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2024/11/25 01:54 |
NEW WINDの物語 第19話「EXーSタッグリーグ開催」

 編集部より。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅加筆・修正を加えた物です。

 以前の作品と比べると印象が変わるかもしれませんが、風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を再度楽しんでみてください。

 ※今回は4年目12月のお話です。※
(NEW WIND編のその24「EX-S」および その25「EX-Sはじまる」の前半部分のお話に該当します。)


「EXタッグリーグ?そんなものに興味も価値もありませんよ。だいたい、EXタッグって何のためにあるのか知っていますか?」
 私は傲慢な態度で、私を取り囲む記者さん達へと質問した。
「女子プロレス界ナンバー1のタッグチームを決める大会ですよ。」
 記者の一人が常識的で、もっとも当たり障りのない答えを返してきた。
私は多分そう来るだろうと思っていたのだが…
「フ…フハハハハハ!!これはお笑いだ。記者さん、あなたは何年女子プロレスの取材をしているのですか?」
 私のこの切り返しに戸惑いを見せる記者さん。
 悪いですねえ、今日の私はいつもの善玉社長風間新ではなく、『ヒールな社長』風間新なのだから。
「10年目になります。」
 律儀な記者さんだこと。
「ほう、10年ですか。まあ何年でもいいけどね。」
「はぁ…」
 記者さんは困惑を隠せない。
「あのEXタッグリーグは、『新女が一番!』という事をファンやマスコミに見せ付ける為だけの大会なのですよ。『女子プロレスでこれだけの観客とメンバーを集める事が出来るのは新女だけだ!』という事をマスコミやファンに無意識のうちに意識させる。そのための大会です!」
 記者は誰も言葉を発しない。
いつもの私とはまったく違う発言をするから戸惑っているのだろうな。
 戸惑って当然だ。なにしろ、こうやって発言している私だって内心戸惑っているのだから。
「女子プロレスナンバー1は新女じゃない。このNEW WINDですよ。我々の参加しないタッグリーグなんて、例えるならば、ハンバーグのないハンバーグ定食、牛肉のない牛丼ですよ。もしくはメインイベンターのいないプロレス興行とでもいいましょうか。」
「…つまり新女なんて前座にすぎないと?」
「そうとってもらっても結構です。我々のいないEXタッグなどに価値はない!本当に価値があるのは我々が主催する『EX―S(イクスエス)タッグリーグ』だ!」  
 この発表にざわつく記者さん達。
「…思いっきり意識していますね。」
「名前は似ているけどなぁ。中身のレベルが違うのだよ。まあ正直なところ、名前なんてどうでもいいのだよ!どちらがより輝くタッグリーグになるかはなんてことは、やる前から分かっているわけだしよ。大体タッグリーグのおかげで、レスラーが輝くわけじゃねえ!レスラーが輝いているから、リーグ戦が輝くんだよ!!」 
「おお・・・!」
 ふー疲れた。あんなヒールぶって大会告知をするのはもうやめだ。正直しんどいし…
 ただ、頑張ったおかげで反響は凄い。
ネットでは風間新を称えるスレッド、風間新を潰すスレッドが出来ているらしい(苦笑)
「どこかの田舎社長が遠くから吼えているらしいけど、うちのタッグリーグから逃げている奴らのタッグリーグなんて問題じゃないよね。」と新女勢も反発してくれたし。これで少しは業界に活気が出たかなあ。
 この会見をする前は、必死でヒールのしゃべりを勉強したよ。
「上手くできたかなあ」
「まだ完璧じゃないわね。」
「うるさいよ、南!私だって完璧に出来たとは思っていないし。」
「まだまだね。」
 
さて話題沸騰のEX―S(イクスエス)タッグリーグ参加チームは以下の通り。
 表記はパンフレット記載内容を転載

☆『サイレントヴォイス』伊達遥(1期生)&カンナ神威(2期生)組
 1期生の伊達遥と2期生カンナ神威のタッグチーム。
タッグチームらしいタッグチームではないのだが、個々の能力の高さゆえに強いチーム。 現AACタッグ王者としてすでに7度の防衛に成功しており、ダントツの優勝候補といえるだろう。 
 欠点としては利点の裏返しでもある、個々の能力の高さゆえのタッチワークの遅さかな。 

☆『パーフェクツ』南利美(1期生)&草薙みこと(2期生)組
 現EWAタッグ王者。サイレントヴォイス同様に1期生と2期生のコンビ。
 こちらはサイレントヴォイスとは違い、抜群のチーム力を誇る。
お互いの欠点をフォローしあえるチームであり、個々の能力もハイレベル。
 打倒サイレントヴォイスの一番手といえる存在。
 『完璧を求める女』南利美が「理想のパートナーと組めた。」と豪語するだけのチームであり、サイレントヴォイスとは違う強さを持ったチームだ。
  
☆『ジューシーペア』マッキー上戸(1期生)&ラッキー内田(1期生)
元EWAタッグ王者組。 最近は戦績が振るわないが、チームとしての完成度は高い。 
デビュー当初から、このタッグでの活動が多くチームキャリアは一番。
タッグチームとして成熟期に入っており、安定した試合内容にファンも多い。
ただ、サイレントヴォイス、パーフェクツに比べると個々での能力が劣る面がある。 
それでも優勝するだけの力はあるし、風間社長は、「EXなら全勝優勝ですよ。」と高く評価している。 

