NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
◇11年目1月◇
シリーズ5戦目。
会場はなんともいえないムードに包まれていた。
あの絶対王者だった結城が、後輩のジーニアスに押されている。
それはある意味衝撃の試合展開だった。
結城の動きは想像以上に悪い・・・いやジーニアスがよくなったのか。
ライバル(?)である同期の相羽が”自分よりも先にタイトルマッチに挑む。”この屈辱がジーニアスを急成長させたのかもしれない。
「くあっ・・・!!」
ジーニアスのサソリ固めに悶絶する結城。
長年の激闘のダメージが蓄積されている膝には厳しい技だ。
「結城、ギブアップ?」
クールな声が飛ぶ。
この試合を裁くのは新人レフェリーのギムレット美月(本名は杉浦美月)。
新人のわりに、冷静かつ正確なレフェリングを見せてくれている。
「ま、まだ・・・」
「そう・・・ならっ!」
ジーニアスがさらに絞りあげる。
客席からはサプライズを期待する声と、結城へ必死に応援する声が飛ぶ。
「!!!」
結城の右手がマットを叩いた。
タップした?
「!」
ギムレットがゴングを要請する。
カンカンカン・・・
試合終了を告げるゴングが鳴り響いた。
客席は大騒ぎ。
「11分40秒 サソリ固めで勝者、ジーニアス武藤。」
膝を抱えてダウンする結城に藤島が駆け寄ってコールドスプレーを吹きかける。
「よし!」
小さくガッツポーズをするジーニアス。
結城がついに9期に敗れる時が来たか・・・
9期の成長の証でもあるが、なによりも結城自身の衰えが顕著になってきた証拠だと思える。
「負けちゃいましたね。さすがに悔しいです。」
と一言だけ私に言った結城は控え室にこもってしまった。
私は結城のリベンジを期待して、最終戦なにわパワフルドーム大会のカードにジーニアスVS結城のシングルを急遽組み込むことにした。
しかし・・・
「10分9秒、10分9秒 浴びせ蹴りからの体固めで、勝者ジーニアス武藤!」
パワフルドームに響いたのは結城の敗戦を告げるコールだった。
「結城・・・」
「負けちゃいました。」
肩を落とす結城。
「・・・」
私はかける言葉を探した。
“衰えをみせた先輩が後輩に敗れる。”
何度も見てきた光景なのだが、いつも言葉につまる。
「社長、気を使ってくださってありがとうございます。私は大丈夫ですから。」
私の頬を何かが流れ落ちる。
「社長、社長が泣いちゃだめですよ。」
結城はタオルで私の顔を拭いてくれた。
「すまない。」
私はそういうのがやっとだった。
「私、今日は楽しかったですよ。」
「楽しかった?」
私は意外な言葉に思わずオウム返しになる。
「はい。めぐみが引退した時、もうめぐみと試合することはないと思っていたけど、今日のケイとの試合はめぐみと試合をしているみたいでした。顔立ちが似ているのは確かだけど、なんていうのか、リング上での雰囲気が似てきたかなって。」
結城は楽しそうにしゃべる。
「雰囲気か。」
「はい。リング上での存在感が増したって感じです。あの子は似ているってことを否定していますけど、ケイはめぐみに似ています。今後団体を背負っていけるだけの選手にもなれると思います。なんだかめぐみと試合しているみたいで楽しかったです。」
と結城は笑顔でいう。
「それにドームで楽しく試合できたのって久しぶりだと思いますし。ドームっていつもベルトのかかった試合だったから。」
「そうだったな。」
「はい。でもそれがエースの務めでしたから。」
「ありがとう結城。これからもプロレスを楽しんでくれ。」
「はい。」
結城はにこっと笑う。
気負いのない、プレッシャーから開放された笑顔だった。
「いけね、忘れていたよ、TOY‘S=SWORDの樋蔵社長から食事券が贈られてきている。せっかくの大阪だ。おいしいものでも食べておいで。」
「わあ!うれしいですね。おもちゃの剣の会社さんですね。感謝のお手紙書かなくちゃ。O坂といえば・・・たこ焼き?」
「O坂ではなく大阪だ。うーん・・・お好み焼き?」
「でもこの食事券が使えるところじゃないといけませんね。」
話は遡るがこの日の休憩前にスイレンのMVP受賞のセレモニーがあった。
スイレンにお祝いの“白い薔薇の花束”を手渡したのはスイレン草薙ファンクラブ書記長の「U」さん。
憧れのスイレンを前にカチンコチンになっていて、客席から失笑ももれたのだが、スイレンはにこやかに花束を受け取り「ありがとうございます。」と丁寧に頭を下げた。
「が、頑張ってください、今日のタイトルマッチ応援しています。」
と握手しながら声をかけた「U」さんに「はい、今日は見ていてくださいね。」とスイレンは力強く応えていた。
