「栄光のスターロード」
NEW WIND社長 風間 新 手記2より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
NEW WIND社長 風間 新 手記2より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
◇そして35周年◇
あれから月日が流れ、NEW WINDも旗揚げ35周年を迎えた。
長いようで早かった気がするよ。あの頃の私は若かったな。
認めたくないが、その若さゆえに『1シリーズ4ドーム興行』を開催するという無茶な事をしたものだが、それも懐かしい話だな。
無茶をしすぎた反動か、今のNEW WINDにかつての勢いはなくなってしまった。
現在は2000人会場を埋めるのに四苦八苦、年に1回のビックマッチは4000人会場で打つのが精一杯だ。
その原因はスター選手の不在にある。
あの頃は、毎年のようにスター選手が誕生していたし、勢いがあった。
私は、あのスター選手たちがいた時代を『レッスルエンジェルスの時代』と呼んでいる。
団体屈指のスター選手であり、『3代目エース』だった『スカイブルーを支配した最強の龍』吉田龍子は、引退前日に盟友ハイブリット南の持つ ミドル・ウインド王座に挑戦するも奪取出来ずに終わった。
これはハイブリットの強い希望によるものだった。
「一度でいいから、龍子先輩の挑戦を受けてみたかったのよ。でも、完璧な試合とは程遠かったわね。」
引退を決意しても吉田は最後まで主力相手に戦い続け、引退試合も福岡ドームのメインイベントに出場している。
その引退試合の相手には吉田自ら相羽を指名、最後の激闘の末引退していった。
「ありがとう。」
ただ一言だけのぶっきらぼうな挨拶に吉田らしさを感じたのは私だけではないだろう。
引退するまでMVPを受賞することはなかったが、団体への貢献度・リングでのファイト、どれをとってもMVPだったと思う。
吉田とエースの座を争い続けたハイブリットは、吉田の引退後気持ちが切れたか精彩を欠く。
8月には7年後輩のビューティ市ヶ谷にミドル・ウインド王座を奪われ、その直後に引退を発表した。
「もう完璧な私ではないから。」
引退試合の相手は、ウインド・ドラゴン。
これはウインド・ドラゴンの入団時から決まっていたことだった。
それには理由がある。
この試合の途中で、ウインド・ドラゴンはそのマスクを脱ぎ、正体をさらした。
ウインド・ドラゴンの正体は、『南智世』。南利美・ハイブリット南(南寿美)の妹にあたる。
一期生がデビュー前から練習を見ていた縁もあり、一期生の技を多く使っていたのだった。
「妹に負けて引退か。さびしいものね。」
「利美姉さんもそうだったでしょ。歴史は繰り返すものよ。」
「そうね。引退試合の相手は遙さんだったけど、私も姉さんには勝っていたわね。」
「そういうことね。あとは私に任せて。」
「・・・南姉妹の名前を汚したら承知しないわよ。」
「大丈夫、完璧な試合をお見せするわ。」
南利美からハイブリット南へ、ハイブリット南から南智世へ。
『ネオ・サザンクロスロック』とともに、魂は伝承されていくのか。
どうしてもエースになりきれないのも姉譲りなのが残念だったけど。
4月に新女王となったマイティは短期間で先輩達の挑戦を退け、4度の防衛に成功。
グングンと力をつけていたマイティだが、前年のMVP相羽が待ったをかけた。
相羽は、ようやくというか、ついにというか・・・ベルトを奪取し、『第5代MAX WIND女王』となる。
「や、やった!」
他の所属選手たちに比べ、資質では見劣りしていたが地道な努力でカバーしたな。
今までの女王に比べると危なっかしいところだらけだけど、そういう所も含めてファンが多いのだよね。
「先輩、そのベルトちょっとだけ預けます。すぐに取り返しますから。」
とマイティはリベンジを宣言するが、相羽はしばらくの間ベルトを保持、先輩の意地をみせた。
「ボクだって、このベルトには愛着がありますから。」
相羽はもう立派なスター選手だ。
彼女の歩いてきた道は、決して平坦でもなかったし、一本道でもなかった。
