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2024/04/20 22:43 |
30のお題”デビュー”~ソフィア物語~
 久しぶりのお題チャレンジです。
 少々長くなってしまいました。

 今回の主役はソフィア・リチャーズです。
誕生日祝いSSとして書いたのですが、お題デビューになるなと思ってお題入りさせます。
 では、続きからどうぞ。

 
 ソフィア・リチャーズは、人を殴れると聞いてプロレスラーになったワガママお嬢様。

「このっ!このっ!」
 ファイトスタイルも殴る・蹴るという打撃技一辺倒であり、基本的にはプロレスラーとしての完成度はまだまだ低い。
 打撃センスはあるほうなので、若手クラス相手ではある程度までは通用する。
しかし、プロレスというよりも「ケンカ」に近いので、観客からもあまり支持されていないし、先輩達もよく思っていない。

 この日の試合も負けてしまったソフィアは・・・

 ガンッ!

 控え室ロッカーを思いっきり蹴飛ばした。 

「なんでよ!どうして勝てないのっ!!」
 先輩たちによく思われていないので、アドバイスなど誰もしてくれない。

 だが、この日は違った。

「物に当たっているようじゃ、勝てるわけないよなあ。」
「だ、だれ!?」
 見知らぬ男に声をかけられ、動揺するソフィア。
振り向くと、日系人ぽい背の高い男が立っている。
「私か?私はMr.Nだ。」
 その男は無理やり作ったような低めの声でそう答えた。どうみても胡散臭い。
「ミスターN?聞いたことないわね。あんた、まさか私を誘拐しようってんじゃないでしょうね?」
「誘拐するならもっと可愛げのあるのにするよ。確かにお金はもらえそうだが、君は私の好みじゃないからね。」
「なんですって!」
 戦闘態勢をとるソフィア。
「まあ、そういきりたつなよ。ところで、ソフィア・リチャーズ。」
「・・・何よ。」
「強くなりたくはないか?」
 謎の男Mr.Nは唐突に切り出した。
「・・・そりゃなりたいけど・・・」
「ならば、私たちの指導を受ける気はないかな?」
「私たち?」
 ソフィアは聞き間違えかと思ったがそうではないらしい。いつのまにかもう一人の男が姿を現したのだ。
「な、何者!」
「私か?私の名前はダンディ須永。またの名を男爵龍(ダンディ・ドラゴン)という。」
「ダンディ・ドラゴン?・・・その名前なら聞いたことがあるわ。メキシコマットで猛威を振るった”オールド”ジャパニーズレスラーね。」
「”オールド”か。」
 苦笑するダンディ須永と、爆笑するMr.N。
「笑いすぎですよ、Mr.N。」
「失礼。”伝説のダンディ・ドラゴン”も、このお嬢様にとっては”オールド”とはね。」
「まあ確かに”NEW”ではありませんからな。」
 ダンディ須永は苦笑せざるを得なかった。
「・・・そのオールドがなんの用なのよ?」
「ソフィア・リチャーズ。ダンディ須永はメキシコのみならず、アメリカマットでも成功したレスラーだ。」
「知っているわよ、だからなに?」
「話は最後まで聞くことだ。このダンディ須永は、コーチとしての手腕も確かだぞ。なにしろあのNEW WINDのレスラーを育て上げたのは、このダンディ須永なのだから。」
  ”NEW WIND”女子プロレス王国である日本でも、トップクラスの規模とレベルを誇る団体である。

「あの、NEW WINDの?」
「そうだ。あのレベルまで引っ張れるとは言わないが、今のソフィア・リチャーズより数段上に登らせることはできるだろう。」
「・・・上に・・・」
「ああ。君は気に入らない先輩達を殴りたいと思っているだろう。それができるようにしてやろう。」
「・・・わかったわ。あなたは信用しないけど、そこの”オールド”は信用してみようじゃないの。」

 こうしてソフィア・リチャーズはダンディ須永の指導を受け始めた。

「そうじゃない。そこで打撃を狙っては相手に狙ってくれと言っているようなものだぞ!」
「うるさいわね!わかってるわよっ!!」

 ソフィアの特訓は続き、そして運命の11月22日を迎えた。

 久しぶりの復帰戦となるこの試合、団体側は勝手に欠場したソフィアへの制裁の意味を込めて、格上のレスラーをぶつけてきたのだ。

「上等じゃないの。ぶっ潰してやるんだから。」
 ソフィアはメディアを通じコメントを発したが、それを信じたものは誰もいなかった。
 なぜならば、ソフィアの勝気で無鉄砲な性格は誰もが知っていたし、例え格上が相手でも大風呂敷を広げると言うことをわかっていたからだった。

