その後カンナ神威の姿を見たものはいない。
カンナの残した神威マスクは、最強のマスクとして、そしてカンナの身につけたアイテムは最強のコスチュームとして、後の世まで語り継がれていったという。
そして伝説へ・・・
カンナの残した神威マスクは、最強のマスクとして、そしてカンナの身につけたアイテムは最強のコスチュームとして、後の世まで語り継がれていったという。
そして伝説へ・・・
というのは冗談で、インタビューに答えるときは予備のマスクをすでに着用していたし、バックステージではタオルで顔を隠していたので、誰も顔を見ていなかった。
“すっごい美人”という噂なのだがねえ。
眼鏡を外すと美人というのはよくあるケースだが、マスクを外すと・・・どうなんだろうね。
どちらにせよ、所属選手でもカンナの素顔を見た者はいないから、マスクを脱いでしまえばわからないだろうなあ。
あの時、南の時のようにバックステージで出迎えるべきだった。
惜しい事をしたな。
なお九州ドームのメインはMAX WINDの防衛戦。
最近衰えを見せてきた女王結城だったが、5期吉田の挑戦を完全に退けて、4度目の防衛に成功している。
結城も選手としてのピークを超えているはずだが、2番手グループの永沢・吉田・ハイブリットとの差は大きいな。
そしてどさんこドームのメインはAACタッグ選手権。
“νジェネ”結城&武藤が”ドラゴンダンス”永沢&吉田の王者組を撃破し、王座を奪還している。
時計の針が逆戻りだ。
しかし、結城はこの5月シリーズで首を痛め戦線離脱。
復帰まで2ヶ月(重傷)と診断され、復帰は8月となる。
さらに5・6月シリーズで無理をした、みことが右肩を痛め、こちらも2ヶ月(重傷)の戦線離脱で復帰は9月。
さらに伊達、なぎさも6月シリーズで負傷。(ともに復帰は8月)
そして7月シリーズ終了後にはマッキーが引退を表明する。
8月シリーズからは結城、伊達、なぎさが復帰する。
ちゃんと復帰のタイミングを見てくれているのはありがたいけど。
「すまねえ社長、まだいけると思ってたんだけどよ・・・」
マッキーはさすがに元気がなかった。
限界を感じたのかな・・・これがマッキーのSAYONARAの理由(わけ)か。
「・・・わかった。もう引きとめはしないよ。」
「なんだよ。それはそれで寂しいじゃねえか。」
「・・・どうせ引き止めても無駄だろう?」
皆そうだった。
「まあな。みんなもそうだったと思うけど、よく考えた結果だからな。」
「わかった。それで、どうしたい?」
引退ロードのプランニングと、引退試合の演出の希望を聞く。
「そうだな・・・こんな感じでいきたいんだけど、いいかな?」
「わかった。いいだろう。」
「それで頼むよ社長。今までありがとうな。」
ちょっとはにかむマッキー。
なんだ可愛い表情できるじゃないか。
「マッキー、その表情ができるなら安心だ。いい相手に巡りあえるよ。」
「ば、ばっか野郎!何言ってんだ!」
うんうん。プロレスをやめるなら女性らしくな。
マッキー、お疲れ様。
だが、折角タイミングを見てくれたのに、こういう時に限ってタイミング悪くAACから防衛指令が・・・
結城と武藤が興行には参加できなくなってしまう。
「ちっ、最後にボコボコにしてやろうと思ったのによ。」
「私がボコボコにするんですけどね。残念です。」
マッキーと武藤はお互いに毒づきながら抱擁をかわす。
「武藤、お前はまだやれる。簡単にやめるなよ。」
「はい。マッキー先輩。」
瞬発力に陰りが見える武藤を心配してのマッキーの言葉に武藤は素直に頷いている。
なんだかんだで仲よかったのね・・・
「マッキー先輩お疲れさまでした。寂しくなりますね。」
「結城、このバカ頼むな。」
マッキーはポンと武藤の頭を叩く。
「任せてください。さ、めぐみ行くよ。」
「ちょちょっとバカってなによ。」
マッキーの引退試合は大阪に決定。
さすがにプロ野球のシーズン中、しかも夏休みになにわパワフルドームを押さえる事は出来なかったので、大阪城アリーナ。
超満員札止めの観客を集め、マッキーは最後の試合に臨んだ。
最後の試合は伊達とのシングル。
先に伊達が入場し、マッキーを待ち受ける。
「赤コーナーより、“ジューシーペア”マッキー上戸選手の入場です。」
例によって引退試合のコールは私。
ここで流れた入場テーマはマッキーの曲ではなく、タッグチーム“ジューシーペア”のテーマ。
このテーマがかかるのは、2年2ヶ月ぶり。
このテーマに乗って姿を見せたのはジューシペアーのロングガウン着用のラッキー内田。
(ただし、ガウンの中からはジャージがちらりと見える。リングコスチュームではないのは試合をするわけではないから。)
このサプライズ演出には場内から大歓声。
続いて本日の主役マッキー上戸が同じくジューシーペアのロングガウンを着用して入場してくる。
二人は花道の途中で止り、右手で銃の形を作ると天井を指差す。
ジューシーペアのお得意の決めポーズだ。
バアアン!!