だけど、その道は、『栄光へと続くスターロード』だったのは間違いない。
『栄光のスターロード』を歩んだ、NEW WINDが誇るスター選手の一人なのだから。
ファンや関係者の評価でも伊達を超え、トップ選手にふさわしい評価を得るまでにいたった。
エースにはなれなかったけれど、彼女なくしてはこの団体は成り立たなかっただろう。
『レッスルエンジェルスの時代』の後期を支えてくれた大事な選手だったよ。
『エンジェル』といえば藤島を忘れちゃいけない。
あの可愛らしさはまさに、『西陣を纏いし天使』だったね。
可愛いだけじゃなくて、ちゃんと実力も身につけてきていた。
藤島は、特訓と海外遠征での経験を積み、この年の終わりごろにようやくジュニアを卒業し、ヘビー戦線へと参戦する。
「強いアイドルだって『アリ』かなって。昔はそうは思わなかったけど。」
そう思うよ、藤島。西陣のコスチュームが誇らしげにみえるぞ。
同じ頃、目立った活躍の無かったジャンヌ永原もビューティを破り、ミドル・ウインドを戴冠する。
「私にだって、先輩の意地がありますから。」
「私の目標は女王の座のみですわ。この程度のベルトなら差し上げます。」
と市ヶ谷は言うが、負け惜しみではある。
でも市ヶ谷はお得な性格だよ、あいつが言うとそう聞こえるのだから。
もっとも、市ヶ谷が女王に挑戦するまでにはまだまだ時間が必要だったけど。
上原とミミ吉原は同期マイティの陰に隠れながらも実力をつけており、ミドル・ウインド戦線はこの後盛り上がっていくことになる。
八島は一人地道に実力をつけていくが成長は遅く、なかなかヘビーまではあがれなかった。
そして、それから年月が過ぎ、もう誰も団体には残っていない。
あのころの所属選手は全員引退し、それぞれの道を歩んでいる。
そして、支えてくれたスタッフも今はみんないない。
卓越したレフェリングで試合を盛り上げてくれた、トニー館レフェリーは、相羽の女王奪取を見届けてから、寿退団。
現場監督&総合コーチ&レフェリーとして団体を支えてくれた、ダンディ須永さんは、息子の元プロレスラー須永英一郎に全てを委ね、思い出の地メキシコへと移住。もう70を超えているが、たまにメキシコのリングに『レジェンド』として上がっているという。
さすが・・・だ。
仲間リングアナは10年ほど前に退職し、今は福岡でラーメン屋を開いている。
今でもラーメン好きな吉田と前田(後に2代目サンダー龍子を襲名)が食べにくることがあると聞く。
私も食べにいった事は何度かあるが、オーダーすると、「何番テーブル、大盛り卵つき、みそ~ラーメン!」とリングアナ調に言ってくれる。
味よりもそのパフォーマンスが人気らしい。・・・リングアナやってくれればいいのに。
秘書の井上さんは、どこかの財閥の御曹司をガッチリとロックし、今は社長婦人に。これも「さすが。」というべきか。
もう一人のレフェリー、ギムレット美月はコンピューター関係の会社を設立している。
トレーニング方法などのアドバイスをもらっているので、NEW WINDとのつながりは深い。相羽となぎさとは今でも会っているそうだ。
『ハッピープロジェクト』は役目を終え、現在はNEW WIND公式ファンクラブとして活動している。また、OGの集まる場所でもあり顔を出せば誰かしらいることが多い。
さらに芸能プロダクションとしての機能まで備えている。
これは所属タレントに転向した藤島瞳の功績が大きいところだ。
なお、ミミ吉原と白石なぎさも引退後は同所属タレントに転向している。
(それぞれ今は芸能界から引退している。)
そしてこの35周年を区切りに、私は社長の座を後進に託し勇退することになった。
私は道場へと足を運び、スカイブルーのリングに手を当て、目を瞑った。
数々の激闘が、感動が・・・蘇る。
「ありがとう、スカイブルーのリング。この35年、幸せだったよ。」
『そうかい。それはよかった。俺も幸せだったぜ。大事に使ってもらってよ。』
とリングが答えてくれたような気がした。
「ちょっと、何感傷に浸っているの?まだ引継ぎは完璧じゃないわよ。」
「みなみ・・・」
