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NEW WINDの物語 第40話「女王と女王」

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその50「ライバル意識~クイーンズカーニバル3」及びその51「クイーンズカーニバル終演」に該当するお話です。)


◇『EWA認定世界タッグ選手権試合』

「伊達!カンナ!!あの強かった『サイレントヴォイス』はどうした?それとも先輩達の実力はこの程度なの?」
EWAタッグ選手権試合は、「21分33秒、ダブルスピンムーンサルト」で武藤がカンナをフォールし3度目の防衛に成功している。
  武藤はこの試合内容に納得がいかないらしく、マイクで先輩二人を罵倒する。
「心が離れたのかなんだか知らないけど・・・私はこんな弱い『サイレントヴォイス』なんて認めない!」 
 いや罵倒とはいえないか・・・多分武藤は悔しいのだろう。
うっすらと涙まで浮かべている武藤を見ていると、こっちまでが悲しくなってくるよ。
 結城と武藤は『打倒サイレントヴォイス』を合言葉に頑張ってきた。
昨年ついにその『打倒サイレントヴォイス』は果たしたが、現在でもライバル意識というか、特別な思い入れがあるのだろう。
『サイレントヴォイス』の二人は無言のままリングを去っていく。
マイクを掴んだまま、寂しげにその後姿を眺める武藤。
パートナーの結城は黙ったままだったが、表情をみれば同じ気持ちなのは一目瞭然だった。

 ◇『WWCA認定世界ヘビー級選手権試合』◇

「青コーナーより、『X』選手の入場です!」
 流れたテーマは伊達遙のテーマ。
「だ~て!だ~て!」 
 客席からは大きな伊達コールが巻き起こった。
『カンナVS伊達』…この組み合わせにしたのは、二人からの要望があったからだが、それはなかったとしてもベルトの価値を高める事が出来るカードはやはりこのカードだと思うしWWCA側もこのカードを歓迎してくれた。現在のNEW WINDにおける最高のカードといえる組み合わせだ。私も期待してこのカードを組んでいる。
そして…試合は、期待に十分応えてくれる…いやそれ以上の内容だった。

 カンナは伊達の重い打撃を避けずに受けきり、逆に伊達の得意な打撃技で伊達を圧倒し追い込んでみせる。追い込まれた伊達はあえてカンナの領域である関節技を仕掛け、カンナから悲鳴をあげさせる。お互いの得意分野にあえて踏み込むことで、お互いの力を引き出し合う。うーん、魅せてくれるよ。
 終盤はカンナのクロスフェイス&ドラゴンパンサーで伊達がギブアップ寸前まで追い込まれるも何とかロープへと逃げ、カンナが追い討ちを狙ったところへ、逆にハイキックから『フェニックス・スプラッシュ』
 これをクリアしたカンナはドラゴンスープレックス一閃。
「うわああっ!」と伊達ファンの悲鳴があがるが伊達はこれを2.9でクリア。
これには興奮した観客が『ズドドドドド!』と重低音ストンピングで会場を揺らした。
「だ~て!だ~て!」
この伊達コールに後押しされるように、伊達は素早く起き上がると助走をつける。必殺の『シャイニング狙い』とわかって客席が沸く。だが、カンナもここでゆっくりと立ち上がるほど間抜けではない。カンナは例のカウンターのフランケンを狙った。
 しかし、今度は伊達が一枚上だった。カンナの動きを見てカウンター狙いと判断した伊達は一瞬タイミングをずらす。フランケンを狙うつもりだったカンナはタイミングをずらされ、飛べない。そこへ伊達の『フェニックスニー!』カンナのボディを完璧に捕らえたこの一撃で、カンナはゆっくりと前のめりにリングへと倒れこむ。そして…そのカンナを伊達がカバーへ行く。『伊達の勝利』を誰もが確信した。しかし、予想だにしないことが起こった。伊達がカバーに行った瞬間、ゴングが鳴り響いたのだ。
「只今の試合は60分フルタイムドローとなります。」
 私もそうだが、客席も夢中になりすぎて、コールが聞こえなくなっていたらしい。私など仲間リングアナの隣にいるのにわからなかった。
「延長!延長!」客席から延長を求めるコール。
WWCAの規定に延長はない。『時間切れの場合は防衛成功』というルールは明記されているので、引き分けでカンナの防衛成功となる。
 だが…伊達とカンナには…そんなルールなど関係なかった。
「ここから先は…タイトル戦関係なく…っていい。」
「タイトルは防衛かもしれない。でも私はまだやりたい。延長させてください。」と二人に懇願された私に会場中の視線が突き刺さる。
「…えータイトルマッチの規定で防衛は成功となります。これから先はノンタイトル特別試合10分1本勝負という事で。」
 この決定に盛り上がる場内。10分と短めに区切ったのは、体調を考慮してのこと。
体力の上回る男子の試合でさえ、60分直前で脱水症状から意識を失ったケースがあるくらいだ。60分フルタイムを戦い切った後だけに、この10分という時間も危険な領域だ。何もないことを祈るしかない。
結局この延長試合は4分30秒 両者ノックアウトで終了となった。二人とも体力的にはもう限界であり、精神力だけで戦った両者。最後は張り手の応酬の末、ダブルノックアウト。
二人は、コメントを出せる状態ではなかったが、ガールズ・ゴングのO坂記者だけがコメントを拾ったらしい。気になるそのコメントとは…
「これを…超えられる?」
「…シングルプレイヤーとして魅せてみろ!」

