「ボクはスクルトが得意だよ。」
このスラリンの一言が全てのはじまりだった。
覚えたことを自慢したいというのは誰でもやることだろう。
ともかく、このスラリンの無邪気な一言がこの後大変な事態につながるとはこの時点では誰も思っていなかったのは間違いない。
「はあああっ。」
マッシュは特技を言う代わりに甘い息を吐いてしまい、スラリンは眠ってしまった。
「ボコッ!」
駄目だろ!と突っ込もうとしたブラウンだったが、思わず会心の一撃で突っ込みをいれてしまった。
「はぐうう…」
マッシュは思いっきり吹き飛ばされ意識を失ってしまう。
「しびれ~~」
だめだよ!と諭そうとブラウンの肩をツンツンした”しびれん”であったが、うっかりと急所を突いてしまい、ブラウンはマヒしてしまう。
「あれ~~」
そのしびれんも、アプールのマヒ攻撃でマヒしてしまい、アプールはマーリンのメラミで焼きリンゴに、マーリンはメッキーの凍える吹雪に凍え…そのメッキーはエミリーがいきりたってしまい、大ダメージを…
と次々と大変なことに。
そして…ブリードがとんでもないことをしてしまった。
「ブリードの得意技はなんだっけ?」
立ち直った誰かのこの一言が…惨劇を招く。
「えっ?”ザラキ”だけど。」
ぱた、ぱたっ、ぱたっ…次々と倒れていく仲間たち。
「えっ?えっ?今”ザラキ”っていっただけで唱えたつもりは…」
ぱたっ、ぱたっ、ぱたっ…さらに仲間が倒れていく。
「あっ?えっ?”ザラキ”っていっちゃ駄目?」
ぱたっ…ぱたっ…
こうして気づけば動いているのは自分だけになってしまった。
「嘘だろ…」
呆然としているブリードの元に、見回りに出ていた心強い仲間二人が帰ってきた。
「な、なんだコレは。」
「どうしたブリード、魔族の襲撃か?」
オークスとマクベスは手に持ったヤリを構える。
「いや…その違うんだ。ちょっとした手違いで…」
ブリードはザラキという単語を出さないで状況を説明した。
「仕方ねえなあ…とにかくこいつらを生き返らせないとな。マクベス、手分けしよう。」
「仕方ねえなあ…ザオラルっ!」
「ザオラルッ!!」
「ザオラルッ!!!」
「ザオラルーーーー!!」
しばらくの間、オークスとマクベスはザオラルを唱えまくることになってしまった。
「ザオラル~~~~!!!」
全員を生き返らせた二人は肩で大きく息をしながら「ザオリクを必ず覚えよう…と。」思ったそうである。
「ザオラルだと…厳しいぜ…」
「まったくだ…本当に2分の1確率なのかよ…」
オークスとマクベスは仕事をやり終えた満足感を感じつつ、ザオラルの精度に疑問を持ちながら眠りに落ちていった。
特技自慢はほどほどにした方がよいようである。
「ボクもしゃくねつのほのおを吐けるようにならなくっちゃ!」
スラリンはぴょんぴょんと飛び跳ねながら体を鍛えはじめた。今のレベルは24。まだまだ遠い道のりであった。
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