「さあ完璧に引き継ぐまでは、ちゃんと仕事してもらうわよ。」
こいつは私の娘で、風間三奈美(かざま・みなみ)。
私のあとの2代目社長を継いでもらうことになっている。
一応現在のNEW WINDの看板レスラーでもある。
レスラーになると言った娘に私は反対したのだが、こいつは頑固だったよ。
「社長兼レスラーか。カッコいいわね。『私プロレスと結婚します。』って昔言った人がいたらしいわね。」
「ああ。何の因果かその人のリングネームは『風間』だったよ。」
親としては普通に結婚してもらいたいのだがね。
「ふーん、だけどその人は日本じゃあ2番目ね。」
おいおい、これじゃあお約束のセリフを言うしかないじゃないか。
「なんだと、じゃあ・・・1番は?」
と私はお約束のセリフを返した。
「ヒュー、チッチッチ・・・」
みなみは舌打ちしながら、右手の人差指を左右に振り、それから右の親指で自分を指し示した。
「・・・・」
「この私。な~んてね。」
さすが私の娘・・・こういうくだらないところは似ているな。
「どこで覚えたのだか。もう何十年も前だぞ。」
微妙にアレンジはされてはいるが・・・
「さあ、誰が言っていたのかしらね。冗談はさておき・・・これからどうするかだけど、正義と悪の話にスポットを当てようと思うの。」
「・・・原点回帰か。」
「ええ。今までNEW WINDは王道路線を歩んできたわ。言葉を変えれば、リング上のぶつかり合いのみで歴史を作ってきたわ。」
確かにその通りである。
タッグチームはあったけど、ユニットはなかったし、世代間闘争はあっても、軍団抗争というアングルはやっていない。
すべて自然の流れに任せていたのだから。当然今まではヒールもほとんどいなかった。
「だけど、今の世の中ではある程度のギミックが必要だと思うのよ。」
「なるほど。」
「で、正義軍だけど、ちょうど埋もれている中堅にいいのがいるわ。5人くらいでユニットを組ませようかなって。」
「正義が5人か。」
「ええ。戦隊物の基本だもの。完璧じゃない?」
私はちょっと考える。
「正義戦隊ジャスティス5・・・か。」
「そう。そんな感じよ。悪役のほうは、もっと多めに6,7人使って・・・」
「ヒール・ユニットか。」
「ええ。どうせなら、スーパーをつけて誇大広告な感じにしましょうか。」
『ジャスティス5』と、『スーパー・ヒール・ユニット』
この対立構造がスイングするとは、この時の私は思っていなかったな。
「ともかくよろしく頼むよ、2代目。」
「もちろん、完璧な団体にしてみせるわ。」
みなみは力強く言い切った。
みなみ・・・あとは頼むぞ。
スカイブルーのリングに新たなる風が吹く。
私の愛したNEW WINDは新しい指導者の下、新たなる歴史を作り、また新たなる風を巻き起こしていくだろう。
私はそれを一人の観客として、見守っていきたいと思っている。
みなみ達には、かつて『レッスルエンジェルス』達が歩んだ、『栄光のスターロード』を、再び歩んで行って欲しい。
プロレスを愛する心があれば、天使たちは再びリングに舞い降りるはずだから。
最後にNEW WINDに関わってくれたすべての人に、感謝を込めてこの言葉を贈ろうと思う。
『ありがとう。』
風間 新
NEW WIND社長 風間新 手記2 栄光のスターロード(完)
今回のお話でNEW WINDの物語(全126話)は完結とさせていただきます。
長い間のご愛読ありがとうございました。
あとがきは次回更新します。
あれから月日が流れ、NEW WINDも旗揚げ35周年を迎えた。
長いようで早かった気がするよ。あの頃の私は若かったな。
認めたくないが、その若さゆえに『1シリーズ4ドーム興行』を開催するという無茶な事をしたものだが、それも懐かしい話だな。
無茶をしすぎた反動か、今のNEW WINDにかつての勢いはなくなってしまった。
現在は2000人会場を埋めるのに四苦八苦、年に1回のビックマッチは4000人会場で打つのが精一杯だ。
その原因はスター選手の不在にある。
あの頃は、毎年のようにスター選手が誕生していたし、勢いがあった。
私は、あのスター選手たちがいた時代を『レッスルエンジェルスの時代』と呼んでいる。