「今回もどうせヤラレるに決まっている。」
「今回は制裁試合だ。」
 このような空気が関係者のみならず、マスコミそして観客を支配していた。

「大丈夫だ、ソフィア。今のお前なら勝てる相手だ。」
「当然。魅せて勝つわよ。」
 ソフィアの中で何かが変わっていた。
(今の私は、前の私じゃない。濃厚な練習に裏打ちされた実力に自信を持つ、NEW ソフィア・リチャーズよ。)
 ソフィアはリングへと向かった。

「ソフィアなんか潰せ~!」
「やっちまえ~~!!」
(ハンッ!完全にヒールってわけね。上等じゃないの。)
 ソフィアは声援を受けまくる対角コーナーの先輩を睨みつけた。
(確かに以前の私なら勝てる相手じゃなかった。でも、今の私は違う。)
   
 運命のゴングがなった。

(やっぱりね。)
 先輩レスラーは打撃を警戒しながら接近してくる。
(今の私は、以前のような打撃だけの私じゃないのよ、先輩っ!)
 打撃を警戒する相手にソフィアは鋭いタックルを放った。
「!?」
 虚を突かれた先輩は簡単にタックルを許してしまい、ヒザをついた。
「舐めないでよねっ!」
 ソフィアは背筋力で相手を持ち上げると後方へと投げ落とした。
 タックルからの水車落し。
須永のライバルだった関野源吉の得意連携の一つだ。

「打撃中心だと思っている相手にはかなり有効だな。」
「ええ。私もよくアレでやられたものですからね。」  
 突然の出来事に戸惑う場内。
ソフィアはダウンした先輩のボディにローキックを連打する。
「調子にのるなああ!!」
 何度目かのキックをキャッチした先輩はそのままアンクルホールドに極める。
「ぐうっっ!」
 たまらずうめき声をあげるソフィア。
「このわがままお嬢が!調子に乗るんじゃないよっ!」
「このぐらいっ!」
 ソフィアは無理やり技を外そうとしたが、ダンディ須永の言葉を思い出す。

「状況をよく見て、最善と思われる手段を使え。なんでもかんでも無理やりはずそうとするんじゃないよ。」
  
(そ、そうだった・・・この場合一番有効な手段は・・・)
 ロープがかなり近い位置で極められていることに気づいたソフィアは手を懸命に伸ばしてサードロープを掴んだ。
「ブレイク!」
 レフェリーの声がかかる。
「チッ・・・」
「やってくれるじゃない。ちょっと痛かったわよ!」
 離れた隙をついてソフィアはチョップを繰り出す。
いつもはグーパンチを連打するソフィアがチョップを放ったので、会場にいた誰もが目を丸くした。
 バチーン!といういい音が会場に響き渡る。


「チョップなんて効かないわよ。」
 パンチではなくチョップを打てといったダンディ須永に対し、ソフィアはそう言って反論した。
「本当にそうかな?」
 ダンディ須永はニヤリを笑うと、ソフィアの胸元に強烈なチョップを叩き込んだ。
 コーナーまで吹き飛ばされるソフィア。
「ごほっ、ごほっ・・・」
 あまりの衝撃に息が出来ない。
「・・・な、なにするのよっ!」
 立ち上がろうとするソフィアだが、足に力が入らない。
(そ、そんな・・・たかがチョップで・・・)
「どうした、お嬢ちゃん?たかが、チョップでダウンかい?」
 ダンディ須永は意地悪な笑みを浮かべた。
「男子のチョップなんて卑怯よ!」
「これでもセーブしてるんだけどな。」 
 両手をひろげて肩をすくめるダンディ須永。

「いいかいソフィア。『魂を込めればチョップだって必殺技になるんだよ。』ソフィアはいい打撃のセンスを持っている。だが、勝てない。どうして勝てないか教えてあげるよ。」
「・・・」
「一つ一つの技を大事にしないからだ。チョップと一緒でパンチやキックだってただ打てばいいってもんじゃない。気持ちを込めて放つんだ。」

 そして今、ソフィアのチョップで先輩は片ヒザをついた。
「これが新しいソフィア・リチャーズよっ!」
 片ヒザをついた先輩の顔面にソフィアのキックがめり込んだ。

 たまらずダウンする先輩に組み付くソフィア。

「これでフィニッシュよ!」

 ソフィアは足をフックしたままドラゴンスリーパーを極めた。
キックもKOできるほど強烈な一撃だったのに、さらにその後初公開の絞め技をガッチリ極められてしまっては、先輩もさすがにタップするしかなかった。 

 場内はまさかの事態にシーンとなっている。
なにがあったか、わからないといった感じだろうか。

「変形ドラゴンスリーパーにより、勝者ソフィア・リチャーズ!!」

 このコールで、場内は事態をようやく理解した。
明らかに格上の先輩から、鮮やかなコンビネーションで勝ち星を上げたのだ。 
 今までのただ打撃を乱発するソフィアではなく、キック一つに魂を込めて大事に放つ、そしてただ殴る蹴るではなく、関節技も使えるという、新しいファイトスタイルのソフィア・リチャーズが生まれたのだ。