特効が打ち鳴らされ、金色のテープが飛び出す。
ラッキーが先導する形で花道を歩き、
そしてラッキーがロープを持ち上げ、マッキーがリングイン。
「マッキー!」
「ラッキー!!」
「タッグに変更しろ~~!!」
と様々な声があがる。
「お相手いたしましょうか?」
セコンドのみことがジャージを脱ぐ仕草をする。
「私はセコンドだから。」
と笑い、ラッキーはガウンを相羽へ投げ渡すとセコンドにつく。
「お待たせいたしました。本日のファイナルマッチ、マッキー上戸引退試合を行います。」
そして試合が始まった。
伊達の攻撃を裁ききれないマッキーがじわじわと追い込まれていく。
「勝機、見逃すわけにはいかない!」
伊達がシャイニングフェニックスを狙う。
「げっ!・・・お前食らってくれ。」
マッキーはそばにいたレフェリーのトニー館を投げつける。
「しまった・・・」
伊達のシャイニングフェニックスを食らいダウンするトニー。
セコンドの若手達が慌てて介抱するが、しばらくは動けそうにない。
「ラッキー!」
「任せて!」
レフェリー不在と見てラッキーを呼び込むマッキー。
「えっ!」
二人がかりで伊達に組み付くとロープへと振る。
歓声の中、繰り出された技は合体ドロップキック!
ブランクを感じさせない息のあった合体ドロップキックに場内から歓声。
「く~っ、たまんねえなあ。」
「ほら、ぼやっとしないの。次いくよ。」
「OK!」
ダウンした伊達を無理やり引き起こし、合体ブレーンバスター!
「いたっ!」
これはシングルマッチであるから、セコンドの加担は反則。
だがしかし、レフェリーが見ていないのだから、だれも反則は取れない。
普段の試合ならこういう状況ではブーイングが飛ぶものだが、今日はマッキーの引退試合、そして久しぶりのラッキーとのコンビネーションに観客は心奪われており、誰もブーイングは飛ばさない。
「まだまだああ!」
さらに伊達を引き起こし、二人はそれぞれ対角のロープへ走る。
サンドイッチラリアートが炸裂。
二人の息はぴったりだ。
「よーし、カバー!!」
さっとラッキーがリングサイドにおり、マッキーがカバーに行く。
ようやく復帰したトニー館がフォールしている状況を見てカウントをとる。
しかしカウント2.8でクリア。
「レフェリー、遅いんだよ!」
とマッキーは毒づくが、これは本心ではない。
が、この瞬間隙が生まれた。
「勝機!」
伊達がマッキーのわき腹を踏み台にしてシャイニングフェニックスをマッキーへと叩きこむ。
そしてそのままカバーし、3カウント。
「アタシとしたことが・・・しょっぱい終わり方だな。」
とマッキー。
「でもラッキーの足、もう問題ないんじゃないのか?応援するぜ、絶対復帰しろよ!」
相棒の回復を感じたのだろう、マッキーは満足そうだ。
「うん。頑張る。まだ不安はあるけど、思ったより動けたわ。」
ラッキーのコンディションは確実に上がっているみたいだ。
動きを見た限りでは復帰の時期は近いんじゃないかな。
それがどこのリングになるかは知らないけど、応援したいな。
試合でサプライズを魅せたマッキーは静かにセレモニーを終え、リングを去った。
↓ご感想などはこちらからどうぞ。
PR