団体屈指のスター選手であり、『3代目エース』だった『スカイブルーを支配した最強の龍』吉田龍子は、引退前日に盟友ハイブリット南の持つ ミドル・ウインド王座に挑戦するも奪取出来ずに終わった。
これはハイブリットの強い希望によるものだった。
「一度でいいから、龍子先輩の挑戦を受けてみたかったのよ。でも、完璧な試合とは程遠かったわね。」
引退を決意しても吉田は最後まで主力相手に戦い続け、引退試合も福岡ドームのメインイベントに出場している。
その引退試合の相手には吉田自ら相羽を指名、最後の激闘の末引退していった。
「ありがとう。」
ただ一言だけのぶっきらぼうな挨拶に吉田らしさを感じたのは私だけではないだろう。
引退するまでMVPを受賞することはなかったが、団体への貢献度・リングでのファイト、どれをとってもMVPだったと思う。
吉田とエースの座を争い続けたハイブリットは、吉田の引退後気持ちが切れたか精彩を欠く。
8月には7年後輩のビューティ市ヶ谷にミドル・ウインド王座を奪われ、その直後に引退を発表した。
「もう完璧な私ではないから。」
引退試合の相手は、ウインド・ドラゴン。
これはウインド・ドラゴンの入団時から決まっていたことだった。
それには理由がある。
この試合の途中で、ウインド・ドラゴンはそのマスクを脱ぎ、正体をさらした。
ウインド・ドラゴンの正体は、『南智世』。南利美・ハイブリット南(南寿美)の妹にあたる。
一期生がデビュー前から練習を見ていた縁もあり、一期生の技を多く使っていたのだった。
「妹に負けて引退か。さびしいものね。」
「利美姉さんもそうだったでしょ。歴史は繰り返すものよ。」
「そうね。引退試合の相手は遙さんだったけど、私も姉さんには勝っていたわね。」
「そういうことね。あとは私に任せて。」
「・・・南姉妹の名前を汚したら承知しないわよ。」
「大丈夫、完璧な試合をお見せするわ。」
南利美からハイブリット南へ、ハイブリット南から南智世へ。
『ネオ・サザンクロスロック』とともに、魂は伝承されていくのか。
どうしてもエースになりきれないのも姉譲りなのが残念だったけど。
4月に新女王となったマイティは短期間で先輩達の挑戦を退け、4度の防衛に成功。
グングンと力をつけていたマイティだが、前年のMVP相羽が待ったをかけた。
相羽は、ようやくというか、ついにというか・・・ベルトを奪取し、『第5代MAX WIND女王』となる。
「や、やった!」
他の所属選手たちに比べ、資質では見劣りしていたが地道な努力でカバーしたな。
今までの女王に比べると危なっかしいところだらけだけど、そういう所も含めてファンが多いのだよね。
「先輩、そのベルトちょっとだけ預けます。すぐに取り返しますから。」
とマイティはリベンジを宣言するが、相羽はしばらくの間ベルトを保持、先輩の意地をみせた。
「ボクだって、このベルトには愛着がありますから。」
相羽はもう立派なスター選手だ。
彼女の歩いてきた道は、決して平坦でもなかったし、一本道でもなかった。
だけど、その道は、『栄光へと続くスターロード』だったのは間違いない。
『栄光のスターロード』を歩んだ、NEW WINDが誇るスター選手の一人なのだから。
ファンや関係者の評価でも伊達を超え、トップ選手にふさわしい評価を得るまでにいたった。
エースにはなれなかったけれど、彼女なくしてはこの団体は成り立たなかっただろう。
『レッスルエンジェルスの時代』の後期を支えてくれた大事な選手だったよ。
『エンジェル』といえば藤島を忘れちゃいけない。
あの可愛らしさはまさに、『西陣を纏いし天使』だったね。
可愛いだけじゃなくて、ちゃんと実力も身につけてきていた。
藤島は、特訓と海外遠征での経験を積み、この年の終わりごろにようやくジュニアを卒業し、ヘビー戦線へと参戦する。
「強いアイドルだって『アリ』かなって。昔はそうは思わなかったけど。」
そう思うよ、藤島。西陣のコスチュームが誇らしげにみえるぞ。
同じ頃、目立った活躍の無かったジャンヌ永原もビューティを破り、ミドル・ウインドを戴冠する。
