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2024/04/20 21:11 |
”神” その59
NEW WIND社長 風間 新 手記より。


※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
 ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
 それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
「また・・・かよ。」

 6年目10月シリーズ”秋の風” 第1戦は高知大会、つまりは南姉妹の凱旋興行を予定していた。
 
 だが・・・事故に巻き込まれてしまい、興行は中止に。
台風は自然災害だから仕方ないが、事故は人災。
 事故を起こした奴らに賠償請求したいよ・・・って前も同じ事をぼやいたな。
 事故をするのは仕方ないけど、人を巻き込まないところでやって欲しいものだよ。

「ハイブリットが地元で試合しても恥ずかしくないようにって神のお導き・・・だったと思えばよいのじゃない?」
 南から神なんて言葉が出てくるとは驚きだ。
「生憎だけど、信仰心なんてものは持ってないわ。だけど、プロレスのリングには神がいる。それは間違いないわね。」
「南さんにしては珍しいお言葉ですね。確かにプロレスのリングは神の住まう神聖なもの。 だから皆リングへ入る前にはリングへ頭を下げるのです。リングの神へは”今日もよろしくお願いします。”これだけでよいのですよ。」
神と聞いてみことが反応する。
「女子プロレスラーの事を格闘美神という人もいるからな。だとすれば皆が女神となるけど。」
 この私の言葉に皆がお互いの顔をチラチラ見ているのがわかる。
「武藤が女神なんてありえないな。こんなにツンツンしやがってよ。」
「マッキー先輩こそ。がさつな女神なんて聞いた事ありません。」
「女・・・神?」
「私もですかあ?」
「・・・永沢先輩が女神・・・それはどうかと。」
「龍だって人のこといえないじゃない。」
 移動のバスの中、皆が口々に言い合いになってしまった。
この様子を見て私はそれはファンの勝手な幻想にすぎないのだと思った。
 
「ふん、女神はいるかは知らないが、神はいると思う。」
 カンナが突然口を開いたので、皆が黙ってカンナの方を向いた。
「・・・私はリングには神がいるとは思っていないが、このマスクをつけている時は神を感じる。」
 カンナの口調は真面目で、冗談を言っている顔でもない。
「カンナさんはカンナ神威というリングネームですものね。神は意識していると以前から思っていましたけど。」
「そういやさ、カンナって謎だらけだよなあ。アタシはリングネームと北海道出身だって事しか知らないぜ。」
「ですね。私も以前から気になってました。」
 ジューシーペアがここぞとばかりにカンナの顔を見る。

「カムイとはアイヌの言葉で”神”のこと。そして神威は”シンイ”とも読める。これは・・・神の威光という意味だ。私は神の力を得ている神の使いさ。だから本名や経歴などは必要ない。」
 カンナが皆の前でここまで喋るのは珍しい・・・というか初めてじゃないのか?
「だから強いんですね!」
と、はしゃぐのは永沢。
「永沢先輩、カンナ先輩が強いのはそうじゃないと思いますが。」
 後輩の吉田に突っ込まれる永沢って・・・
「いや永沢の言ってることは正しい。」
 このカンナの言葉に皆驚きの表情でカンナを見る。
私はこの話の続きは知ってるから顔色を変えたりはしないけどね。

「私は友人と二人で森にある洞窟に遊びに行っていた。」
「友人いるんだ・・・意外ね。」
「人のこといえないでしょ、めぐみは。」
「そこ・・・聞こえているんだが・・・」
カンナは低い声で言う。迫力あるなあ・・・
「ごめんなさい。」
「でだ、洞窟の奥に二人で入っていって、どれくらいたったのか私達は足を滑らせてしまって奥の方へと滑っていってしまったんだ。そのまま私達は気を失い、そこで夢を見た。」
「夢・・・?」
 伊達がようやく言葉を挟む。
「ああ、夢だ。 これが奇妙な夢でなんだか”神”を名乗る人物が現れて、”お前を待っていた”とかいうんだ。 私がどんな言葉を返したのかは覚えていないが、私は”神”を名乗る人物に認められたらしい。
それだけは覚えている。 そして私は”神”からあるものを授かったのだ。それは・・・」
 カンナはここで言葉を切って場の雰囲気を確かめる。
皆初めてきくカンナの話に引き込まれている。
「それは・・・?」
と聞き返したのは、武藤。
実は一番引き込まれているのは武藤なんだよね。
 