☆『νジェネ』 結城千種(3期生)&武藤めぐみ(3期生)組
チームとしてのタイトル経験はないが、すでにタッグ王座戦線の常連となりつつある新鋭チーム。プロレスキャリア1年半とは思えない実力を持っており目が離せない。
 今大会で先輩達を食えるかどうか。壁は厚く高いかもしれないが、超える可能性は十分。
風間社長は「νジェネでもEXなら優勝できるだろう」と豪語している。

☆『チームV』ナスターシャ・ハン(EWA)&永沢舞(4期生)組
成長著しい永沢舞がデビュー半年で飛躍のチャンスを掴んだ。
あの強豪ナスターシャ・ハンとのタッグ結成に永沢は燃えている。
 「組んでくださった、ハンさんに感謝!カンシャです!」
  永沢が、ハンの足を引っ張らなければ上位チームとの差はない!

☆『黒船』ウイン・ミラー(EWA)&エレナ・ライアン(フリー)組 
 ウインがどこまでエレナを引っ張れるか。下馬評では不利だがそれを覆して上位を狙う。    

☆『外来種』・・・アリス(EWA)&ディジー・クライ(EWA)組
 破壊力はかなりのもの。 嵌れば上位も!

『運命』氷室紫月(1期生)&イザベラ・スミス(フリー)組
パートナー不在の、不遇の一期生氷室が自分で見つけ出してきた”運命のパートナー”イザベラ・スミスとタッグを結成。
 この運命の出会いの結果は果たして・・・今大会の台風の目となるかもしれない異色タッグだ。

 
◇4年目12月◇

 話題沸騰のEX―Sタッグリーグがいよいよ始まる。
チケットの売れ行きは上々で、この分ならほぼ全大会満員御礼確実。
あとはどれだけ当日券が伸びるかだな。ともかく楽しみな興行になりそうだ。
ちなみに新女のEXタッグより上だと証明する意味もあり、会場は全て新女が押さえた会場より大きい(笑)
ただ、正直なところを言ってしまえば、8チーム参加のうちの外国人チームは人数合わせな感を否めないよなあ。
 だが、それはEXにしても同じ事だ。
真の強豪が8チーム集まるなど、普通に考えて実現はかなり難しいだろう。 
 上位チームの実力では、うちの方が圧倒的に上だ。
 タッグ王者である、サイレントヴォイスとパーフェクツは言うまでもなく、ジューシーペアでもνジェネでもEXを優勝するだけの実力はある!

 さて、ここで『運命』氷室紫月&イザベラ・スミス組に触れておきたい。
 実はNEW WINDの参戦選手は、所属選手、フリー参戦、EWAの派遣選手全てあわせても15名しかいない。
これでは1名足らず、EX―Sは開催できない状況だった。
12月のEX―S開催を決定していた私たちとしては、どうしてもあと一名の選手を確保したかったのだが、12月といえば新女のEXがある。
 そのため新規に海外団体との提携も出来ず、どうしても最後の1名が埋まらない。
 
 そんな時に・・・運命の出会いというものはあるものだ。

11月シリーズで組まれた伊達&カンナVSみこと&氷室のAAC終了後、私と氷室を訪ねてきた人物がいた。
「社長、変な外国人が、『社長と氷室を出せ』と言って訪問してきていますが・・・」
 相変わらず表情が読み取りにくい秘書の井上さんが社長室へ飛び込んでくる。
 飛び込んできたわりに表情はいつもの表情のままなので、どうにも事態が読めない。
「…変な外国人?私に外国人の知り合いはいなくもないけど『変な』とつく外国人は知らないな…」といい終わらないうちにその変な外国人は社長室へとやってきていた。
「ハロー。あなたが社長さんネ?ワタシはイザベラ・スミスとイイマス。ヨロシク~ね。」
(ブロッコリー…だな) 
これが彼女を一目見た私の感想だ。
正確にはアフロヘアなのだろうけど、緑色に染められると、どう見てもブロッコリーにしか見えない(笑) まあ、ブロッコリーはおいて置くとして、彼女は日本語が話せるらしい。
以下は長くなるので詳細なやり取りは略すが、彼女はAACのタッグ戦を生観戦していて、氷室のファイトに感動したという。
 氷室に正式なタッグパートナーがいないと聞き、是非タッグを組みたいと直接交渉しにやってきたわけだ。
神秘的な美しさの氷室と、明快なブロッコリーのコンビ。
まるで対象的だが、得意技のカテゴリーも違うし意外といけるのかもしれない。
ひとまず判断は氷室に任せてみようと思い、氷室を社長室へ呼んでみた。
 
「あなたが…私と組みたいって人?ブロッコリーさん?」
 こらこら氷室。 ストレートに言っちゃダメでしょうが。
 私だって言ってはいないぞ。   
「アハハ。ノーノー、ワタシはイザベラです。ヨロシク、シズク。」
 どうやらイザベラは、ブロッコリー慣れをしているらしい。まったく気にせず、ニコニコしている。

 その後色々なやりとりがあって、氷室のお得意の『運命』が飛び出したというわけ。
 チーム運命はこうして誕生。
 投げのブロッコリー・イザベラ、絞めの氷室。
この異色のチームがどこまでいけるか楽しみだね。

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2008/03/06 20:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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