 この後の最終戦では、結城のEWAヘビーに武藤が挑戦する事になっている。
先日の武藤の問いかけに対する二人の答えは、『私たちはシングルプレイヤーとして勝負する。だからタッグには今はこだわりがない。νジェネはタッグとしては素晴らしいが、シングルではどうだろうね?』という意味だろう。
果たして結城と武藤はこの試合を超えることが出来るのだろうか。それにしても、あの二人の事はライバルとして相当意識しているのだなあ…

 この二人の激闘から『νジェネ』の二人が何を感じたのか……それは本人たちにしかわからない。
 『クイーンズカーニバル~女王競演』最終戦のメインイベントは、『EWA認定世界ヘビー級選手権試合』だ。このEWA王座は自団体のベルトを持たない我が団体にとって、中核を担う役割を果たしてきた歴史あるベルト。団体の格ではWWCAの方が上だけど、選手たちの目標はこのEWAベルト。現在の女王は3期生の結城千種、それに同期の武藤めぐみが挑む。
「3期生でこのベルトを争うまでになったか…」
 感慨深げに私は呟く。
「うーん、あの子達の資質ならもっと早くてもおかしくはなかったのだけどね。」
 ダンディさんは当然だという表情だった。

「お待たせしました。本日のメインイベント、EWA認定世界ヘビー級選手権試合、60分一本勝負を行います。」
 仲間リングアナの声が場内に響く。
「青コーナー、静岡県出身141パウンド~武藤めぐ~み~!!」
 武藤は右手を高々と突き上げ、結城を睨みつける。武藤のコスチュームにあわせ、赤い紙テープが大量に投げ込まれる。
「赤コーナー、『EWAヘビー級女王』、愛知県出身139パウン、ド結城ちぐ~さ~!」
 結城は両手を突き上げ、武藤を睨み返す。場内からは緑の紙テープがこれまた大量に投げ込まれる。
「レフェリー、トニー館。」会場から一斉に「トニー!」コール。
 レフェリーのボディチェックの間にセコンドの永沢、吉田らが紙テープを片付けていく。
 足でリングから掻き出し、集めたテープをコーナーの鉄柱を使って切り、素早く丸めるとリング下へと投げ込み終了。いつもながら鮮やかだ。
 
 さて試合の方はハイスパートで進む。仕掛けが早いし、ダウンからの回復も早い。
先日伊達とカンナが見せた試合とはまったく異なる試合。これはこれで面白みはあるけど、なんだかせわしなく感じるな。
結城の『バックドロップ』、武藤の『ダブルスピンムーンサルト』とお互いの必殺技が飛び出したのは、10分経過コールの後すぐ。これは仕掛けが早かったか、お互いにカウント2.5でクリアして、武藤はここで奥の手『へなーらサンセット』に行く。
最近では奥の手として定着しつつあり、以前ほど笑いがとれない。まあ、別に笑いを取る必要はないのだが、あの武藤が『アニマルクラッチ』に入る姿はコミカルだと思うよ。
だけど、この技結構キツイ角度で入るのだよな。結城はギリギリ2.9でクリア。
「これで負けるわけにはいかない」というところだろうか。 
ここがチャンスとみた武藤はフライングニールキックを狙うが、結城はカウンターのケンカキックで迎撃。これで武藤は動きが止まり、結城はバックドロップの体勢に入る。
これは決まった…と思ったのだが、さすがは武藤。これをボディプレスで切り返してフォール。カウントが入る。1度目…2度目。これは返してくれるだろうと思っているのだが、結城の反応がない。レフェリーのトニー館は3度目の手を振り下ろすのを躊躇った。
彼女の目は…「叩いていいのか?これで決めてしまっていいのか?」と言っていた。
 躊躇いながらもトニー館は首を振り、右手を振り下ろした。 カウント3。
「17分3秒ボディプレスからの体固めで勝者、武藤めぐみ。」
 このクイーンズカーニバルで唯一の女王交代劇はまさかのボディプレスでの決着。どうやら結城は受けに失敗して頭を打ったらしい。その後病院へ運ばれたが、とりあえずは異常なし。いい試合だっただけに最後が惜しかったが、近いうちにリマッチを開催する事にしようと思う。
なおクイーンズカーニバルの最優秀選手(MVP)はカンナ神威。AACタッグ&WWCAヘビーでの内容が評価された形となる。
カンナは「光栄です。」と一言だけコメント。カンナらしいといえばらしいけどね。
 
こうして女王達の競演は終演した。
そしてNEW WINDは来月から6年目に突入する事になる。
「やっとデビューできるのね。」
「甘くないわよ。」 
 姉妹で同じリングに立つ日が近づいてくる。
 




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2008/08/15 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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