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2024/04/19 03:26 |
NEW WINDの物語 第46話「イシュタル・インパクト」

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその60「戦の女神」およびその61「公式リーグ戦」の前半部分に該当するお話です。)



◇6年目12月◇

 先月は怪我人続出のため興行を取りやめ休養にあてた。また、怪我で防衛戦ができなかったため、伊達&永沢の保持するWWCAタッグ王座は返上となってしまった。

 今月は12月。言ってみればNEW WINDではイベント月にあたる。一昨年は『EX―Sタッグリーグ』、昨年は『永沢舞ヴィクトリーロード』を開催した
 そして…今年は昨年はいうにおよばず、一昨年に開催したあの『EX―S』よりも数段上のイベントを開催する。
 正直これで年末の女子プロレス界の話題は独占だろうな。

 NEW WIND・最強決定リーグ『イシュタル・インパクト』 
☆エントリー選手☆ 
 伊達遥、南利美、カンナ神威、草薙みこと、結城千種、武藤めぐみ、ダークスター・カオス、永沢舞
 
 このメンバーこそが、うちのトップメンバーだろう。永沢と氷室をどちらにするかは議論を重ねたが、「実力が同等ならば若手にチャンスを!」という意見が多く永沢の選出となった。
 通常女子団体では『アテナ』や『ヴィーナス』などを大会名に入れる事が多いが、ウチはちょっとひねって『イシュタル』とする事にした。これも立派な女神の名前なんだ。
 イシュタルは『美と愛の女神』であり『豊穣の女神』であり、『戦の女神』でもある。まあ、神話的には色々問題はあるかもしれないけど、美しさと強さの象徴としてはいいと思う。
 
「ちょっと恥ずかしいわね…ところで社長、私達って魅力的かしら?」
「え?ああ、もちろんさ。」
 南の質問に私はどぎまぎしながら答える。普段はそうは思わなくても、やっぱりリングの上では別人だよ。純粋にプロレスのことを愛している彼女達の姿は女神とも、天使とも見える。『格闘美神』なんて呼ぶ輩もいるらしいけどそれも分からなくない。
「あら、なんか照れるわね。」
「…リング上だけな。あくまで。」
 私はそう冷たくいう。
「ひど~い!」
「最低ね。」
「けっ、アホらし。」
「マッキー先輩は最初から関係ないと思いますが。」
「なんだとこらあ!」
「ほら、それですよ。」
「お前こそその口の悪さで…」
 ああ…いつもの大騒ぎに。ここが道場じゃなければこんな騒ぎにはならないのになあ。 


 ◇イシュタル・インパクト公式戦◇

 南VS永沢の一戦がイシュタル・インパクトのオープニングマッチとなった。
 今までの二人の試合であれば南は終始余裕の表情を崩さなかったのだが、今回はいつもと違っていた。終盤、永沢の必殺技テキーラサンライズを受けた時には完全に余裕が消えていた。このテキーラを南はカウント2.5で返したのだが、起き上がりを裏拳で狙われ、再びフォールされてしまった。
「このっ!」
 南はブリッジで返し、意地を見せる。
「決めます!」と永沢がアピールしている隙をつき、南はランニング式の掌底を叩きこみフォールに持っていく。
「…無駄なアピールは駄目…」と伊達がいたら顔をしかめるだろうな。
 永沢はこれをキックアウトし、ブリザードスープレックスで逆襲することに成功。タイミング的にはこれで決まってもおかしくなかったのだが、ここは南が上手かった。投げられた勢いを利用して場外へとエスケープしたのだ。
「いきます!いきま~す!」
 永沢はここで驚愕の技を見せた。おもむろに場外に引いてあるマットを引き剥がすろ、ダウンしたままの南を無理やり引き起こし、テキーラサンライズ・オン・ザ・フロア!!
 これって凄いけど、永沢…自分も痛いのでは?普通はボディスラムやパイルドライバーのような、『自分にダメージが残らない技』を使うのだが、これが若さだな。カウント9でようやく起き上がり、リングへと戻ろうとする永沢。だが、南が後ろからに組み付き・・・なんとここでジャーマン!!
「うわっ、南まで・・・」
 本部席の前で二人ともダウン。大事ないといいけど・・・本当に大丈夫かな・・・
 この間にカウントは進んでいく。カウント16でようやく二人が立ち上がり、のろのろとリングへと向かう。場外カウント18でエプロンへとたどりついた二人はセコンドの助けも借りつつリングへと転がり込む。
 両者リングアウトかと思われたがなんとか生還には成功。しかし、二人とも体力の限界を超えているのは確かだ。
「ええいいいっ!」
 最後の力を振り絞って『たいあたり』を狙う永沢。多分今の状態ではこれが精一杯だろうし、これでも十分フィニッシュになる。
「させないっ!」
 だが南はこの突進を利用し、フェイスクラッシャーで永沢の顔面をマットに叩きつけた。そしてそのまま永沢は静かに3カウントを聞いた。
「24分20秒、フェイスクラッシャーからの体固めで勝者、南利美!」

 公式リーグ2試合目は伊達VS武藤。当然好試合になることを期待したのだが、期待を裏切る一方的な試合になってしまった。武藤の攻撃は散発的で、伊達のヒザの猛威を止められるものではなかった。 
「武藤!やる気ないなら辞めちまえ!」「
 抵抗らしい抵抗もできずに敗れた武藤に、容赦なく罵声が飛ぶ。武藤は肩を震わせながら無言で退場していった。一体どうしたのだろうか。この二人の対戦でこんな試合になるとは・・・
「・・・かみ合わなかった。」と伊達も悔しそうに呟いていたよ。