「U」さんは完全に舞い上がっていたので、無事帰れるか心配。
「白い薔薇・・・“私はあなたにふさわしい”ですか?」
「いやいや“尊敬”ととっておこうよ。」
「どちらにしてもちょっと照れますね。」
☆メインイベント MAX WINDタッグ選手権試合☆
スイレンと相羽のフレッシュコンビは、衰えを見せている永沢をターゲットに攻め込んでいた。
「これで終わりです!」
スイレンが永沢を担ぎ上げる。
この瞬間“どわあああ”と盛り上がる場内。
この体勢はスイレンのフィニッシュホールド、草薙流阿修羅退治。
この技はすでに先輩たちを破ってきた実績十分な技だけに、決まればフィニッシュになる可能性も十分ある。
「駄目ダメ~!!」
担ぎあげられた永沢は体を動かして抵抗する。
草薙流阿修羅退治は両足をフックして担ぎ上げている。
一見完璧な技なのだが、“首がフックできていない”。
だからこの技に入る前に相手の抵抗力をある程度奪っていないと決まらないのだが、永沢はさすがに現女王だ。まだ体力を残していたらしい。
うまく首をはずして上半身の自由を得るとスイレンの首筋にエルボーを打ち込み脱出。
スイレンのバックに回りこむとすばやく“ノーアピール・テキーラ”を発射。
『・・・無駄なアピールはいらない・・・の』
とよく永沢の師匠である伊達がいっていたなあ。
カウントは2.5。
これは永沢の想定内で永沢はさっと吉田にチェンジ。
「いけ~龍ちゃん!」
「よっしゃああ!」
吉田はようやく起き上がってきたスイレンの喉元に豪快に右腕を叩きこむ。
「カバーだ!」
そのまま体固めで押さえこむ吉田。
「させないっ!」
相羽がすばやくリングインしてカバーしている吉田の顔面にミドルキック。
「蓮さん!しっかり・・・」
相羽は青コーナーまでスイレンを引っ張ろうとする。
(※一応プロレスの定義では自軍コーナーのタッチロープを持っていないとタッチはできないのです。)
「この野郎・・・やってくれたなっ!」
相羽に蹴られた顔を押さえて立ちあがった吉田は物凄い形相で、突っ込んでいく。
ドゴン!
相羽の喉に食い込んだ右腕はそのまま相羽の体を持ち上げ、コーナーポストへと叩きつけた。
吉田のパワーはすごい・・・
相羽だって決して軽いわけじゃないのに右腕一本で2mほど運ぶか・・・
「永沢!押さえておけっ!!」
「OK任せてマカセテ!」
永沢はダウンしている相羽へとすばやく組み付きスリーパーを仕掛ける。
「決める!」
吉田はスイレンの長い髪をつかんで無理やり引き起こす。
「うおおおおっつ!!」
吉田がフィニッシュに選んだのはプラズマサンダーボムだった。
“まだ発展技であるプラズマサンダースライドを使わなくても勝てる”ということだろうか。
吉田のこだわりは叩き付けたあとの首の固め方だ。
きっちりと体重を乗せてガッチリと押さえ込む。
トニーは2度マットを叩いた後、首を振ってから3度目のマットを叩いた。
「28分59秒 28分59秒 プラズマサンダーボムからのエビ固めで勝者吉田龍子!」
女王組が新世代の挑戦を退け初防衛に成功。
なお本日の観衆は52369人。
世間的にはまだまだ浸透していないスイレンと相羽のコンビを起用してこれだけ集めることができたのはとても大きい。
先への期待ができるよね。
なお、この試合でフォールをとった吉田にMAX WINDシングルの挑戦権が与えられた。
◇11年目2月◇
最終戦の九州ドーム大会は57204人(超満員札止め)
この大観衆に期待に応え、吉田はついに念願のMAX WIND女王の座についた。
もっとも、もう永沢に女王戦に耐えられるだけの力はなく、まさに女王移譲の儀式に過ぎなかったのであるが。
この移譲により初代結城が高めた女王の価値は落ちた。
これを第3代女王 吉田龍子がどこまで上げることができるか。
そしてエースの座を完全にものにすることができるのか。
“MAX WIND女王”吉田龍子
“MVP”スイレン草薙
NEW WINDのエースの座はこの二人に絞られたといえるだろう。
「まだ、私がいるわ。完璧なエースを目指してみせる。」
そうだった。ハイブリットもいるし、ジーニアスと相羽の9期コンビも力をつけてきてくれている。
鮮度のいい若手の上位台頭により、NEW WINDはまた面白くなってきたね。
”新女王吉田”がエースの座を狙うハイブリット南、そして”新鮮力”であるスイレン&シャイニング&ジーニアス&相羽の8・9期連合の挑戦をどこまで受けきることができるか楽しみだね。
NEW WINDはまもなく12度目の春を迎える。
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P.S.ちなみに「U」は30代の既婚者&子供ありの設定です(笑)