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2024/11/27 23:28 |
『もう一度あの日のように~再会~その37「フィニッシュ!?」』
NEW WIND社長 風間 新 手記より。

※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
 このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
 単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。

 ※※再会試合について※※
 この試合に関しては、ほぼリアルタイムでお話が展開します。

 今回は30分経過から32分40秒までの出来事です。



「南さんっ!」
「姉さん!」
 コーナートップに立ち、ダウンしている南を待つ伊達。それにしても、伊達は何を狙うつもりなのだろうか?立ち上がるのを待つということは、フィニッシュホールドの一つ、“フェニックス・スプラッシュ”ではないし…
 南はまだ起き上がってこない。カウント2.9で辛うじてフォールを返すことには成功した南だったが、ダメージが相当あるのだろうな。
「立てえええ、みなみっ!」
 痺れを切らしたか、もう一度伊達が叫んだ。その声に反応し、南はふらふらとしながらも立ち上がった。
「勝機、見逃すわけにはいかないっ!」
 伊達は正面向きで大きく跳ぶとヒザを抱えたまま前方一回転。
「伊達、前方回転ミサイルキックか!?」
 誰もがそう思ったが、伊達が出したのはもっと凄い技だった。
空中で前方一回転した伊達は両手を大きく広げた美しいフォームで、ダブルニーアタックを決めた。
綺麗なフォームは、大空を舞う鳥を連想する。ヒザを曲げて獲物に飛びかかるようなこの技は…名づけるならば“コンドルキック”……いや、『偉大なる鳳凰』と呼ばれた伊達遙だけに、『フェニックスキック』がもっとも適した名前だろう。
 南は直撃を受け、後方へと転がるように弾き飛ばされた。
「おおおおおおおっ!」
「すげえ、伊達の奴凄すぎる。現役時代だってやったことがないのに、こんな大技を出すなんてすげえよ!」
「本当凄い…」
「こりゃ決まったかな…」
 場内が異常な興奮を帯びている。伊達は南の右足を抱えるとそのままカバー、片エビに固めた。
 南はまったく反応しない。
バンッ!
「ワンッ!」
バンッ!
「トゥ!」
 これは決まったか?トニー館は右腕を振り上げ、ためを作ってから一気に振り下ろした。
「返せっ!南!」
 客席から、セコンドから返せ!と声が飛ぶ。南にこの声は届いているだろうか?
「お、おおおおおっ!」
 届いた!なんと南はカウント2.99で肩をあげたのだ。
あれ?今気づいたのだが、トニー館レフェリーは首を左右に振っていなかったな… 
「み・な・み!み・な・み!」
「だ~て!だ~て!」
 場内から熱狂的な声援が飛ぶ。どうにか立ち上がった南のダメージの大きさは誰が見ても明らかだったが、その表情には笑みが浮かんでいる。
「やってくれるわね、遥。でも、まだ終らない。」
 これは私の勝手な解釈だが、だいたい外れてはいないと思う。
 この試合…もうフィナーレは近いと私は見ている。二人はリングほぼ中央で組みあい、お互いにクラッチを切りながら自分の型へと持ち込もうとする。伊達が得意のデスバレーを狙って担ぎ上げれば観客席から大きな歓声があがり、それを嫌った南は、ヘッドロックパンチで切り返す。伊達が怯んだところで、南は伊達の頭を太ももで挟みこむと、パイルドライバーを狙う!再び歓声が上がるが、伊達は足をバタつかせてそれを決めさせない。
 ここで技を決めた方が断然有利だ。伊達が技を決めればそのまま3カウントが入る可能性はかなり高いし、逆に南が決めればフィニッシュへの大きな布石になるだろう。
 そして…勝敗の分かれ目ともいえたこの攻防を制したのは、南利美の方だった。
 フェイントをかけて、上手く伊達の右サイドに回り込んだ南は、左腕を伊達の腰に回し、右手を右腋に差し入れてホールドする。
「あれは裏投げか?」
 だが、南は投げる直前に右手で首をホールドし、後方へと急角度で投げ落とした。
これは!まさかこの技を再び見ることが出来るとはっ!
「南、ここでなんと、なんと!草薙流兜落しだああっ!」     
「伊達が『師弟タッグ』のパートナー永沢の技を借りれば、南さんは『パーフェクツ』のパートナー草薙みことの技を借りてきたか。」
「まるで、みことの兜落しを見ているような…綺麗なフォームだったわ。」
 南は、フォールにはいかずに、ここでネオ・サザンクロスロック!
「おおおおおおおっ!」
 場内は一気にヒートアップする。
「南さん、決めて~~!!」
「姉さん、絞って!」
「遥さんっ!逃げて!逃げて!」
 セコンドの声が交錯する。
「あぐう…」
 伊達は苦しげにうめきながらも凄い勢いで匍匐前進してロープへと逃げる。
「ブレイク!」
 伊達はあっという間にロープエスケープ。この技の怖さを熟知しているからな。
 南は伊達のヒザにストンピングを叩き込むと、その右足をとってリング中央へと引き戻す!そして、もう一度ネオ・サザンクロスロックを極めた。
「あぐうっ…」
 今度はさっきよりも入り方が完璧だ。伊達は逃げようとするがほとんど動くことが出来ない。
「だ~て!だ~て!だ~て!」
「み・な・み!み・な・み!」
 両者への声援は途切れることなく送られ続けている。
「力が入りますな。」
 ダンディさんは表情こそ変わっていないが、拳をぎゅっと握り締めている。立場上どちらへの声援も送ることはできないダンディさん。心の中ではどちらを応援しているのだろうな。
「ふふ、勿論二人とも応援していますよ。」
 私の心を読んだかのようにダンディさんは穏やかに言葉を発した。
「なるほど。さすがダンディさんです。」

【32:40】


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2008/05/13 18:00 | Comments(0) | もう一度あの日のように

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