「私にだって、先輩の意地がありますから。」
「私の目標は女王の座のみですわ。この程度のベルトなら差し上げます。」
と市ヶ谷は言うが、負け惜しみではある。
でも市ヶ谷はお得な性格だよ、あいつが言うとそう聞こえるのだから。
もっとも、市ヶ谷が女王に挑戦するまでにはまだまだ時間が必要だったけど。
上原とミミ吉原は同期マイティの陰に隠れながらも実力をつけており、ミドル・ウインド戦線はこの後盛り上がっていくことになる。
八島は一人地道に実力をつけていくが成長は遅く、なかなかヘビーまではあがれなかった。
そして、それから年月が過ぎ、もう誰も団体には残っていない。
あのころの所属選手は全員引退し、それぞれの道を歩んでいる。
そして、支えてくれたスタッフも今はみんないない。
卓越したレフェリングで試合を盛り上げてくれた、トニー館レフェリーは、相羽の女王奪取を見届けてから、寿退団。
現場監督&総合コーチ&レフェリーとして団体を支えてくれた、ダンディ須永さんは、息子の元プロレスラー須永英一郎に全てを委ね、思い出の地メキシコへと移住。もう70を超えているが、たまにメキシコのリングに『レジェンド』として上がっているという。
さすが・・・だ。
仲間リングアナは10年ほど前に退職し、今は福岡でラーメン屋を開いている。
今でもラーメン好きな吉田と前田(後に2代目サンダー龍子を襲名)が食べにくることがあると聞く。
私も食べにいった事は何度かあるが、オーダーすると、「何番テーブル、大盛り卵つき、みそ~ラーメン!」とリングアナ調に言ってくれる。
味よりもそのパフォーマンスが人気らしい。・・・リングアナやってくれればいいのに。
秘書の井上さんは、どこかの財閥の御曹司をガッチリとロックし、今は社長婦人に。これも「さすが。」というべきか。
もう一人のレフェリー、ギムレット美月はコンピューター関係の会社を設立している。
トレーニング方法などのアドバイスをもらっているので、NEW WINDとのつながりは深い。相羽となぎさとは今でも会っているそうだ。
『ハッピープロジェクト』は役目を終え、現在はNEW WIND公式ファンクラブとして活動している。また、OGの集まる場所でもあり顔を出せば誰かしらいることが多い。
さらに芸能プロダクションとしての機能まで備えている。
これは所属タレントに転向した藤島瞳の功績が大きいところだ。
なお、ミミ吉原と白石なぎさも引退後は同所属タレントに転向している。
(それぞれ今は芸能界から引退している。)
そしてこの35周年を区切りに、私は社長の座を後進に託し勇退することになった。
私は道場へと足を運び、スカイブルーのリングに手を当て、目を瞑った。
数々の激闘が、感動が・・・蘇る。
「ありがとう、スカイブルーのリング。この35年、幸せだったよ。」
『そうかい。それはよかった。俺も幸せだったぜ。大事に使ってもらってよ。』
とリングが答えてくれたような気がした。
「ちょっと、何感傷に浸っているの?まだ引継ぎは完璧じゃないわよ。」
「みなみ・・・」
「さあ完璧に引き継ぐまでは、ちゃんと仕事してもらうわよ。」
こいつは私の娘で、風間三奈美(かざま・みなみ)。
私のあとの2代目社長を継いでもらうことになっている。
一応現在のNEW WINDの看板レスラーでもある。
レスラーになると言った娘に私は反対したのだが、こいつは頑固だったよ。
「社長兼レスラーか。カッコいいわね。『私プロレスと結婚します。』って昔言った人がいたらしいわね。」
「ああ。何の因果かその人のリングネームは『風間』だったよ。」
親としては普通に結婚してもらいたいのだがね。
「ふーん、だけどその人は日本じゃあ2番目ね。」
おいおい、これじゃあお約束のセリフを言うしかないじゃないか。
「なんだと、じゃあ・・・1番は?」
と私はお約束のセリフを返した。
「ヒュー、チッチッチ・・・」
みなみは舌打ちしながら、右手の人差指を左右に振り、それから右の親指で自分を指し示した。
「・・・・」
「この私。な~んてね。」
さすが私の娘・・・こういうくだらないところは似ているな。
「どこで覚えたのだか。もう何十年も前だぞ。」
