このお話はサバイバー1版NEW WIND編のアフターストーリー ”青空に虹が輝く”の外伝になります。
時間軸としては21年目頃のNEW WINDが舞台です。
時間軸としては21年目頃のNEW WINDが舞台です。
そして迎えた後楽園プラザ大会は盛況のままセミファイナルを終え、メインイベントを残すのみとなっていた。
セミの試合がNEW WINDらしい激しい攻防の試合だったので、観客席はその余韻に浸っている。そんな中で並み居る先輩達を押しのけて、4年目と2年目の若手がメインを張るのだ。
『メインイベント 榎本綾 VS オーガ朝比奈 シングルマッチ60分1本勝負』
北側に設置されたスクリーンに大写しになる榎本綾とオーガ朝比奈の顔。
「榎本綾とオーガ朝比奈。まだまだ若手といえる彼女たちの試合がメインに組まれたのにはある理由があった。それは一ヶ月前の後楽園プラザ大会での出来事である。
榎本綾は憧れの先輩ビューティ市ヶ谷とのタッグで、暴風軍RAIRA&オーガ朝比奈と激突。暴風軍のリーダーRAIRAの強烈な反則攻撃を受け大流血した榎本は、なんと後輩の朝比奈にフォールを奪われてしまうという屈辱を味わってしまった。」
「悪い子は許さないもん!」とタンカをきった榎本に対し、朝比奈は「うるせえちびっ子。お前なんて相手じゃねえんだよ。」と応戦。
この舌戦の後始末を任された風間社長は「カードが一箇所空いているな」と独断で対戦を決定!
この二人の試合をメインにすえただけでなく、『ヒラヒラ コントラ ヒール』ルールでの対戦を発表。
この試合、榎本綾が負けた場合は、「可愛いコスチュームが着たい」と入団してきた榎本綾のヒラヒラコスチュームを剥奪し、なんとヒール軍である暴風軍入りという過酷な条件を突きつけた。
そして、オーガ朝比奈が負けた場合は、ヒール軍からの離脱・ヒラヒラのコスチュームの着用という朝比奈にとって過酷な条件を用意したのである。
どちらが勝っても負けても、自分らしさというものを失うという過酷なルール…それが『ヒラヒラ コントラ ヒール』ルールなのである。
勝負の女神は果たしてどちらに微笑むのか。
メインイベント 『ヒラヒラ コントラ ヒール』シングルマッチ60分一本勝負 榎本綾 VS オーガ朝比奈
己の存在を賭けた一戦が今はじまる!」
ババーンと特効が鳴り響き、オーガ朝比奈のテーマ曲が流れ始めた。
「まず青コーナより…誰であろうともスクラップにしてやるぜ…リングの悪鬼オーガ朝比奈入場!」
重低音のよく聞いた、ヒールによく合う曲。
(これが最後にはさせねえぜ。ちびっ子先輩…今日はスクラップにしてやるぜ。)
「オイ、徹底的にやれよ。」
RAIRAが声をかける。
「…了解。」
入場していく朝比奈に対し、声援2割ブーイング8割が混ざっている。
(もっと憎まれているかと思ったんだけどな。オレはRAIRAじゃねえからなあ。)
朝比奈は声援を嬉しく思う反面ヒールとしては複雑な気分であった。
「赤コーナーより榎本綾選手の入場です。」
ラズベリーミルクという軽快なリズムの曲が流れ、榎本綾が入場してきた。
いつもならば元気一杯の榎本綾であるが、今日ばかりは顔は真剣そのもので、額には桃のマークのあしらわれたハチマキが巻かれている。
(桃太郎の鬼退治ってか?岡山出身らしい考えだぜ。だが退治される気はねえっ!)
桃太郎・榎本綾と、鬼・朝比奈がリング上で向かい合う。
「鬼退治だ、桃太郎~~!」と観客から声がかかる。
「だから退治されるつもりはねえ、つーのっ!」
朝比奈はゴング前に仕掛けた。最近磨いているラリアート、オーガラリアートが榎本桃太郎の首を狩る。
「きゃうん!」
榎本綾の小柄な体が2回転してリングに叩きつけられた。
「BUUUUU~~~!!!」
ブーイングが飛ぶが、朝比奈はお構いなしでストンピングを連打連打連打!
カアン! 特別レフェリー、ミスターDENSOUの合図でゴングが打ち鳴らされた。
「これもプロレスですな。」
「ですね。榎本がどこまで頑張れるか…注目したいと思います。」
「今宵の試合形式で、二人の秘められた力きっと解放されるでしょうな。」
ダンディ須永と風間新には何か思惑があるようである。
「オラアッ!」
「きゃうっ!」
朝比奈のパワーが榎本を圧倒する。
ボディスラム一発をとっても高さ、重さが違った。
「朝比奈と榎本だとほとんどゴリラスラムですな。」
ダンディ須永は榎本の受身をチェックしながら呟いた。
「うーん、キャリアで体格差を埋めてもらえるかと期待したのですがね。」
体格だけ見れば朝比奈の方に分があるが、キャリアは榎本の方が上だ。
「悪い子はゆるさ…ない…も…ん!」
苦しみながらも起き上がった榎本は、逆にボディスラムで朝比奈を投げようとする。
「させるかよ。」
体重をかける朝比奈。
「ぐ…ぎぎぎっ!」
だが、榎本は全力を出して朝比奈をボディスラムで持ち上げ、ジャンプしながらリングへと叩きつけた。
「おおおおおっ!」
場内はどよめいた後、大きな拍手に包まれた。
「いいぞ、榎本~~。」
「ケッ…やってくれるぜちびっ子。」
朝比奈はどことなく楽しそうだ。
「タックルで勝負!」
榎本はそういってロープへと走った。
「上等じゃねえかっ!」
朝比奈も反対側のロープへと走る。
朝比奈はパワー溢れるショルダータックルで突っ込み、榎本はぴょんと飛びあがって回転しながらラリアートを放った。もっとも、高さが足らない上に、タイミングを間違えて頭から朝比奈の胸に突っ込む形になってしまったが。
「おごおっ…」
カウンター気味に予期せぬ攻撃を喰らった朝比奈がグラつく。
「チャンスだっ!」と観客から声がかかるものの、榎本は榎本で頭を押さえて蹲っている。
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