NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
※※再会試合について※※
この試合に関しては、ほぼリアルタイムでお話が展開します。
今回は8分手前から10分経過までの出来事です。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
※※再会試合について※※
この試合に関しては、ほぼリアルタイムでお話が展開します。
今回は8分手前から10分経過までの出来事です。
再び鏡合わせの構えで正対する伊達と南。
「タアッ!」
「ぐっ…」
威力のある伊達のローキックを受けた南の表情が歪む。
「タアッ!タアッ!タアッ!……タアッ!」
ローキック3連打からジャブ掌底へのコンビネーションを決めた伊達は、痛む右腕で三度ストレート掌底を放った!
「甘いっ!」
伊達の打撃に押されながらも南はこれを待っていたようだ。
「わああああっ!」
伊達の右腕がキャッチされたのを見て、場内から悲鳴と歓声交じりの声が上がる。
「…ハアッ!」
南はその腕を捻りあげながら体勢を入れ替えると、捻り上げた右腕を一気に自分の肩を支点にして打ちつけた。ショルダーアームブリーカーだ!
「ああうっ!くうっ!」
伊達の表情が苦痛に歪む。見ている私の顔まで歪むよ、これは。
「もう一丁!」
南は伊達の右腕を高々と上げ、再び振り下ろす!
「あぐあっ…」
伊達が再び悲鳴を上げた。
「もう一回行くわよ!」
南は楽しそうにそう宣言した。
「伊達、切り返してくれ!」と、伊達ファンが悲痛な叫びを上げた。その気持ちは痛いほどわかるな。
「南さん!やっちゃってください!」
そうかと思えば南のファンからはこのような声援が飛んだ。会場の数パーセントの人間が軽い笑い声を上げたが、それは泡沫のように消えてすぐに引き締まった空気が支配した。会場の全ての視線が、伊達の右腕に注がれる。南は視線を集めるだけ集めてから、その腕を勢いよく高々と振り上げた。
「ハアッ!」
気合をこめて振り下ろす南。
「わああああああっ…」
場内からは伊達のダメージを想像した悲鳴が巻き起こった。そしてリング上では伊達が悲鳴を上げ、右腕を押さえる…というシーンになると思われたのだが…
「ぐうっ…」
逆に呻き声を上げたのは南のほうだった。
「おおおっ!」
伊達が振り下ろされたはずの右腕で、後ろから南の首をスリーパーホールドに極めていたのだ。
「ふむ…南は少々油断しましたな。伊達の関節防御テクニックを甘く見すぎたようです。」
伊達は、長い両足を南の胴体に絡めると強靭な脚力で絞めはじめた。スリーパーホールドからスタンディング式の胴絞めスリーパーへと仕掛ける技をスイッチした訳だ。
しばらくの間その体勢で耐えていた南だったが、やがて「うぐっ…」と呻き声を漏らすと右ヒザをマットについてしまった。
「うーん、防御は上手くないけど、あいつ関節技はそれなりに上手いからなあ。」
「あなたとは違ってね。あなたがあと少しでも関節技が使えたらよかったのに。」
古い話を持ち出す内田。
「今は関係ないだろう?」
「まあね…それにしても南さんが耐え切れなくなって、グラウンド状態になるのも時間の問題かもね。」
頑張っていた南だったが、内田の言葉を待っていたかのように後方へと倒れ込んだ。
「やっぱり。」
グラウンドの胴絞めスリーパーとなったところで「ギブアップ?南?」とトニー館レフェリーが南に尋ねた。だがこれは南が答えるまでもなく「ノー!」だろう。
案の定南は微かに首を横に振ったのだが、口にした言葉は予想とは違った。
「レフェリー……カウント!」
トニー館レフェリーはその言葉に反応し、素早く目線を動かした。
「OK!フォール!」
伊達の両肩がマットについているのを確認したトニー館レフェリーは、素早くカウントに入った。
「ワン!…トゥ!」
「くうっ!」
伊達はカウント2で肩をあげたが、その表情は“しまった”という顔をしていた。
胴絞めスリーパーは背後から仕掛ける。勿論スタンディングで掛けた場合は問題ないし、グラウンドでも横向きなら問題はない。だが…南は“後方に倒れた”。この場合は、技をかけられている南の体が伊達の上になる。その結果、技を仕掛けている伊達の両肩がマットにつくことになるので、フォールをとることができる。
肩をあげた伊達を、南はもう一度バックプレスで押しつぶす。
「ワン!…トゥ…」
「くっ!」
伊達は再び肩をあげたが、その際に技を仕掛ける手が緩んだ。
「甘いわね!」
南はそれを察知して素早く技を振りほどくと、伊達の右腕を素早くキーロックに決めた。
「あうっ!」
「おおっ!」
攻守逆転!今度は伊達が必死にロープへと逃れる番だ。キーロック自体は単純な技ではあるが、右腕にダメージが蓄積している伊達には相当効く技だろう。
「ああうっ…」
伊達は必死にロープを目指してにじりよる。伊達は背が高く手足が長いので、ロープへは逃げやすい。関節防御を苦手とする伊達が、エースとして活躍できていた理由の一つかもしれないな。
「遙さん!あと少しです!」
永沢の声が飛んだ。
「ブレイク!」
伊達の長い足がサードロープに届き、レフェリーがブレイクを命じた。
「まだ、これからよ…遙。」
南は素直に技を解いて立ち上がるとリング中央まで下がった。その光景に場内からは温かい拍手が送られた。
「試合時間10分経過、10分経過!」
10分経過を告げる仲間元リングアナの声がドームに響き渡った。
もう10分経過か…早いな。
伊達と南…久しぶりのリングに上がった二人は、この10分間じっくりとした攻防を繰り広げている。
二人が出した技は基本的な技だけ…それもどちらかといえば地味な技ばかりで、二人が現役の頃に見せていたような派手さはないのだが、しっかりとした魅せるプロレスが展開されている。
このようなじっくりとした展開ながらも魅せる攻防は、派手な技ばかりに頼りがちな現役の所属メンバーにはできないだろう…いや、全盛期の二人でもできていなかったな。長いブランクを経て復帰した伊達遙と南利美は間違いなく進化している。
【10:40】
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