”レッスル川柳イラスト化作品 SS化チャレンジ”
N版 第23弾です。
気楽にお願いします。
※このSSは公式でイラスト化された管理人Nの川柳を、私の設定で書き上げたものです。
設定は管理人の創作ですが、これに関しては私の句ですので、好き勝手に遠慮なく書いております。
※ジャンル:純プロレス的ストーリー
N版 第23弾です。
気楽にお願いします。
※このSSは公式でイラスト化された管理人Nの川柳を、私の設定で書き上げたものです。
設定は管理人の創作ですが、これに関しては私の句ですので、好き勝手に遠慮なく書いております。
※ジャンル:純プロレス的ストーリー
「クソッ!」
相羽和希は控え室の壁を殴りつけた。
もちろん手はジンジンとするのだが、それよりも心が痛かった。
今日のメインイベントで同期の武藤めぐみ&結城千種組がタッグ王座を獲得したのだ。
「ボクだって・・・もっとやれるはずなのに・・・」
同期の戴冠は嬉しいけど、それよりも悔しさのほうが上だった。
実は先に挑戦したのは相羽だったのだが、王者組の巧みな連携の前に敗れ去っている。
「めぐみちゃんと千種ちゃん・・・あの二人は凄い・・・でもボクにだって・・・」
だがここで相羽はあることに気づいた。
「パートナー・・・」
そう相羽には正式なタッグパートナーはいないのだ。
もう一人の同期小早川や、後輩の杉浦では役不足だし、この間一緒に組んで挑戦した先輩とのコンビはあくまでも元々のパートナーの代役だった。
「あの二人に勝つには・・・パートナーが必要・・・か。」
相羽はまだタッグ王座へのスタートラインにすら立てていない事実に愕然とする。
「ノエルちゃんが欠場していなければ・・・」
一番身近で頼りになりそうな後輩、不思議少女ノエル白石は現在欠場中。
これでは打つ手なしである。
「後輩に先を越された・・・」
ギリッと奥歯を噛み締めるのは永原ちづる。
新タッグ王者武藤&結城の1年先輩である。
「しょうがないよ、めぐみも千種も普通じゃないもん。」
「ね~。」
同期のキューティ金井と富沢レイがいとも簡単に言う。
金井は『アイドルレスラー』というカテゴリーのレスラーだし、はっきり言って弱いから、なんとも思わないのかもしれない。
「ちょっと、後輩に先を越されて悔しくないわけ?」
「だってQTは強くないもん。」
「そうそう。」
二人はあっさりとしたものである。
「レイ、あなたまで?」
「そりゃ私だって『関節のヴィーナス』目指して頑張っているけどさ。あの二人は物が違うわよ。」
ミミ吉原、南利美と受け継がれてきた『関節のヴィーナス』を狙うつもりではいるが、現状の富沢の実力はジュニア王座にも届かないレベルでしかない。
「・・・はあ・・・タッグ王座に挑戦するにもパートナーがいないとなあ。」
永原の同期はこの二人だけであり、この二人と組んだら逆立ちしたってあの二人に勝てない。
「越後さんに組んでもらえばいいじゃない。」
いとも簡単に言う金井。
「組んでくれるわけないでしょ!私たちを目の敵にしているんだから。」
「それはちづるが遅刻するからでしょ?」
「ヴッ・・・」
図星である。だが理由はそれだけではない。
「あんたたちだって、いろいろやってるでしょう!」
バシーン!
