このお話はサバイバー1版NEW WIND編のアフターストーリー ”青空に虹が輝く”の外伝になります。
時間軸としては21年目頃のNEW WINDが舞台です。
時間軸としては21年目頃のNEW WINDが舞台です。
榎本綾 VS オーガ朝比奈
このカードを聞いて、NEW WINDのファンは「なんだ前座のカードかよ」と思っただろう。しかし、これはNEW WINDの後楽園プラザ大会のメインのカードである。
18期生榎本綾は、弱いことで有名であるが、どういうわけかビューティ市ヶ谷・八島静香といった先輩達に可愛がられており、最近は徐々に力をつけてきている。
一方のオーガ朝比奈は20期生であり、18期生のライラ神威が結成した暴風軍の一員に加わっているヒールレスラーである。しかしまだデビューから一年しかたっていないこともあり、実力的にはまだまだこれからだ。
18期生VS20期生…NEW WIND的には若手レベルの二人の試合がメインに抜擢されたのにはもちろん理由がある。その発端は1ヶ月前に遡る。
「オラアアッ!」
「きゃううう。」
ライラ神威&オーガ朝比奈組 VS ビューティ市ヶ谷&榎本綾組の一戦は大荒れの展開になっていた。
ビューティ市ヶ谷を手錠で場外の鉄柵に固定した暴風軍は、榎本にターゲットを絞りラフファイト三昧を繰り広げていた。
「オラアアアッ!」
ライラ神威は両手に持ったパイプ椅子を思いっきり榎本に振り下ろした。
「うああああああっつ!」
場内から上がった悲鳴の大きさが榎本の状況を表している。
「綾っ!綾っ!」
市ヶ谷が必死の声援を送るが、手錠でくくりつけられた状態では何もすることができない。
「オイ、朝比奈っ!スクラップにしちまいな。」
額から大量の血を流し、自慢の可愛いコスチュームを鮮血に染めた榎本をライラは実に楽しそうに蹴り飛ばした。
「お、オウ。」
朝比奈は血だらけの榎本を担ぎあげると、スクラップバスターでリングへと叩きつけた。
ガコオッ!
鈍い音がして「あぐぐうっ」と榎本がうめき声をもらした。
「なっ?!」
朝比奈が確認すると、そこには朝比奈のペイントがほどこされた一斗缶が置いてあった。
どうやら、ライラが設置したらしい。
「…カバーだ。」
朝比奈は少々不満げではあったがそのまま榎本の小柄な体に覆いかぶさった。
榎本は返すことができず、そのまま3カウントが入った。
「やったな。先輩から勝ったじゃねえか。くっくっくっ。」
ライラはそういってニタリと笑った。
「そうっすね。」
朝比奈はそっけなく言うと、倒れている榎本を見た。
(先輩からの勝利か…正直、勝った気はしないけどな。)
「てめえらっ!」
八島静香が榎本を救い出すべく、血相を変えてリングに飛び込んできたが、ライラは隠し持っていたメリケンサックで迎撃。八島は血を吹きながら、ダウンしてしまう。
「あん?なんだオイ?」
ライラはつま先を八島の頬にめり込ませるとグリグリとねじ込む。
「あぐあああああ…」
さすがの八島もこれには悲鳴をあげるしかない。
「…静香さんに、静香さんになにするのおお~~~っ!!」
余裕をかましていたライラの顔面に榎本の可愛らしいヒップがめりこむ。
「ぶはっ…」
油断していただけに、これは効いた。
榎本はマイクを要求する。
これには場内のファンは驚きを隠せない。
「許さない、悪い子は許さないもん!」
榎本はそういって朝比奈を睨みつけた。
(悪い子か…別になりたくてやっているわけじゃないが、今の役割はそういうことだからな)
朝比奈は無言でスタッフにマイクを要求し、それを受け取ってから「うるせえちびっ子。お前なんて相手じゃねえんだよ。」と自分より背の低い先輩を睨みつけた。
「チビじゃないもん。これから育つんだからっ!」
榎本はない胸を張って朝比奈を睨みつけた。額から流れていた血は止まっている。
「とにかく悪い子は許さないんだから!次の後楽園で朝比奈に一騎打ちでおしおきなんだからっ!」
榎本は興奮しながらマイクをリングに叩きつけた。
「ケッ…お前のちびっこい体をスクラップにしてやるぜっ!……つーわけで、風間っ!」
朝比奈は本部席でのんびりしていた風間社長に矛先を向ける。
「なんだ、朝比奈。」
風間社長は顔色一つ変えていない。
(さすがに長い事社長やってるだけはあるぜ…)
「今の話聞いていただろ?次のプラザで組んでおけよ。」
「次のプラザか。すでにカードは決まっていたんだがねえ。」
風間はやるきなさそうに答える。
「ええええ~~~っ」
場内のファンは即答を期待していただけに、落胆の声を出す。
「…でもカード一箇所空いているな。よし、そこにしよう。」
風間はそういってニヤリと笑った。場内からは拍手が送られる。
「…では、ついでだから来月の後楽園プラザの対戦カードを一部発表しておこうかな。メインイベント…シングルマッチ60分一本勝負。榎本綾VSオーガ朝比奈!」
風間社長の発表に場内は大きくどよめいた。
「なっ…メインだとっ?」
これに驚いたのは朝比奈。朝比奈はせいぜい第3試合くらいだと思っていたのである。
「不服か?」
風間社長は朝比奈をじっと見つめた。
「いや…文句はねえ。」
「そうか。なおこの試合、榎本が負けた場合はヒラヒラのコスチュームを脱ぎ、ヒール転向を。逆に朝比奈が負けた場合はヒールから脱退、ヒラヒラのコスチュームを着てもらう。」
場内がさらにどよめく。
「なっ!勝手にきめてるんじゃねえっ!」
「そっ、そんなっ?!」
朝比奈・榎本ともに動揺を隠せない。
「ま、楽しみにしているよ。メインに恥じない試合をしてくれよ。…それと朝比奈、私に話題を振ったのは上手いとはいえないな。悪いが、私のプロレス頭はよ~くまわるんだ。」
風間社長はじつに楽しそうであった。
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とにかくその一言です(笑)。かつてのウェイトレス罰ゲーム再びか?