微妙にアレンジはされてはいるが・・・
「さあ、誰が言っていたのかしらね。冗談はさておき・・・これからどうするかだけど、正義と悪の話にスポットを当てようと思うの。」
「・・・原点回帰か。」
「ええ。今までNEW WINDは王道路線を歩んできたわ。言葉を変えれば、リング上のぶつかり合いのみで歴史を作ってきたわ。」
確かにその通りである。
タッグチームはあったけど、ユニットはなかったし、世代間闘争はあっても、軍団抗争というアングルはやっていない。
すべて自然の流れに任せていたのだから。当然今まではヒールもほとんどいなかった。
「だけど、今の世の中ではある程度のギミックが必要だと思うのよ。」
「なるほど。」
「で、正義軍だけど、ちょうど埋もれている中堅にいいのがいるわ。5人くらいでユニットを組ませようかなって。」
「正義が5人か。」
「ええ。戦隊物の基本だもの。完璧じゃない?」
私はちょっと考える。
「正義戦隊ジャスティス5・・・か。」
「そう。そんな感じよ。悪役のほうは、もっと多めに6,7人使って・・・」
「ヒール・ユニットか。」
「ええ。どうせなら、スーパーをつけて誇大広告な感じにしましょうか。」
『ジャスティス5』と、『スーパー・ヒール・ユニット』
この対立構造がスイングするとは、この時の私は思っていなかったな。
「ともかくよろしく頼むよ、2代目。」
「もちろん、完璧な団体にしてみせるわ。」
みなみは力強く言い切った。
みなみ・・・あとは頼むぞ。
スカイブルーのリングに新たなる風が吹く。
私の愛したNEW WINDは新しい指導者の下、新たなる歴史を作り、また新たなる風を巻き起こしていくだろう。
私はそれを一人の観客として、見守っていきたいと思っている。
みなみ達には、かつて『レッスルエンジェルス』達が歩んだ、『栄光のスターロード』を、再び歩んで行って欲しい。
プロレスを愛する心があれば、天使たちは再びリングに舞い降りるはずだから。
最後にNEW WINDに関わってくれたすべての人に、感謝を込めてこの言葉を贈ろうと思う。
『ありがとう。』
風間 新
NEW WIND社長 風間新 手記2 栄光のスターロード(完)
今回のお話でNEW WINDの物語(全126話)は完結とさせていただきます。
長い間のご愛読ありがとうございました。
あとがきは次回更新します。
PR
コメント
おつかれさまでした。
長い長いSSですが、もはや立派な長編小説ですよね。
個性と個性のぶつかり合いの素晴らしい団体でした。
また別のSSも期待しています(^^)
しっかし……35年か……たかがゲーム、されどレッスルではとてつもない歴史の時間ですね……。
長い長いSSですが、もはや立派な長編小説ですよね。
個性と個性のぶつかり合いの素晴らしい団体でした。
また別のSSも期待しています(^^)
しっかし……35年か……たかがゲーム、されどレッスルではとてつもない歴史の時間ですね……。
完結おめでとうございます。
長期連載大変だったと思います。お疲れ様でした。
すごく楽しませてもらいました。
他の方も言っていますが35周年とは驚きました。
次の作品も楽しみにしています。
長期連載大変だったと思います。お疲れ様でした。
すごく楽しませてもらいました。
他の方も言っていますが35周年とは驚きました。
次の作品も楽しみにしています。
posted by こげぱんだat 2007/06/17 22:41 [ コメントを修正する ]
これほどの長編をしっかりと完結させるとは・・・
本当にお疲れ様でした
読者以上に実際にプレイに携わってきたNさんが一番切ない思いを抱えてらっしゃると思いますが、無限の組み合わせで楽しめるのがサバイバーですし、また新しい団体で楽しくプレイなさることを祈ってます
本当にお疲れ様でした
読者以上に実際にプレイに携わってきたNさんが一番切ない思いを抱えてらっしゃると思いますが、無限の組み合わせで楽しめるのがサバイバーですし、また新しい団体で楽しくプレイなさることを祈ってます
posted by PONat 2007/06/17 23:21 [ コメントを修正する ]
