このお話は、NEW WIND編のサイドストーリーにあたる、スターライト相羽が主人公のオリジナルストーリーです。
このお話に出てくる設定はほぼ公式なものではなくオリジナルの設定であり、本編であるNEW WIND編のストーリーと密接にリンクしています。
単独でも楽しんでいただけるとは思いますが、本編 NEW WIND編の方も読んでいただけると、さらに楽しめると思います。
では”星明りの少女 第11話「心構え」”
お楽しみくださいませ。
このお話に出てくる設定はほぼ公式なものではなくオリジナルの設定であり、本編であるNEW WIND編のストーリーと密接にリンクしています。
単独でも楽しんでいただけるとは思いますが、本編 NEW WIND編の方も読んでいただけると、さらに楽しめると思います。
では”星明りの少女 第11話「心構え」”
お楽しみくださいませ。
相羽にとって初の王座挑戦は善戦の末敗北という結果に終わった。
届きそうで届かなかったタッグ女王の座。
勝った女王組と負けた挑戦者組。何が違っていたのだろうか。
「ごめんなさい蓮さん。ボクが力不足だったばっかりに・・・」
「いえ、力不足だったのは私も同様です。和希さんのせいではありませんよ。」
スイレンは穏やかな笑みを浮かべる。
「蓮さん、蓮さんは悔しくないのでしょうか?ボクはとても悔しいです。」
まっすぐな感情をぶつける相羽。
「もちろん悔しいですよ。でも嬉しくもあるのです。」
「嬉しい?」
相羽は訝しげに先輩の顔をみつめた。
「はい。超える壁は高く分厚い方が楽しみですからね。」
「超える壁は高く分厚い方が楽しみ・・・」
相羽はスイレンの言葉を復唱する。
「龍子さんが分厚い壁となって立ちはだかるのなら、それを超える努力をすればよいことです。嘆いてもなにもできませんから。」
スイレンの瞳は新たなる目標をはっきりと見据えているようだ。
「壁を超える・・・」
「そのために修行を積むのです。他人が到達できた高みならば、他の人だって到達できる高みのはずです。もちろんその高みにいる人もより高みを目指していくでしょうが。」
(ボクは壁に当たるとすぐに嘆いているというのに蓮さんは違う・・・すごい。)
「それに和希さんは、私の想像以上の活躍でした。」
「ありがとうございます。でもボクなんてまだまだですよ。」
謙遜ではなく、自分自身に自信がない相羽である。
「和希さん、もっと胸を張りなさい。あなたはもう“トップを狙う若手選手”として十分な実力を持っています。」
「は、はい。もっと努力して頑張ります。」
「“前向きに”ですよ。」
「はい!」
このタッグ女王戦をきっかけに相羽はグングンと力をつけていく。
“努力と根性で頑張ります。”が口癖のわりにどこか根性なしであった相羽だが、修行の道を行くスイレンとのタッグ結成が成長のきっかけとなったのだろう。
「吉田先輩が新女王・・・舞先輩があんなに一方的にやられるなんて。」
投げ技を得意とする相羽にとってお手本の一人であった2代目女王永沢が吉田の猛攻を受け女王陥落。
年齢的な衰えがあるとはいえ、あまりに一方的すぎた。
「今の永沢さんと“いい試合”をしているようでは女王の座に立つ資格はないと思った。」
吉田がインタビュールームで取材陣にコメントを出している。
相羽は何かあったらすぐ対応できるように端に控えていた。
「でも女王戦らしくないですよね?」
なじみの記者から厳しい声が飛ぶ。
「ならば尋ねるが、女王戦らしい試合とはどんな試合だ?」
吉田は記者を睨みつける。
「そ、そりゃ熱い試合というか、激しい攻防というか・・・観たものが感動するような試合というか・・・」
「ふん、ありきたりだね。それは先輩達、伊達さんや結城選手が築きあげてきた王座戦・女王戦のイメージだろう?」
(うわー今日の吉田先輩・・・怖)
「ま、そ・・そうかもしれませんが・・・」
「それはあくまで先輩達の理想だ。私の理想とは違う。私はいい試合など望まない。」
「・・・・」
取材陣は吉田の気迫に押され押し黙る。
「私が望むのは“強さ”だ。」
「・・・・」
「圧倒的な強さ。この女王は負けないという強さを求める。一方的な試合になるのは構わない。私には私の理想がある!」
「だから、私に挑むのであれば覚悟を決めて来い。それだけだよ。」
吉田は一方的に言いたいことをいうと席を立ってしまった。
「お疲れ様です。」
相羽はさっと吉田の傍につく。
「和、私に挑むのなら覚悟しておけよ。」
吉田は相羽の方は見ずにつぶやくようにいう。
「はい。」
「ふっ。楽しみにしているよ。和やケイを容赦なく叩き潰す日をね。」
ニヤリとする吉田。
「潰されません。」
力強く返す相羽。
「つ・ぶ・す!」
「されません」
「絶対 つ・ぶ・す!」
「せん!」
相羽が吉田とまともな試合ができるようになるまでにはまだまだ時間が必要である。
「ちょっと何調子に乗っているのよ。」
「なんだ。ケイちゃんか。」
「なんだとは何よ。」
「別に。いつもこのパターンだなと思ってさ。」
相羽はちょっと飽きているらしい。
「な、そんなの私の知ったことじゃないわよ。」
「まあいいけど。で、なに?ケイちゃん。」
「相羽の癖に生意気ね。いっとくけどまだまだ私の方が勝ち越しているからね。」
とジーニアス。
「そうだっけ。別に”こだわってないから忘れていたな”。」
相羽は“あはは”と笑う。
「な・・・」
この反応はジーニアスの予想外だったようだ。
(おかしいわ・・・いつもならムキになるのに・・・)
「なんていうのかな・・・どうでもいいかなって。」
「な・・・どうでもいい?」
「うん。どうでもいい。ケイちゃんに負け越しだろうがそんなことは問題じゃない。ボクはねケイちゃん、もっと上を見ているんだ。」
相羽は目の前にいるジーニアスを見ていない。
「上?」
「うん。ベルトに挑戦してわかったのだけど、上の人は強いよ。でも先輩達にできてボクに届かない場所じゃない。」
「才能ないのに?」
「そりゃ先輩たちとは才能に差はあるかもしれないよ。でも努力して修行すれば届く。」
(なに・・・コイツ。この間までと全然違うじゃない・・・)
「じゃあね、ボクいくよ。」
相羽はスタスタと行ってしまった。
「くっ・・・なにが“ベルトに挑戦してわかった”よっ!」
ジーニアスは“焦り”を感じていた。
「結城先輩に私は勝利している。相羽は勝ってない・・・私の方が上よ。」
『ケイ、あなた自惚れていると相羽に置いて行かれるよ。』
武藤めぐみに言われた言葉が思い浮かぶ。
「置いて行かれる?・・・そんなわけないじゃない。」
「・・・置いていかれるよ。」
となぎさがひょこっと顔を出す。
「なっ・・・」
「・・・バスでるの・・・」
と一言だけいうとなぎさはふわふわといってしまった。
「なぎささん、早くしてください。」
「なぎさちゃん早くしないとバスでちゃうよ!」
レフェリーの美月と相羽がなぎさを呼ぶ声がする。
「ケ~イ! バス出るよ~!!」
と風間の声。
「ま、まって置いていかないでよ!」
ジーニアスのダッシュはすばやく、先にバスに向かっていたなぎさをあっという間に追い越した。
「・・・ひどい。呼びにいったのに・・・」
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