このお話は、NEW WIND編のサイドストーリーにあたるスターライト相羽が主人公のオリジナルストーリーです。
このお話に出てくる設定はほぼ公式なものではなくオリジナルの設定であり、本編であるNEW WIND編のストーリーと密接にリンクしています。
単独でも楽しんでいただけるとは思いますが、本編 NEW WIND編の方も読んでいただけると、さらに楽しめると思います。
では”星明りの少女 第1話「運命の出会い」”
お楽しみくださいませ。
「今どきドームで興行やるってよ!すげえなあこの団体。」
という男子生徒の声がする。
ここは石川県にある、とある中学校の受験を間近に控えた3年A組の教室である。
今は昼休みであり、給食を食べ終えた生徒達がそれぞれの休憩時間を満喫している。
「こらー学校に雑誌持ち込み禁止だよ!」
ショートカットの少女がビシッ!と指差して吼える。
「わーばかばか、相羽~!! そんなでかい声だすなよ!」
クラス中が何事かと相羽と呼ばれた少女と、男子生徒の方を見る。
「あっはっは。ごめんごめん。ボクちょっと元気すぎた?」
少女は右手で頭をカリカリとかく。
「頼むよ相羽、俺らの小遣いじゃこの雑誌もう一度買うの大変なんだから。」
他の二人の男子生徒はこの言葉に頷く。
「もう、しょうがないなあ。”ミムラんず”は。」
ミムラんずとは村田、田村、山村の3名の事。相羽はこの3人をまとめてミムラんずと呼ぶ。
「で、何読んでんのよ。」
「あ、これか?別に相羽が読むようなもんじゃないぜ?」
ミムラんずで一番背の高い山村が答える。
「それはボクが決める事だよ。貸して。」
相羽は答えがある前に引っ手繰る。
「あ・・・」
ミムラんずが抗議する間もなくその雑誌は相羽の手の中にあった。
「ガールズ・ゴング・・・なにこれ?・・・あ、わかった!エッチな本でしょ!?」
表紙は水着姿の女性の写真。
これはリングコスチューム姿なのだが、知らなければわかるまい。
「ば、ばかやろ。他の女子が変な目でみるだろ!これは女子プロレス専門雑誌だよ。確かに女子プロレスラーのグラビアなども載ってはいるけどエッチな本じゃないやい。」
ミムラんず村田(一番背が低い)が抗議する。
「ふーん、どうだかね。どれどれ・・・」
相羽が開いたページは南利美のインタビュー記事のページ。
「へーこの人可愛いね。」
外でのインタビューでもあり、南利美はボーイッシュだけど可愛らしい格好をしている。
「南さんだろ?可愛いよなあ・・・俺憧れてるんだ。」
3人の中では中間の身長の田村がいう。
「でも南選手は引退しちゃうんだってさ。」
「まだ若いのに?」
と相羽。
「相羽は知らないかもしれないけど、女子プロレスラーって15歳くらいからデビューして22,3歳で引退しちゃうんだぜ。華の命は短いっていうけど、だからこそ輝くんだよな。」
「ふーん。」
相羽は南利美のインタビュー記事を読む。
そこには南のこれまでのレスラー生活の振り返りと引退に関する思いが語られていた。
「なお南選手を送り出す為に、NEW WINDは大掛かりな引退ツアーを用意した。これに関して南選手は“大げさなのよ”と苦笑するが、南選手のこれまでの功績からすれば決しておおげさではないと筆者は思う。~O坂~・・・か。」
「すごいよなあ。今ドームで興行打てる団体なんて男子でも2団体しかないのに、女子プロレスで1ヶ月に4ドーム大会だぜ。凄すぎだよな。」
と村田。
「やっぱさ、観にいなかくちゃ。ちょうど日程見たら受験終わってるしさ、今年のお年玉は受験勉強で使ってないし。俺さ、南さんが引退する前に会いたいし、行こうぜ!九州ドーム。」
田村が興奮しきっていう。
「なんだよ。なにわパワフルじゃねえの?」
確かに山村の言うとおり地理的には、なにわパワフルドームが一番近い。
「ばっかだな。引退試合を見ないでどうするんだよ、伊達選手との最後の対決だぞ。これ観るしかないだろうが!」
田村はかなり興奮している。
「ボクも行っていいかな?」
と相羽が言うので、他の3人はキョトンとしている。
「はあ?相羽が?そりゃ俺達はいいけど、お前の親が・・・」
「ボクの両親なら大丈夫。それに悪いけど帰宅部の君達にどうにかされるようなボクじゃないから。」
「ばっかやろ、クラスのマドンナの藤崎詩織ちゃんならともかく、マスコットの相羽なんかに興味はねえよ。」
「そうだそうだ。」
「あーいったな?この雑誌先生に報告してもいいんだけど?」
相羽はニヤッとする。
「あ、ごめんごめん。それだけは勘弁してくれよ!」
「じゃあ、お金は後で払うからさ、ボクの分もチケットとっておいておくれよ。」
「しかたないなあ・・・ちゃんと払えよ。」
田村が諦め顔になる。
「大丈夫だって。オクはお金の払いはいいんだから。あ、そうそうチケットとって来るまでこの雑誌預かっておくね!」
相羽はそういうとクルリと後ろを向いて席へと戻ってしまった。
「あ、おい相羽あ・・・まだ読んでないのに・・・」
(へっへーごめんねえ・・・全部読んでみたくなっちゃってさ。)
と相羽は心の中で呟いた。
その日の夜 相羽は興奮しながらガールズ・ゴングを読みあさる。
「あは、なにこの“いずみちゃんのですうのーとですう”って。」
本当に最初から最後まで読んだ相羽。
受験勉強の事なんてすっかり忘れて読み耽っていたのだ。
「女子プロレスかあ。知らなかったなあ。」
といいつつ相羽はまた南のインタビュー記事を読み出す。
「うーんやっぱり・・・この人が一番可愛いと思うな。背もボクよりちょっとだけ高いだけだし、髪もショートだし。・・・やっぱ試合みたいなあ。ミムラんずはちゃんとチケットとってくれてるかなあ。」
元々一つの事に一直線になるタイプだけに、今はプロレスの事だけを考えている相羽だった。
この後日ミムラんずからチケットを手渡された相羽は、代金を支払いガールズ・ゴングを返す事になる。
この時相羽はすでに自分のお小遣いで同じ号を買っていたのだが。
「まずは、受験やっておかないと試合見れないよね。頑張らなくっちゃ!」
最後の追い込みに張り切る相羽和希の姿があったという。
”合格したら、観戦に行く。”これを励みに。
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