「どう?これがNEW ソフィア・リチャーズよっ!」
 右拳を突き上げるソフィアに歓声と拍手が舞い落ちる。

「ふーん、やるようになったみたいだね。」
 通路の奥で観戦していた団体のトップレスラーは嬉しそうに呟いていた。
「今度の日本遠征、アイツをパートナーにつれていってみるかな。」
 ソフィア・リチャーズは自身の誕生日を勝利で飾った。
また、この日は”プロレスラー”ソフィア・リチャーズが誕生し、デビューを飾った日ともなったのである。


「いいのかい、Mr.N。」
 会場を後にするMr.Nとダンディ須永。
「ああ。近い将来、日本で会えるさ。」
「そうですね。ところで、Mr.N。」
「なんだい?」
「どうしてMr.Nは、ソフィアにここまで肩入れしたんです?」
 ダンディ須永は以前から疑問に思っていたことを聞いた。
「ああ、それはね・・・私とソフィアの誕生日が一緒だからだよ。もちろん、年はだいぶ違うけどね。」
「・・・ただそれだけのことでここまでですか?」
「・・・まあね。多分うちだけだと思うよ、ソフィアの誕生日祝いをするところなんて。なんか放っておけなくてね。」
「はあ。」
「ま、そういうことだよ。」

(ハッピーバースデー、ソフィア。頑張れよ、これから。)
 


(終)



  主演:ソフィア・リチャーズ
友情出演:ダンディ須永(NEW WIND)
特別出演:Mr.N(N’sGAME)
  出演:謎の先輩レスラー、謎の大物トップレスラー 



 誕生日ということで、ソフィアのお話を書いてみました。
 なんとなく以前harutoさんが書いた作品の影響を受けている気もします。
 殴る蹴るというケンカファイトから脱却し、プロレスラーへと進化するソフィアをイメージしてみました。

 軍団NEW WINDにもそろそろ外国人選手を入れてもいいかな?
なんて思っていたりします。

 候補はソフィアか、ジョーカーかな・・・探すの大変そうですけどね。
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2007/11/22 18:00 | Comments(5) | 45のお題

コメント

こうきましたかw
力作です~~♪

うちもソフィアは好きなキャラでしたが・・・
所属団体と提携できる頃には、弱すぎて呼ぶことがほとんど無いという・・・(苦笑)

外人で一番好きなのは、”やわらか”ジーナでしたw

posted by オーサカURLat 2007/11/22 18:59 [ コメントを修正する ]
誕生日が同じキャラには特別扱いというか思い入れしたくなりますね。
私はナスターシャ・ハンと誕生日が同じ上に血液型と身長まで
同じなので贔屓にしています。
関節技とスペシャリストというのも私の好みにピッタリですし。
『愛』で配信されるのを楽しみに待っています。
今月はおそらくこないと思いますが(多分カオスな気がします)
posted by こげぱんだat 2007/11/23 02:18 [ コメントを修正する ]
外国人選手・・・、
アフロはいかがでしょうか?
髪をおろすと美人らしいですよ(笑)

私も最近誕生日キャラって探したんですけど、
いなかった、残念。
GI馬はいっぱいいるんですけどねぇ。

明日は府中に行くつもりです。
posted by jumpat 2007/11/23 15:46 [ コメントを修正する ]
おお……いいですねえ新たなるデビューの物語!
ソフィアというチョイスがまた渋いと思ったら誕生日が一緒でしたか!誕生日おめでとうございますっ
ジョーカーも一々偉そうな所が可愛いですよ~ダンディ須永ばりの変則的な戦いを想像しやすいキャラです。よくNさんの句のようにエースに負けて伸びてますけども(笑)
posted by HIGEURLat 2007/11/24 22:27 [ コメントを修正する ]
>オーサカさん

 思った以上に長くなってしまいました。
あの勢いで書いていたら、この3倍くらいの話になると思うのですが、無理やり縮めてこの話になりました。
 ジーナは前回使ったような記憶があります。

>こげぱんださん
 実は3日前に知ったのです(笑)
気に入ってるキャラではありましたが、まったく気づいてませんでした。
 ハンとそこまで被るんですか。
それは応援したくなりますよね。

>jumpさん

 アフロ(苦笑)
なんか微妙ですねえ・・・

>HIGEさん
 そういうことなんです。
お祝いありがとうございます。
 ジョーカーさんはキャップが高いらしいですね。 エース候補ですねえ。
posted by Nat 2007/11/25 03:03 [ コメントを修正する ]

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