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2024/11/28 01:50 |
『もう一度あの日のように~再会~その38「掟」』
NEW WIND社長 風間 新 手記より。

※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
 このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
 単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。

 ※※再会試合について※※
 この試合に関しては、ほぼリアルタイムでお話が展開します。

 今回は32分40秒から34分15秒までの出来事です。



「おおっ!」
 場内から歓声が上がった。わずかではあるが、伊達の体がロープへにじり寄ったのだ。その距離は3cmくらいではないだろうか。まだまだロープは遠い。ここまでガッチリと極められてしまうと、ほとんど動くことはできない。
「厳しいな。伊達はよく耐えているよ。」
「そうね。あれだけ完璧に極まっているネオ・サザンはそうそうないわ。」
 伊達は必死に前へ進もうとする。3cm進んでは南の強烈な絞り上げに苦しみ、なんとかまた3cm進むと、また絞り上げられて悲鳴を上げた。
「熱い!熱すぎるぜ!」
 上戸は思わず腰を浮かせる。
「落ち着きなさい。」
 内田がそれを制すが、その内田も熱い攻防に胸を打たれ、涙声になっている。
「遥さん!遥さん!」
 叫び続けた永沢の声はすでに枯れ、バンバンとエプロンマットを叩き続けたその両手は真っ赤に腫れ上がっていた。
「だ~て!だ~て!だ~て!」
「み・な・み!み・な・み!」
 両者への声援は絶えることなく送られ続ける。
南はそれに応えて強烈に絞り上げる。そして伊達は歯を食いしばり必死にロープへと逃げる。
「あぐうっ…」
 長い長い時間をかけて伊達の左手がついに、ついにサードロープを掴んだ。
「OK!ブレイク!ブレイクだあっ!」
 トニー館の声が歓声の中、かすかに聞こえた。
南は悔しそうに技を振りほどくと、リング中央へとゆっくり戻ってゆく。
 伊達はすぐに起き上がることができない。しばらくダウンしたままだった伊達は、サードロープに左手をかけて上体を起こし、右手でセカンドロープを掴みロープを頼りに必死の形相で立ち上がる。
 技を仕掛けていた南は両手をひざに当て、前かがみになって肩で大きく呼吸をしている。
 どちらももう一杯一杯だ。あとわずかの攻防で決着がつくだろう。はたして勝つのは伊達遥か、南利美か…どちらであろうか。
「くっ…」
 伊達は痛む右足を引き摺りながら南に近づいてゆく。長いこと極められていたわけだし、すでに立っているのもやっとだろう。
 だが、南だって疲れている。こちらもゆっくりとした足取りで伊達へと向かう。
「ハアッ!」
「タアッ!」
 二人は短く気合を入れると組みあった。 
 お互いにクラッチを仕掛けあうが、うまく切り返されてしまう。再びクラッチ合戦!かと思われたが、あっさりと南がこの攻防を制した。ブレーンバスターを狙う態勢に持ち込み、伊達を持ち上げようとする。伊達の体が50cmほど持ち上がるが、伊達はうまく体重を移動させて着地、逆にブレーンバスターで南の体を持ち上げた。
「させないっ!」
 南は伊達と同じように体重を移動させ、着地しようとした。
「もらった!」
 だがそれを伊達は待ち構えていた。伊達の強烈なニーリフトが南の腹部をえぐる。
「がふっ…」
 南は両腕で腹部をおさえ、ガクンとひざをついた。
「出るか、シャイニングフェニックス!」という空気が場内を支配する。
しかし、伊達は南の顔を蹴り飛ばすと、あお向けにダウンした南の足をクラッチし、そのままステップオーバー!
「えっ?」
 伊達はそのままフェイスロックを極め、南の必殺技であるネオ・サザンクロスがガッチリと南に極まった。
「掟破りのネオ・サザンクロスロックが炸裂!南、自分の必殺技に捕まってしまった~~!」
「おおおおっ!」
 まさかのネオ・サザンクロスロックに大きく盛り上がる場内。再会試合はまさかの結末を迎えてしまうのだろうか? 
「あぐぐぐっ…」
 予想外のネオ・サザンを極められ、南は苦しそうに呻いたのだが…なぜかその顔には笑みが浮かんでいた。
「南!ギブアップ?」
「答えはノーよ。」
 そういって南は右手の人差し指をチッチッチと左右に振った。まだ余裕があるということだろうか。
「みなみ~~~っ!」
 伊達が叫びながら絞り上げる。
「うおおおおっ!」
 場内も同時に盛り上がったのだが、南は表情を変えることなく、慌てず確実に一歩一歩ロープへと進んでいく。
「見た感じは、完璧に極まっているのに…」
「技の使い手は防御方法を熟知しているといいます。一見完全に極まっているように見えますが、ちゃんとポイントを外していますね。」
 ダンディさんの言葉が正しいのはすぐに証明された。南はごくあっさりとサードロープを右手でつかんだのだ。ポイントを外していなければこのような結果にはならないだろう。
「そんなッ…」
 自信を持って出したネオ・サザンだったのだろう。伊達の顔にはショックの色が浮かんでいる。
「甘いわね、遥。」
 南は何事もなかったかのように伊達に迫ってゆく。
「タアッ!」
 伊達が右ハイキックを繰り出したが、南はスウェーバックで回避し、すぐさま低空ドロップキックで伊達の軸足の左足を狙った。
「あうっ…」
 伊達は軸足を打ち抜かれ、ガクンと左ヒザをついてしまった。
「勝機、見逃すわけにはいかない!」
 伊達の決め台詞を南が叫ぶ。まさか…ここで掟破りのシャイニングフェニックスかっ!?
「おおおっ?」
 場内からどよめきが起きる。そのどよめきを背中で感じながら、南はロープへとダッシュし反動をつけると、伊達の右ヒザを自らの右足で踏みつけ踏み台にし、左のヒザを伊達の右頬へとぶち込んだ。
「あぐう…」
 伊達はガードしようとしたのだが、右腕がいままでのダメージで反応しきない。伊達は、南のヒザの直撃を受けゆっくりと後方へと倒れこんだ。



【34:15】



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2008/05/14 18:00 | Comments(0) | もう一度あの日のように

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