長編連載たいへんお疲れ様でした。
WASの面白さ、恐ろしさが存分に詰まった
お話だったと思います。
35年もやられるとは・・・・凄いです。
(いま16年目をやっていますがさすがに食傷気味です)
次回作に期待しております。
WASの面白さ、恐ろしさが存分に詰まった
お話だったと思います。
35年もやられるとは・・・・凄いです。
(いま16年目をやっていますがさすがに食傷気味です)
次回作に期待しております。
おつかれさまでした。
そしてご苦労様でした~
ここでジャスティス5でしたかw
後、娘さんの口調から奥さんも・・・w
>かつて『レッスルエンジェルス』達が歩んだ、『栄光のスターロード』を、再び歩んで行って欲しい。
まさしくレッスルにふさわしい物語だったと思います♪
そしてご苦労様でした~
ここでジャスティス5でしたかw
後、娘さんの口調から奥さんも・・・w
>かつて『レッスルエンジェルス』達が歩んだ、『栄光のスターロード』を、再び歩んで行って欲しい。
まさしくレッスルにふさわしい物語だったと思います♪
NEW WINDの物語の完結、おめでとうございます!
長きに渡りファンとスカイブルーのリングと一緒に、激しくも爽やかなレッスルエンジェルスの物語を楽しませて頂きました。素晴らしい物語をありがとうございました。
完璧なハッピーエンドでしたが、ジャスティス5やS・H・Uの活躍する外伝が合ったりなかったりしませんか(笑)
今後新たに始まる物語も楽しみにしております!
長きに渡りファンとスカイブルーのリングと一緒に、激しくも爽やかなレッスルエンジェルスの物語を楽しませて頂きました。素晴らしい物語をありがとうございました。
完璧なハッピーエンドでしたが、ジャスティス5やS・H・Uの活躍する外伝が合ったりなかったりしませんか(笑)
今後新たに始まる物語も楽しみにしております!
お疲れ様でした&完結おめでとうございます。
これほどの長いお話を最後までしっかり書き上げられたことは、ただ、ただ、尊敬せずにおれません。次回作にも期待しております。
ところで、風間社長のお嬢さんのお名前は、やはり奥様の旧姓から……ですか?(笑)
これほどの長いお話を最後までしっかり書き上げられたことは、ただ、ただ、尊敬せずにおれません。次回作にも期待しております。
ところで、風間社長のお嬢さんのお名前は、やはり奥様の旧姓から……ですか?(笑)
ついに完結!寂しい気もしますが素晴しい幕引きでしたね。最後は栄枯盛衰そして流転回帰、前話よりあえて年代を離したラストは技有りな表現ですね。それに、もう物語として語られる事は無いでしょうが風間みなみの細腕繁盛記が目に浮かぶような引きも素晴しいです!
話変わってウィンドドラゴンは正解できて良かったです(^^)V しかし最後読んでいるとき「井上サンはそのままの若さで現役秘書に違いない!」と無駄読みして外してしまいました・・・最後の最後の読みは自爆的敗北でした。後『その人のリングネームは風間』というくだりで、たまたま今思った上に、非常に、かなり、今更、しかもこの場面で語るのは変なのですが『風(WIND)間(スペースキー)新(NEW)』逆から並べてNEW WINDなのかなぁ・・・なんて(汗)改めて最後のネタ読みデス(^^;
戯言はともかく素晴しい作品ありがとうございました!次回作も楽しみにしています!!
・・・コレを機に加筆修正されている一話から読み直してみますね。
話変わってウィンドドラゴンは正解できて良かったです(^^)V しかし最後読んでいるとき「井上サンはそのままの若さで現役秘書に違いない!」と無駄読みして外してしまいました・・・最後の最後の読みは自爆的敗北でした。後『その人のリングネームは風間』というくだりで、たまたま今思った上に、非常に、かなり、今更、しかもこの場面で語るのは変なのですが『風(WIND)間(スペースキー)新(NEW)』逆から並べてNEW WINDなのかなぁ・・・なんて(汗)改めて最後のネタ読みデス(^^;
戯言はともかく素晴しい作品ありがとうございました!次回作も楽しみにしています!!
