NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
”夢を信じて生きてゆけばいいさ”
◇7年目5月◇
NEW WINDは旗揚げ記念興行を控えている。
WWCAとの契約は満了だし、ついでにTV局も更新の時期を迎えていた。
「金かかるなあ・・・」
私は帳簿と睨めっこをしながら頭を抱えていた。
「別に単独で興行を打っても埋まるとは思いますけれど。」
秘書の井上さんは常にクールだ。
「確かにその通りなのだが・・・パンチが足りないんだよね。」
「はあ。単独でも日本でうちより上の陣容を誇るプロレス団体はそうそうありませんけどね。せいぜい男子のメジャー 全・新・N・Dくらいですよ。」
「それはわかっているが、単独だと刺激が足りないからね。どこかと提携したいのだが、AAC→EWA→WWCAと順当にステップアップしたからね。いまさらGWAやTWWAというわけにもいかないだろう。」
「ではIWWFですか?」
「だな。オファーしてみ・・・」
トゥルルルル・・・トゥルルルル
まったくタイミングのよい電話だ。
「はい、NEW WINDでございます。」
井上さんが余所行きの声で応対する。
「社長、大日本TVからお電話です。」
「大日本TV?!」
私は声が上ずり、心臓がドキドキし始めたのを自覚していた。
大日本TVからの電話は放送契約と、IWWFとの提携の斡旋だった。
大日本TVとしては、NEW WIND中継をする前提条件としてIWWFとの提携を求めてきた。
ネームバリューがあれば確実といいたいのだろう。
IWWFとの提携には成功したし、月2回とはいえ全国ネットで中継されるのは大きい。
選手達を紹介するトーク番組も月1回で組んでくれたしかなりの好条件。
期待に応えるように頑張らないとね。
「すげえな。ついにきたか。」
「全国ネットならド田舎のマッキー先輩の地元でも中継されますもんね。」
「こら武藤!事実だけどよ・・・」
「一部地域を除くにならないといいけどね。」
ラッキーが笑う。
「こらラッキーお前まで・・・」
「草薙流の伝承者としては恥ずかしい試合をお見せできませんね。」
「全国ネットなんて夢みたいですう。」
「夢・・・じゃないよね。」
「信じていい話なんですか?」
反応は様々だ。
ただ嫌がる者はいない。
「大日本TVで中継・・・IWWFとの提携。旗揚げした頃は夢でしかなかった。いつかは実現したいと思っていた夢。ありがとうみんな。でもこれがゴールじゃない。もっと上へ行こう!」
あれ・・・反応がない。
「社長・・・熱くなりすぎよ。」
南に突っ込まれる。
「そうそう、引いちゃうぜ。」
「そうですよ社長。」
「まったくだ。」
「年考えてくださいですう。」
ガーン・・・
「なんてね、冗談よ。」
この南の言葉に選手たちが一斉に笑う。
く・・・やりやがる。
夢といえば今月のファイナル、有明大会のメイン。
IWWFタッグ王者 ルミー・ダダーン、レッドフェンリル組に挑む挑戦者は南利美・ハイブリット南の姉妹タッグ。
ハイブリットの成長を感じたことと、南の希望もあっての挑戦。
今の二人のレベルならIWWFタッグは取れるだろうな。
「31分30秒、31分30秒・・・パイルドライバーからの体固めで勝者 ルミー・ダダーン!」
まさかの敗退劇に観客も声をなくす。
私も勝てると思っていただけに言葉にならない。
合体パワーボム、ラリアート、パイルドライバーと鮮やかに力で押し切られ、ハイブリットがフォールされてしまったのだ。
「・・・」
南は無言で右手の人差し指を立てる。
もちろん意味は”もう一度”だ。
ルミーはにたりと笑うとマイクを要求する。
「ジャパンでは物を頼むとき・・・”ドゲザ”という事をするときいた。
ここでドゲザしてみろ。みてみたい。」
勝ち誇るルミーは南を挑発。
「こ、この!」
ハイブリットがいきり立って殴りかかろうとするが、南が腕でそれを制す。
それを見てハイブリットを止めようとしていたセコンドたち、および殴りかかろうとしていたであろうマッキーが動きを止める。
それらを一瞥した南は、ルミーを一瞬キッと睨みつけると、迷わずリング上で土下座をしてみせた。
「お願いします。」
これには会場中がしずまり返る。
「これがドゲザ?・・・ノンノン・・・トシミ、ちょっと違うね。」
ルミーは右足で南の頭を踏みつけるとグイグイと押し込む。
「確か本でみたのはこうだったよなあ。”ズガタカイ”というんだっけ?」
「こ、この!」
マッキー、ハイブリット、吉田が飛びかかろうとするが、南から放たれる無言のプレッシャーに動きを止める。
「お願いします。」
南は額を擦り付ける。
「あっはっは。いい格好だよトシミ。」
ルミーは勝ち誇る。
「OK、受けてやろう!」
とルミーがいった瞬間、ルミーの体がクルンと横回転してリングに横たわる。
南がルミーの右足を素早くとってサザンスクリューを決めたのだ。
「言質さえとれば言う事をきく必要はないわ。」
この後IWWF勢との間で乱闘騒ぎがおきたのは言うまでもない。
「よく我慢したな。」
「まあね。言質とるまでは言う事をきいてあげようと思っただけよ。」
南の雰囲気はちょっといつもとは違う。
「どうしてそこまでした?」
私は答えはわかってはいたがあえて聞く。
「社長も意地悪ね。わかっているのにあえて言わせる気?」
「まあな。」
「時間がないから・・・ってのが一つ。今までも落ち始めている気はしていたけど、今日の試合ではっきりとわかったの。衰えが試合に影響をし始めていると。」
南は真剣な表情のままだ。
「そうか。やはり・・・」
「息があがるのがはやくなってるし、跳躍力や瞬発力も自分のイメージどおりにはいかないの。」
「それだけで、あんなことをする南利美ではないんだろ。」
「もちろん、時間がないのは確かだけど、私にとってはハイブリットとのタッグでベルトを巻くのは”夢”なのかもしれない。あの子がうちのリングでデビューした時から抱いていた夢。姉妹でタッグ王者になること。
あの子はまだ荒削りだけど、成長したわ。これからもっと強くなるでしょう。でもその頃には私はいない・・・だから今、私が先輩トップレスラーでいられるギリギリのうちにやっておきたいの。」
南の瞳は決意を映し出していた。
「ボロボロな翼になる前に・・・か。」
「ええ。破れた翼程度であるうちに・・・ね。」
南は両腕で自分を抱きしめる。
彼女の腕の中にエンジェルの翼が見えた気がする。
7年というレスラー人生の中で輝いていた南の翼。
その輝きの数だけ傷ついた南の翼。
輝きを放てる回数はもうそんなに多くないだろう。
「南、夢をかなえろよ。」
「私の夢はこれだけじゃないから・・・まだあるから。来月、姉妹タッグでの王者戴冠を叶えて・・・そしたら・・・最後の夢へ向かって頑張るだけよ。」
NEW WIND6月興行にてリマッチ決定!!
南の”夢を信じて”・・・
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夢を信じて=徳永英明さんの1990年発売のシングル曲。
TVアニメ”ドラゴンクエスト”の主題歌として大ヒットを記録(70万枚強)。
今回のイメージソングです。
なお翼の話はは歌詞にある”破れた翼を胸に抱きしめて”の部分と、サバイバーのロゴからです。
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