「この”マスク”だったのさ。目が覚めた時私はマスクウーマン”カンナ神威”に変身していた。一緒にいた友人も同じような夢を見たらしいそして友人は・・・」
「・・・ライラ神威選手?」
とラッキー。
「ご名答。今はフリーでインディ団体を暴れているみたいだけどね。」
「・・・でもお二人はあまりにファイトスタイルが違いますが。」
みことが首をかしげる。
「簡単な事さ、ついた神が違う。私には”知性の神”、ライラには”残虐の神”がついた。それだけの事さ。」
「なるほど。」
「だから私は神をマスクから感じる。それだけの事。」
「カンナがそのマスクと出会ったのは運命だったのね。」
「・・・そうかもしれないな。もしかすると私達以外にも神のマスクに出会う奴もいるかもしれない・・・二人ほどな。」
「カンナはある種巫女なのかも知れませんね。」
「巫女?カンナ先輩が?! ・・・怪しい新興宗教の教祖なら分かるけど。」
「めぐみ!」
「武藤・・・あなた確か次の試合は私とだったわよね?せいぜい腕の心配でもしておくんだね。」
カンナはゾクリとするような悪魔の微笑みで武藤を見る。
「負けません!」
こういうときは謝るのが筋なんだけど・・・な。
「武藤らしいね。ま、いいけど私も巫女なんかは似合わないと思う。」
「は、はあ。」
「巫女とは神に仕えて神事を行い、また、神意をうかがって神託を告げる者という意味なんです。私は前半の役目はできますが、後半はまだ未熟なので。カンナは前半は”無理”ですが、後半に近い存在なのかもしれませんね。」
 みことはちょっとだけ”無理”という言葉を強調する。
巫女としてのプライド・・・いや誇りという奴だろうか。
「ホワイトスノーは”パーフェクト巫女S”でもあったわけね。」
「私が巫女ならライラも巫女になるわけだけど?」
「うっ・・・!それは認めたくないです。」
 このみことの反応にバスの中は笑いに包まれた。
私はフリーで活動しているライラ神威が巫女の装束を身にまとっている姿を想像してみた。

 ”神のお告げ?そんなもんしるかっつーの。俺は暴れたいから暴れるだけだぜ!”
 激しく似合わないな・・・もしうちの団体で巫女装束が似合うとすれば、氷室・伊達そして南・・・姉妹くらいなものか。 
 って何を考えてるんだか私は。

 さて肝心の興行の方はだけど、今月はちょっと大人しめ。
タイトルは1戦のみだし、注目のシングルもあまり組んでいない。
 

☆結城千種 VS 武藤めぐみ ☆

 いつものハイスパートレスリングを展開し、15分11秒 バックドロップからの体固めで結城が勝利。
 結城はVS武藤戦連勝。
実力はほぼ五分五分だと思うから、今回勝利の女神が微笑んだのは結城の方だったという事だろう。

☆カンナ VS カオス☆

 神に選ばれしマスクウーマンであるカンナだが、どうにもカオスが苦手らしい。
 もしかするとカオスも神に選ばれしマスクウーマンなのかもしれない。
例えば”強力の神”とかさ・・・でもカオスってギリシャ語で混沌とかを差すわけだし・・・ちょっと違うかも。
 今回もダークスター・ハンマーで3カウント(14分24秒)  
このカオスというレスラーの存在はNEW WINDマットを本当に混沌とさせてくれているよ。
 
☆EWA認定世界ヘビー級選手権試合☆

 王者結城に、元王者南が挑む。
南は気合十分なんだけど、やはり今の結城は南より一枚も2枚も上の存在
なんだなと思わせる試合内容だった。
 南VS結城で南がペースを作れなくなるなんて思いもしなかった。
実力が上の選手にペースを握られてしまっては勝ち目は少ない。
 南も関節技で抵抗するのだが、結城も関節は巧いほうだし、ポイントをずらされてしまい極め切れない。そうこうしているうちに結城のラッシュに捕まってしまった。
 結城のニ段蹴り→裏投げはなんとかクリアした南だったが、2度目のニ段蹴りをまともにもらってしまいTHE END。

○結城(23分13秒 ニ段蹴り→片エビ固め)南×
 ※結城は初防衛に成功  

 南にはちょっと秋風が染みる結果かもしれない。
正直ここまで実力差があるとは思わなかったよ・・・
「仕方ないわ。結城はまだ伸びるのに私は現状維持が精一杯なのだから。」 
 南は笑顔でいうが、瞳は悔しさと寂しさを映しているのに私は気づいた。
 もう10月も終わりだ。風が冷たく変わってきている。
・・・もう冬の足音が聞こえる季節になるんだな。
 ”時が過ぎる”・・・それは南利美の”レスラーとして1流でいられる時間”が少なくなった事を意味する。
 冷たくなった風が暖かくなり、緑の風を感じる頃になると、1流レスラー南利美はいなくなってしまうのだから・・・

 私は色々な思いを胸に「南・・・」と声をかけた。

NEW WINDはまもなく6度目の冬を迎える。

  

 ↓こちらから管理人にメッセージを送ることができます。


 





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2006/11/27 01:24 | Comments(2) | NEW WIND編

コメント

パソコンが壊れておりましてしばらく来れなかったのですが、直りましたのでこれからまたよろしくお願いします。
posted by ぷいにゅat 2006/11/28 16:01 [ コメントを修正する ]
 わざわざありがとうございます。
マイペース更新、進みは異常に遅いので60回で6年12月に突入です。
 結構書いてますので、ゆっくりと読んでいただけると幸いです。

 さらに・・・また外伝部分を執筆してます。
また遅くなりますねこれじゃ(苦笑)
posted by Nat 2006/11/28 17:21 [ コメントを修正する ]

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