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2024/11/27 00:34 |
『もう一度あの日のように~再会~その27「再会の挨拶」』
NEW WIND社長 風間 新 手記より。

※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
 このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
 単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。

 ※※再会試合について※※
 この試合に関しては、ほぼリアルタイムでお話が展開します。

 今回は2分30秒から5分経過までの出来事です。



 二人は、お互いにガードを固め、相手の出方を伺いながらゆっくりと距離を縮めていった。緊張感を漂わせながら、1メートルの距離にまで近づくと、二人ともまったく同じタイミングでガードしていた腕を下げた。
場内は一瞬ざわざわとしたが、すぐに静かになった。
 一つ……二つ……三つ……3呼吸置いて南の右腕が動いた。右手の動きに観客席12万の瞳が集中する。
 掌を上にして構えた南は、伊達の胸元近くに伸ばす。この動きから放たれる技は一つしかないはずだ。

「ハアッ!」
 その右の掌を上に向けたまま自分の体に引き寄せると、掌を反転させて逆水平チョップを伊達の胸板に叩き込んだ。
 バチーン!といういい音が場内に響き渡った。
「おおっ!」その音の大きさに場内から驚きの声があがる。
「これが引退していた選手のチョップかよ!」
 上戸が思わず叫ぶ。うーん、確かに現役選手と遜色がない…いやそれ以上のチョップだな。 
 打ち込まれた伊達も威力に驚いたのか、目をパチクリしていたが、すぐに表情を引き締めると、甲を上にして右手を引き、「タアッ!」と逆水平チョップをお返しだ。
 バチーン!
「おおっ!」場内から感嘆の声が漏れる。
 伊達のチョップも重い。とても引退していた選手の技には見えない。
「遥もやるわね。」
 理論派の内田も驚きを隠せない。
「つっ…」その威力に南は顔をしかめたが、もう一度掌を上にして右手を引いた。
 この掌を上にして手を引くのが南の独特なチョップの構えだ。打ち込む際は、上向きの掌を半回転させて、スナップを利かせた逆水平チョップを打ち込む。
「ハアッ!」
 バチイッ!
「ぐっ…」
 一発目よりも重いチョップが決まり、伊達の上体がかすかに仰け反った。
「……」
 体勢を立て直した伊達は、キッ!と南を睨みつけると、再び甲を上にして右手を引いた。伊達は南とは違いスナップは効かせないが、直線的にスピードに乗ったチョップを打つ。
「タアッ!」
 バチイッッ!
「おおっ!」
 南は片目を瞑り、ダメージを堪える。
「ハアッ!!」
 バチイッッ!
「タアッ!」
 バチイッッ!
「…風間社長、二人のチョップが、何故これほどの威力があるのか、理由がおわかりになりますか?」
「…ええ。二人のチョップには気持ちが乗っているからです。」
 二人のチョップの打ち合いは続いている。
「…正解です。さすがは風間社長ですな。」
「いえ。ダンディさんのおかげですよ。」
「ふふ…それはさておき、単純な筋力だけなら現役選手の方があきらかに上です。ですが、二人は体重を乗せ、想いを乗せてチョップを打っている。だから、現役選手よりもいいチョップが打てる。」
「ハアッ!!」
 バチイッッ!
「タアッ!」
 バチイッッ!徐々に両者のチョップの間隔が短くなってゆく。
「ダンディさんによく言われたよな。」
「そうね。『魂を込めたチョップはフォールをとれる!』ってね。」
 バチイッッ!
「二人のチョップを観ているとそれがわかる気がする。」
「だね…でも若い子たちにはこれだけの想いを乗せたチョップはまだ打てないわ。」
「だな。うちらもそうだけど…南さんも伊達もあの頃はここまでのチョップを打ってなかった。」
 両者とも一歩もひかない。
「…くっ!」
 バチイッッ!
「このっ!」
 バチイッッ!
 チョップの威力は衰えない…いやそれどころか一発ずつ重くなっているような気さえする。伊達も南もお互いの想いを込めてチョップを打ち合っている。たかがチョップ、されどチョップ。二人の打ち合いに、観客ものめりこんでいる。
「ハアッ!」『ハアッ!!』
「タアッ!」『タアッ!!』 
 二人のチョップにあわせ、場内から掛け声が飛ぶ。
 南のスナップを効かせたチョップには、『ハアッ!!』の声が飛び、伊達の直線的なチョップには『タアッ!!』の声が飛ぶ。
『ハアッ!!』
 バチイイイイイッ!
その声が乗り移ったのか、南のチョップの威力がさらに高まった。
『タアッ!!』
 バチイイイイイイッ!
 伊達も負けてなるものかと強烈なチョップを打ち込む。
『ハアッ!!』
 バチイイイイイイッ!
『タアッ!!』
 バチイイイイイイッ!
『ハアッ!!』
 バチイイイイイイッ!
『タアッ!!』
 バチイイイイイイッ!

「基本の大事さ、気持ちを乗せることの大切さ…現役選手たちに伝わるだろうか。」
 私は呟いた。
「きっと通じますよ。あれだけメッセージが込められていればね。でも、まだまだこれからです。このチョップ合戦は、伊達と南の“再会の挨拶”にすぎないのですから。」
 永遠に続くかと思われたチョップ合戦だったが、ついに均衡が崩れる時が来る。
「遙っ!」
 南の渾身のチョップが伊達の胸板を打ち抜いた。
「くっ…」
 伊達の表情が歪み、足元がふらつく。
「姉さん!」「南さん!」
 南側セコンドのハイブリット&相羽が檄を飛ばす。これまでは一発ずつ交互に打ち合っていたのだが、伊達がチョップを返せない。チャンスと見た南が一気にチョップを連打する。
 チョップの連打!連打!連打!その一発一発に魂を込めている。
『ハアッ!!』
 バチイイイイイイイッッ!!
「くうっ…」
 顔を歪めた伊達は、ついにガクンと右ひざをついた。
「ハアッ!」
 南はお構いなしに、ためらいなくチョップを打ち込む。
 ヒザをついた分だけ打ち込む場所がずれ、南のスナップを効かせたチョップが伊達の喉元をえぐった。
「あぐうっっ…」
 これは効いた!伊達は仰向けにダウン、大きく後ろ受身をとった。
「南、カバーだ!」と数人の観客から声が飛んだ。一番声が通っていたのが、豆腐屋の哲さんだろうな。
 しかし…南はカバーに行かずに3歩後ろに下がると、右の掌を上にして前に突き出す。そして…4本の指をクイッ!クイッ!と動かし『立て』と促した。場内は何故カバーにいかないのかと訝しがる。
「遙、三味線はやめたら。」
 南はそう言い放った。
「…なんだ、バレてたんだ…」
 伊達はヘッドスプリングで起き上がると、チョップを受けた喉元をさすった。
「私の知っている伊達遥は…この程度の技で沈むわけがないわ。」
 そう。南も伊達もこの程度の技で沈むほどやわじゃない。
「チッ…いいなあ、あいつら。」
「うらやましいわね。」
 解説の上戸と内田が声を揃える。
「さあて…この後はどうでますかな。」
 ダンディさんは楽しそうだ。
「試合時間5分経過…5分経過」
 伊達と南の9年ぶりの再会は、早くも開始から5分が経過していた。

【5:20】



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2008/05/03 18:00 | Comments(0) | もう一度あの日のように

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