 場内の悪いムードを断ち切ったのは、カンナとカオスの因縁の対決。場外に転落するまではカンナペースだったのだが、場外でカオスが大暴れ。マットの無い場所へのバックドロップとパワーボムを放ち、カンナはほぼ戦闘不能に陥る。
 カウント19ギリギリでリングへは生還したものの、ダークスター・ハンマーを返す力は残っていなかった。
「この程度か。」
 カオスは挑発したが、肩で息をしていた。カオスがあそこまでやったのは、カンナを強敵と認めたからだろうな。   

 この後のメインでは結城がハイスパートレスリングでみことを圧倒。メインにしては盛り上がりに欠ける試合となってしまった。正直、今日の試合内容は私から見て不満が残る。
 NEW WINDのプロレスはこんなもんじゃない!
 アンケートの結果、本日のベストバウトは南VS永沢。他の3試合に比べれば内容がよかったから、当然の結果だろう。私が一票を投じるのならこの試合だっただろうし。でも、まだこんなものじゃないはずだ。もっともっと素晴らしい試合を見せて欲しい。


 ☆公式リーグ戦二日目☆

 今日の公式リーグ戦 オープニングマッチはみことVS永沢。
 投げ技に関してはすでにみことと同等かそれ以上のセンスを見せる永沢は、当然ともいえるが投げ中心の組み立てになる。対するみことはあえて投げを封印したスタイルで試合を組み立て、その状態でも終始試合をリードする。
 永沢の必殺テキーラサンライズをカウント1でクリアしたみこと。
「そんなあ…」愕然とする永沢に対しみことはラッシュをかける。
 草薙流兜落しをカウント2.5で返されると、ジャンピングネックブリーカーを2連発。
 永沢はなんとかロープエスケープで凌ぐが、もはや打つ手なし。最後はみことの必殺技である草薙流竜巻兜落し固めで敗れる。
「13分47秒 草薙流竜巻兜落し固めで、勝者、草薙みこと!」
 勝ったみことは永沢に歩みより、何事か語りかけていた。
 内容を後で確認したところ、次のような内容だったそうだ。 
「まだまだ修行が足りませんね、舞さん。もっとバランスを意識した方がよいですよ。」
「バランスですか?」
「はい。舞さんは投げのセンスなら団体随一の素質をお持ちです。ですが、それ以外が『へな猪口』なので、試合の組み立てが甘いのです。」 
「へ・・・『へな猪口?』」
「はい。打撃技も力技も関節も、全て『へな猪口』です。それを改善しないかぎり、舞さんはずっと『へな猪口レスラー』ですよ。」
 みことは厳しい言葉をかける。
「そんなあ・・・」
「それがお嫌なら精進なさい。舞さんの師である遥さんは、攻撃のバランスに秀でています。だから彼女は強いのです。」
「はい。」
 確かにみことの言うとおり、永沢はバランスが悪い。投げ以外の技の威力・精度ともにまだまだといえるが、決してへな猪口ではないとは思うのだが。だけど、みことから見れば、まだまだなのだろうな。
 永沢のコーチである伊達は攻撃のバランスが非常に取れているから、参考にしてみるといいだろう。まあ、まだまだ課題が山積みってことだな。

 続く公式戦では南が武藤に完敗。武藤のハイスパートレスリングに飲み込まれ、南十字星は光を発することができないまま、試合が終わってしまった。
 先日の伊達VS武藤の試合内容に近い凡戦で、熱い攻防を期待していた観客からは不満の声が漏れていた。勝った武藤も、負けた南も無言だった。
 私もこの試合内容には納得がいかない。いくらハイスパートレスリングとはいえ、魅せるのがプロレスラーだろ?もっと違うハイスパートの魅せ方があると思う。
    
 この後に組まれた伊達とカンナの一戦は、じっくりと攻防を魅せる王道のプロレス。客席の反応もよく、こういう試合を求めているのがわかる。
 序盤は一進一退の攻防で、途中からは伊達ペース。『暴れん坊なヒザ』が炸裂し、カンナの体力を削り取っていく。だが、一瞬の隙を突き、カンナのドラゴンパンサーが決まる。
「あうあ・・・」
「伊達、ギブアップしやがれ!」
 カンナはさらに厳しい角度で絞る。
「くあっ・・・・」
 伊達はこの後もしばらく捕まってしまい、これで体力をかなり消耗してしまったようだ。
 この後、伊達は防戦一方となり、カンナの『クロスフェイス・カンナ』とドラゴンパンサーで徹底的に痛めつけられてしまう。ギブアップこそしなかったものの、もう一度極められた『クロスフェイス・カンナ』で体力と気力が限界に達したらしい。最後は珍しい延髄蹴りで3カウントを喫した。
「伊達さんの欠点は、関節の防御が下手だということです。この試合は負けられませんでした。」
 
 メインではカオスを相手に結城が圧勝してみせた。結城はカオスの攻撃をきっちり受け、相手を光らせた上で倒してみせた。ダークスター・ハンマーをカウント1で返しての、掟破りの逆ラリアートでの勝利に客席は沸いた。自慢の必殺技をカウント1で返された上での、掟破りのラリアートでの負け。カオスとしては屈辱的な敗北だろう。
「いつもハンマーもらっていますから。たまにはやり返さないと駄目かなって。」
 結城は余裕たっぷりのコメント。ハイスパートの中でも相手を光らせるという内容であり、私としてはこの試合を評価している。



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2009/03/19 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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