・・・コレを機に加筆修正されている一話から読み直してみますね。
posted by 赤猫at 2007/06/18 21:18 [ コメントを修正する ]
>アワモさん
最後は一ひねりしてみました。
伏線を張っていたのを全て消化したつもりです。
>seizannさん
気づけば長くなりました。純粋な力勝負だっただけに、結構力入りましたね。
>こげぱんださん
ありがとうございます。
あとがきで書いていますが、35年プレイではないですよ。
>PONさん
そうですね。これだけやってると思いいれはありすぎるくらいありますから。
>konnnoさん
ありがとうございます。長期プレイにがいろいろクリアしないといけない点がありますので。
私は14年でとまっていますよ。
>オーサカさん
ありがとうございます。
まあ正義5は余興ですが。こういうのもアリでしょう。
純粋な力勝負楽しんでいただけたのなら幸いです。
>HIGEさん
ありがとうございます。
その外伝はありません(笑) 人数のわくを無視していますからね~。
>水瀬さん
ありがとうございます。みなみについてはご想像にお任せします(笑)
書いていて楽しい話でしたよ。
>赤猫さん
NEW WINDが先で風間が後です。 というか間=スペースは私が気づきませんでした(爆)
そうだったのか!驚愕の事実ですよ(笑)
あえて年代を引き離したからこそ、まとめることができたのですね。
なお、改訂版はまだUPしていませんので、しばらくお待ちください。
今6年目の「神」の話を見直しているところです。 まだ3分の1にも到達しません。
自分で書いたのに「長いな」と思っています(苦笑)
最後は一ひねりしてみました。
伏線を張っていたのを全て消化したつもりです。
>seizannさん
気づけば長くなりました。純粋な力勝負だっただけに、結構力入りましたね。
>こげぱんださん
ありがとうございます。
あとがきで書いていますが、35年プレイではないですよ。
>PONさん
そうですね。これだけやってると思いいれはありすぎるくらいありますから。
>konnnoさん
ありがとうございます。長期プレイにがいろいろクリアしないといけない点がありますので。
私は14年でとまっていますよ。
>オーサカさん
ありがとうございます。
まあ正義5は余興ですが。こういうのもアリでしょう。
純粋な力勝負楽しんでいただけたのなら幸いです。
>HIGEさん
ありがとうございます。
その外伝はありません(笑) 人数のわくを無視していますからね~。
>水瀬さん
ありがとうございます。みなみについてはご想像にお任せします(笑)
書いていて楽しい話でしたよ。
>赤猫さん
NEW WINDが先で風間が後です。 というか間=スペースは私が気づきませんでした(爆)
そうだったのか!驚愕の事実ですよ(笑)
あえて年代を引き離したからこそ、まとめることができたのですね。
なお、改訂版はまだUPしていませんので、しばらくお待ちください。
今6年目の「神」の話を見直しているところです。 まだ3分の1にも到達しません。
自分で書いたのに「長いな」と思っています(苦笑)
posted by Nat 2007/06/18 22:11 [ コメントを修正する ]
遅ればせながら、お疲れ様でした。
最初の頃から読ませて戴いて、ついに自分でも書くようになってしまった?のは、ひとえにNさんの面白い文章に惹かれたからです。これからも面白い文章を楽しみにしております。
自分も、これからもレッスルで楽しもうと思います。
最初の頃から読ませて戴いて、ついに自分でも書くようになってしまった?のは、ひとえにNさんの面白い文章に惹かれたからです。これからも面白い文章を楽しみにしております。
自分も、これからもレッスルで楽しもうと思います。
posted by yatterzoooat 2007/06/19 21:47 [ コメントを修正する ]
そして、NEW WIND完結おめでとうございます。
大団円で締めましたね。
様々な要素が融合して、一つの流れとなったあたり流石としか言い様がありません。
最後が35周年まで行くとは思いませんでしたがw