このお話は、NEW WIND編のサイドストーリーにあたる、スターライト相羽が主人公のオリジナルストーリーです。
このお話に出てくる設定はほぼ公式なものではなくオリジナルの設定であり、本編であるNEW WIND編のストーリーと密接にリンクしています。
単独でも楽しんでいただけるとは思いますが、本編 NEW WIND編の方も読んでいただけると、さらに楽しめると思います。
では”星明りの少女 第2部スターライト編 第1話「スターライト」(前編)”
お楽しみくださいませ。
このお話に出てくる設定はほぼ公式なものではなくオリジナルの設定であり、本編であるNEW WIND編のストーリーと密接にリンクしています。
単独でも楽しんでいただけるとは思いますが、本編 NEW WIND編の方も読んでいただけると、さらに楽しめると思います。
では”星明りの少女 第2部スターライト編 第1話「スターライト」(前編)”
お楽しみくださいませ。
南十字星の光に導かれ、プロレス入りを決意した一人の少女がいた。
彼女の名前は相羽和希、リングネームはスターライト相羽である。
最初は光に導かれ、光を浴びて弱い輝きを放っていただけだったが、いつしか自ら輝くようになり、ミドル・ウインドという中堅クラスのベルトを巻くまでに成長する。
その実績を買われた相羽は、13年目4月、NEW WINDの最高峰である『MAX WIND』に初挑戦したが、『スカイブルーを支配する最強の龍』吉田龍子の前に敗れさった。
「この吉田龍子、簡単にやらせはしないぞ!もっともっと強くなってかかってこい!」
吉田の圧倒的なパワーの前に粉砕され続けた相羽は、切り札を手に入れるために、プロレス入りのきっかけとなった憧れの人『南利美』に教えを請うた。
「和希、まだ完璧じゃないわね。もっと精進しなさい。その程度の『スタークロスロック』ではあの龍の首はとれないわよ。」
南は一切の妥協を許さずに、完璧を相羽に求める。
相当の時間を要したが、相羽はついに切り札となる『スタークロスロック(相羽流変形ネオ・サザンクロスロック)』を会得する。
この技で、女王吉田をギブアップ寸前まで追い込んだのだが、相羽は後一歩のところで敗退し、涙を呑んだ。
しかし、ミドル・ウインド戦での高いレベルで安定した試合振りを評価され、相羽はなんとこの年の女子プロレス大賞MVPを受賞する。
「ボクが・・・最優秀選手?」
実感のわかない相羽ではあったが、これは事実であり、この頃の相羽は、強烈な光を放ち女子プロレス界を照らす存在になりつつあった。
この頃のNEW WINDは団体を支えたスター選手の引退が相次ぎ、レベルの低下を心配された頃だったから、相羽の輝きは団体にとっての光明といえる。
風間社長も「相羽はスター選手であり、女主人公(ヒロイン)だった。彼女がいなければ、団体は持たなかったかもしれない。」と評している。
ただ頂点へ、栄光へのスターロードを歩み続けた相羽だったが、周囲の期待に反し、女王吉田を破る事ができなかった。
4度、最強の龍に挑んだが、結果を出せずに終わる。
「さすが龍子さん。強いや。でも、ボクは絶対に龍子さんを倒して女王になる!」
すでにかつてはライバル視した同期のジーニアス武藤など眼中にない。相羽が見据えるものは、『女王の座』のみだった。
だが、意気込む相羽にショックな出来事がおこる。
女王への挑戦権を賭けたリーグ戦で、3年後輩のマイティ祐希子に、まさかの敗戦を喫したのだ。
「くそっ・・・」
相羽は控え室の壁を殴りつけてくやしがるが、敗戦の事実は事実、消し去る事はできない。
先輩のスイレン草薙とともに、次代のエース候補に挙げられ、女子プロレス大賞MVPを受賞するなど、実績を積んできたのだが、この敗戦は全てを吹き飛ばした。
もう一人のエース候補スイレンもマイティは撃破している。
この結果『エース候補筆頭はマイティ祐希子』という風に周囲の見方が変わったのだ。
多くのレスラーを見てきた風間社長が、『10年に一度の逸材』と評すマイティ。
その秘められた資質は、『孤高の天才姫』武藤めぐみ、『偉大なる鳳凰』伊達遙、『クイーン・オブ・クイーン』結城千種、『史上最強のマスクウーマン』カンナ神威というスカイブルーマットの先駆者たちをも凌ぐといわれている。
スイレンと相羽という2強を撃破したマイティは、他の先輩達をも全てなぎ倒し優勝。
そして8度の防衛に成功していた『スカイブルーを支配する最強の龍』吉田龍子を打ち倒し、女王の座を手に入れた。
デビューからわずか23ヶ月という異例のスピードである。
「祐希子ちゃんが新女王・・・」
これには相羽もそうだが、他の先輩達もショックを隠せない。
自分たちがあれだけ挑戦して倒せなかった女王の座を、初挑戦であっさりと後輩に奪われたのだから。
「・・・私も修行が足りませんね。」
エース候補筆頭格だったスイレンが悔しそうにすれば、同期のシャイニングも「チッ、まだこれからだ。」と反発。
「・・・私が天才のはずなのに。」
同期に突き放され、後輩に追い越されあせるジーニアス。
「ボクだって負けていられない!倒す相手がマイティ祐希子に代わっただけだ。」
相羽は女王の座を見据えている。
この後、前女王吉田は6月限りでの引退を表明し、引退試合の相手には相羽が指名された。相羽が引退試合の相手を務めるのは、結城の引退試合以来2度目のことである。
その引退試合は「こんなに簡単に勝てるものなの?」と本人が思うくらいにあっさりと勝利。
内容としては互角だったし、激闘と呼ばれる部類ではあったのだが、吉田の発するパワーや威圧感はまるで別人であった。
「そんなものさ。この体も、大分無理をさせていたしね。」
「こんなに・・・」
「今まではベルトがあったからね。先輩達に守られていたんだよ。」
「・・・先輩達に・・・」
「和希、覚えておきなよ。あのベルトには先輩達の思いが込められている。団体を守っていた先輩達の思いがね。だからベルトを巻いた女王は、負けない、いや負けられないんだよ。結城さんがそうだったように。」
相羽の脳裏に、ボロボロになっても女王の座だけは守り続けた結城の姿が浮かぶ。
「・・・」
「だからこそ重いし、価値がある。和希、あのベルトを取りたいなら、私の魂を引き継げ。」
吉田は右手を差し出す。
「ハイッ!ボク頑張ります!」
相羽はその右手を両手で握る。
「・・・わかるか、和希?」
「・・・エースの魂・・・・まえに千種先輩からも感じましたけど、団体を背負うことの重みが伝わってきます。」
「和希、この後のエースはマイティかもしれない。でも、あいつはまだ若い。お前や蓮がマイティの壁となってやれ。そして出来ることならあいつの腰からベルトを引き剥がせ。
『絶対女王』にしてはいけないぞ、まだあいつが全てを背負うには若すぎる。」
「はい!」
「それと、ボクという女王はいない。せめてインタビューのときなどは『自分は』とか『私は』に変えろよ。」
「は、ハイ!『ボク』頑張ります!」
「・・・・・・」
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