NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
「そういえば宿舎一部屋あまっていたよねえ。」
私のこの一言がきっかけとなり、第3回の入団テストが行われることになった。
きっかけがきっかけだっただけに、今回は準備期間があまりにも短くまた唐突だったため、応募人数はかなり少なく、たったの5名しかいなかった。
「うーん、5人かあ…これは期待できないかなあ。」
「いえ、人数がいればよいというものでもないですぞ。意外とこういう時に有力な選手が合格するものです。」
ダンディさんはニッと笑った。その表情からは自信というか確信めいたものさえ感じるよ。
そして第3回テスト当日…
「なっ!あいつは…」
またも審査員を務めていたロイヤル北条が驚きの声を上げた。
5人の受験者の中に一人体格のいい受験者がいたのだが、どうやら彼女の事を北条は知っているらしい。
「どうした北条?また知り合いか?」
「ええ。…あいつは十六夜美響…災厄の女神と呼ばれている女です。」
「なにっ?災厄の女神!!」
私もその名前は聞いたことがあった。
”カラミティ・クイーン”十六夜美響。別名”災厄の女神”。
フリーとしてデビューした実力派ヒールレスラーであり、実力は相当のものと聞いている。
そして、彼女が災厄の女神と呼ばれる所以…彼女が参戦した団体はそのすべてが団体崩壊・分裂などにより消滅している。
「あいつが十六夜美響か…なかなかいい面構えしてるぜ。」
ガルム小鳥遊がニヤリとする。
「あいつがGGJに参戦するって噂があって、ほとんど話が決まりかけていたんだがな…その前にGGJがつぶれちまったんだよな。」
参戦していた団体だけでなく、参戦を予定していた団体まで吹き飛ばすとは…十六夜美響恐るべしだな。
十六夜はすべてのテストで満点を記録、文句なしのテスト突破となる。
「で、どういう風の吹きまわしだい?フリーのあんたが団体のテストを受けにくるなんてよ。」
「フリーでやっていた小鳥遊さんならわかるんじゃないかしら?」
「ふん…食えないやつだな。どうする社長?こいつの実力は確かだぜ?」
まあどうするかは社長次第だけどな?と小鳥遊の顔は語っている。
「うふふふっ…あなたに災厄を抱え込む勇気があるかしら?」
「もちろんある。災厄なんて関係ない。団体がつぶれたのは偶然にすぎない。だからそんな伝説なんて信じないし、そしてNEW WINDはつぶれやしない。」
私は断言した。
「へえ…あなたも物好きね。災厄を抱えこむなんて。」
こうしてNEW WINDの8人目の所属選手として十六夜美響の入団が決定した。
「あいつ本物だぜ。正直朝比奈や市ヶ谷たちと違ってある程度完成されてる。まだまだノビシロはあるけどな。私もうかうかしてらんねえなこりゃ。」
スパーリングを終えた小鳥遊はマジな顔をして私にそうささやいた。
「そんなにすごいか?」
「ああ。これは私の体感だけど、正直なところ北条と互角かそれ以上かもしれないな。やれやれ、先が恐ろしいぜ。」
小鳥遊の言うとおりであれば相当な戦力補強となるだろう。
「はっ!せやっ!」
夜…誰もいないはずの道場に声が響いていた。
「誰だ…こんな時間に…」
私は扉をそっと開け中をのぞきこんだ。
「しっ!せいっ!」
道場の中では北条が汗を流していた。
繰り返し繰り返しサンドバックにキックを叩きこんでいる。
「北条…頑張れよ。うちのエースはお前なんだからな。」
十六夜の入団、朝比奈にシングルで敗れたこと…北条が取り戻そうとしているものは私にも痛いほどわかる。
NEW WINDは北条が輝いてこそのNEW WINDなのだから…
輝きを放つ北条を私は待っている。
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