣るなら努力で補いなさい。それを妬むなんて情けないわ。」
 南はジューシーペアの二人を睨みつける。
「まだ貴方たちには時間はあるじゃない、工夫する時間だってまだ残っているわ。まだ、チャンスはあるのよ!そのチャンスを放棄するというのなら、そのチャンスを私に頂戴!」
「南・・・さん・・・」
ジューシーペアは呆然として南を見る。
「私は・・・努力をしてももうキープすることすら出来ない・・・のよ。」
「ごめん・・・南さん。」
「そうよね・・・諦めたら終わりだものね。」
「南さん、まだ出来るから・・・大丈夫。」
伊達は寂しそうな顔をしている。
「遥、貴方慰めがヘタね。そんな顔して言われたら悲しいだけじゃない。もっと笑っていってよね。」
「ご、ごめんなさい・・・」
「はっは、南さん、まだトップじゃん。」
マッキーは笑う。
「?」
「これだけアタシたちに。そして後輩たちにいえる人はいないよ。南さんは存在感でトップだと思う。」
「そうよ、南さんはまだ必要な人。かってに辞めないでよ。」
「南さんの存在も運命ですね。」
「・・・何を言っているの。存在感だけあっても仕方ないじゃない。」
「いいやそんな事はないぞ。」
ようやく口を挟むことができた。
「お、社長いたんだっけ。」
「忘れていたね、マッキー。」
「・・・南、人はね、誰かの太陽になれるものなんだよ。」
「太陽?」
「そう。南の存在が誰かを支えている事もあるし、逆に別の人間の存在が南を支えているかもしれない。そういうものさ。」
「ふーん。よくわからないけどわかったような気がするぜ。」
「ま、確かに私達はライバル・仲間・後輩・お客様・スタッフに支えられているし、その逆でもあるし。」
「それも運命です。」  
「まだまだ元気だって事、見せてやってくれよな。私としては新世代の成長は嬉しいけど、一期生が寂しそうに試合なんかしていたら悲しいのだからな。」
「あら、私たちも社長の太陽なのね?」
「へっへ、その響き悪くないな。」
「太陽の女神、ラッキー内田。」
「氷室紫月。」
「紫月、お前は月の女神じゃねえの?どっちかといえばさ。」
「私も・・・太陽なの?」
「太陽か・・・悪くないわね。」     
こうして一期生5人衆は明るさを取り戻してくれたわけだ。落ち込んでいる暇なんてないぞ。まだまだ一期生には頑張ってもらわないといけないのだから。
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2009/04/16 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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