「うるさいぞ、お前ら!とっとと仕度してバスに乗れっ!」
竹刀で床を叩きながら3人をどやしたのは噂の越後しのぶ。
この団体の寮の寮長であり面倒見のいい越後は、先輩から後輩の面倒を一手に押し付けられている。
「は、は~い。」
「まったく、いつもいつも。お前らは~っ!!」
「越後さん、あんまり怒鳴ると顔がしわだらけのオバチャンになっちゃいますよ。」
金井は余計なことを言う。
「うるさーい!誰のせいだ、誰の!」
「・・絶対無理。」
呟く永原であった。
翌日巡業先から戻った永原は、近所の公園へと向かっていた。
公園のブランコに揺られながら考えごとをするのが好きなのである。
「あら、先客がいるわね。」
いつも永原が陣取るブランコに一人の少女が座っていた。
なにやらうつむき加減で考え事をしながらブランコに揺られているようだ。
「・・・あれ?」
最初は気づかなかったが、そのブランコに揺られている人物には見覚えがある。
(和希だわ)
そうブランコに揺られているのは相羽和希。永原の後輩の一人だった。
永原はそっとブランコに近づき相羽の隣のブランコに腰掛ける。
「和希!」
永原に気づかないので、ちょっと大声を出してみた。
「うわあわあっつ!あれ、ちづる先輩?」
相羽は反射的に立ち上がろうとする。
「あ、バカ。落ちるわよ。」
「えっ?あ、そっか。」
バランスを崩したが何とかつかまり体勢を立て直す。
この後二人はしばらくブランコに揺られていた。
「和希、悩みごと?」
「えっ?どうしてわかるんですか?」
相羽は不思議そうな顔をする。
「顔に書いてあるよ。」
「そ、そうですか?」
相羽は自分の顔を触ってみる。
「ふふ、素直ねえ。でも本当は嘘よ。」
「えっ?」
相羽はきょとんとする。
「私もね、なにか悩んだりするとそのブランコに揺られながら考えるんだ。」
「ボクと同じ?」
「そういうこと。」
「ボク、ちづる先輩って悩まない人だと思っていました。いつでも、『だいじょーぶ、だいじょーぶ』って言っているから。」
永原は思わず笑みを浮かべる。
「そりゃ私は楽天家で、いつも笑っているってイメージがあるだろうけど、悩む時だってあるわよ。」
「ご、ごめんなさい。なんかいつも脳天気だなって・・あっ・・・」
相羽はあわてて両手で口を押さえる。
「ふ~ん、そういう風に見ていたのね。」
「あ、いや・・その・・・美加先輩とレイ先輩と3人でいつも仲良くって・・・」
「バカをやってるって?」
「そう、バカ・・・あっ・・・」
永原の誘導に見事に引っかかる相羽。
「和希は素直ね。」
「ご、ごめんなさい。ボク、そんなつもりじゃ・・・」
「いいわよ。あの二人といればそうなるのも仕方ない。それに私はジャーマンバカだからね。」
永原はジャーマンスープレックスにこだわりを持っている。
そのブリッジに美しさは女子プロレス界ナンバー1といわれている。
「そうですよね。」
またも素直に認める相羽。
「・・・和希もかなりこだわりを持っているでしょ?」
「はい。ボクもジャーマンにはこだわりがあります。ちづる先輩とはクラッチの形が違いますけど、それもボクのこだわりです。」
相羽もジャーマンに関しては強いこだわりをもつ。
「ところで、和希は何を悩んでいるのかしら?」
「ボクですか?・・・」
「この間のタッグ王座戦が関係あるのかな?」
この言葉にピクッと反応する相羽。
「やっぱり。」
「はい。同期の戴冠は嬉しかったですけど、それ以上に悔しくて。」
「だろうね。気持ちはわかるな。」
「そうですか?」
相羽は永原の顔を見る。
「和希は同期においていかれただけでしょ?私は後輩に追い抜かれたんだよ、悔しくないわけないじゃない。」
「そ、そうですよね・・・・」
相羽は先輩の悔しさを考えてみた。
(ボクだって、美月ちゃんやノエルちゃんに先を越されたら・・・悔しいだろうな。)
「和希はさ、あの二人からベルト取りたいって考えている?」
「もちろんです。でも・・・」
相羽は言葉に詰まる。
「パートナーがいない?」
永原はズバリと言い当てる。
「な、なんでわかったんですかっ!」
相羽はびっくりして大きな瞳をさらに見開いていた。
「一緒だからだよ。」
永原はさびしそうに言う。
「一緒?」
「そう、私も同じだから。パートナーがいないから、悔しさをぶつけることすらできないの。」
「ボクも、悔しさをぶつけることができません。」
相羽はギュッと唇を噛み締める。
「ねえ和希、私と組まない?」
「ボクとちづる先輩がタッグですか?」
相羽にはその発想がなかった。
これは永原も同じで、後輩と組んで後輩に挑戦するという考えはさっきまでは持っていなかった。
だが、相羽が同じ心境と知って、組んでみても面白いかなと思ったのである。
「私じゃ役不足かな?」
「とんでもありません、こちらからお願いしたいくらいです。」
相羽は頭を下げる。
「じゃあ決まりね。」
永原はニコリを笑い、右手を差し出した。
「はい、よろしくお願いします、ちづる先輩。」
相羽も右手を差し出し握手した。
こうしてタッグチーム『ジャーマン・シスターズ』が結成されたのであるが、二人はブランコの上だったことをすっかり忘れていた。
「あっ!」
「えっ?」
二人は握手しようと身を乗り出し、バランスを崩しブランコから落下してしまったのだ。
「いった~っ・・・」
『ジャーマン・シスターズ』前途多難の結成であった。
(次回へ続く)
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