NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
スカイブルーのリングに歓声と拍手が降り注ぐ中、リング上では激闘を終えた二人が大の字になって新日本ドームの白い天井を見上げている。精魂尽き果てたのか…二人はまったく動かないままだ。
「行かないと…」
心配した相羽がリングに飛び込もうとしたが、ハイブリットが右手でそれを制した。
「で、でも!」
ハイブリットはポンと相羽の右肩に手を置いて、首を左右に振る。それを見た対角コーナーの永沢も中に入るのを止めた。
リングサイドには現役のメンバーたちがぽつぽつと集まり始めていた。
みなどこかでこの試合を観ていたのだろう。
「今は…二人の時間ですからな。」
ダンディさんはそう呟くように言うと、リング上の二人を優しい眼差しで見つめた。父親のような暖かな眼差し…ダンディさんにとって所属選手たちは実の娘のようなものなのだろうな。
「ええ。邪魔をするだけ野暮ってものですよ。」
やがて、ゆっくりと上体を起こした南と伊達は、お互いの無事を確認すると笑顔を見せ、そしてほぼ同時にゆっくりと正座して互いに向き合った。歓声がピタッととまり、二人に注目が集まる。
先に動いたのは南だった。両手を前についてマットに額がつくまで深々と頭を下げた。
「ありがとう、遙。」
伊達も同じく両手を前につくと、同じように頭を下げた。
「…南さん、ありがとうございました!」
この光景に場内からもう一度大きな歓声と拍手が送られた。
「みなみさん、素敵です!」
「かっこよかったよ!伊達!」
「二人ともよかったぞ~!」
様々な声が飛ぶ中、二人はゆっくりと顔をあげた。その顔は二人とも柔和で、二人にとってこの試合が充実したものであった事を物語っている。
「み・な・み!み・な・み!」
「だ~て!だ~て!」
両者へと送られるコールに応え、二人はゆっくりと…ゆっくりと立ち上がった。
これまでの間、トニー館レフェリーは邪魔にならないようにニュートラルコーナーに控えていたが、ここで二人の間に入ると左手で伊達の右手を掴み、右手で南の左手を掴んだ。
「只今の試合は…37分17秒、パーフェクト・サザンクロスロックで勝者、南利美!」
この仲間元リングアナのコールに合わせ、南の腕が上げられた。
「み・な・み!み・な・み!み・な・み!み・な・み!」
勝者を称える大きな、大きな南コールが新日本ドームを揺らす。南は勝利を誇るように胸を張り満面の笑顔を浮かべた。
伊達は満足そうな顔ではあったが、悔しいという気持ちは隠せなかった。
「伊達はやはりプロレスラーでしたな。負ければ悔しいのは当然です。」
「ですね。二人とも自分のスタイルで勝負し、勝ちにこだわった。二人ともやはり素晴らしいプロレスラーでしたね。」
リング上では、南が伊達を包み込むように抱きしめ、伊達は大粒の涙を流した。悔しさと嬉しさと安心感…そして成し遂げたという達成感。色々な気持ちが入り混じっての涙なのだろうな。
ありがとう、伊達、南。私は二人への感謝の気持ちで一杯だよ。長いブランクによる不安、体力的な不安…様々な不安を乗り越え、二人はリングに上がってくれた。
いや、ただ上がってくれただけじゃない。二人はこの試合の為だけに現役時代以上の覚悟を持って見事なプロレスラーの肉体を作り上げてくれた。
二人がこの37分17秒という短い時間のためにどれだけの努力をしていたのか…私には想像も出来ない。そして二人が見せてくれた試合も素晴らしいものだった。『彼女たちにしか出来ない』最高の試合…そんな素晴らしい試合で我々を魅了してくれた二人に、私は感謝の気持ちを表現したいと思った。
「………」
ガタッ!私は椅子から立ち上がると、大きな拍手を贈った。そう、文字通り送ったのでなく、贈った。心から贈る感謝の拍手。これが私に出来るせめてもの感謝の表現だ。
「ふむ。」
ダンディさんもスッと立ち上がり拍手を贈る。
「ありがとう伊達!南さ~ん!!」
「うん、うん。」
上戸と内田がそれに続き、さらに本部席・放送席にいた全員が続く。
そして客席の観客たちも次々に立ち上がって感謝の拍手を贈った。
6万人のスタンディングオベレーションが、素晴らしい試合を見せてくれた二人に贈られる。
伊達と南は両手をあげてその歓声に応えると、深々とお辞儀をした。その姿にもう一度大きな拍手が巻き起こった。
五月の青い空をそのまま映し出したように綺麗に映えるスカイブルーのリングは、満足そうな笑みを浮かべているように見えた。
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