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2024/05/09 05:39 |
NEW WINDの物語 第48話「感じるもの」

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその62「感じるもの」の後半部分に該当するお話です。)


☆最終日☆
 
 カオスがみことを、伊達が南を下しそれぞれ5勝2敗でリーグ戦を終えた。みことは2勝5敗、南は1勝6敗とそれぞれ精彩を欠いた。武藤は永沢に圧勝。序盤の出遅れが響いたが、それでも何とか4勝3敗と勝ち越してみせた。一方、敗れた永沢は、このリーグ戦全敗で終了となった。先輩達の厚い壁に跳ね返された形だが、ハイレベルの試合を経験した意味は大きい。今後の飛躍に期待する、
 
☆イシュタル・インパクト 公式リーグ戦ファイナルマッチ☆

「たああ!!」
 結城のバックドロップが鮮やかに決まる。
「カバー!」
結城は必死の形相でカンナを押さえこむ。レフェリーのトニー館は、マットに両肩がついているのを確認するとカウントに入る。
バンッ!「1!」場内では観客が手と声を使ってカウントを数える。
バン!バン!「カンナさん!」セコンドのみことが両手でマットを叩いてカンナに必死の声援を送っている。
バンッ!「2!!」
「カンナ!カンナ!!」
 カウントを数える声と悲鳴にも似たカンナコールが入り混じる。
「返せ!カンナ!!」  
 だがこの声にカンナが応えることはできなかった。
バンッ!
「スリー!!」
 トニー館の右手が3度目のマットを叩いた時、場内では両腕を突き上げて立ち上がる観客達と、がっくりと肩を落す観客達と大きく明暗がわかれていた。
「15分29秒、15分29秒!バックドロップからの片エビ固めで、勝者、結城千種! イシュタル・インパクト優勝者は結城千種選手に決定いたしました~!!」
結城は座り込んだまま両腕を突き上げた。
「ゆ・う・き!ゆ・う・き!」
 場内から結城コール。イシュタル・インパクト優勝は結城千種。
「応援ありがとうございました!優勝しましたっ!」
 トロフィを誇らしげに掲げる結城に、拍手とフラッシュの嵐。
「厳しいリーグ戦でしたけど、勝ててよかったです。私たちNEW WINDはこれからもいい試合、凄い試合をお見せしますので、また観に来てください!」
 スカイブルーのリング上で誇らしげにコメントする結城。しっかり宣伝までしてくれて、いい娘だねえ。
「きゃあっ!」
おいおい・・・帰り道で躓くなよ。カッコ悪いじゃないか。まあ、結城らしいといえば、結城らしいけどさ。
 ともかくおめでとう、結城。これだけのメンバー相手の優勝には価値がある。
今後のさらなる飛翔が期待できそうだ。

◇イシュタル・インパクト最終結果◇

優 勝(6勝1敗)=結城 千種
2 位(5勝2敗)=ダークスター・カオス
2 位(5勝2敗)=カンナ神威
2 位(5勝2敗)=伊達 遥
5 位(4勝3敗)=武藤 めぐみ
6 位(2勝5敗)=草薙 みこと
7 位(1勝6敗)=南 利美
8 位(0勝7敗)=永沢 舞            
 
▲参加選手コメント▲

○永沢舞(8位)
「勝てないって事は力不足だと感じました。今回の経験を糧にファイト!ファイトです。」
○南利美(7位)
「悔しいけどこれが現実です。」
○草薙みこと(6位)
「修行の成果をお見せする予定でしたけど、完全に私の修行不足でしたね。」
○武藤めぐみ(5位)
「勝ち越しは出来たけど。あの子に出来るんだから私にも出来るはず。次はもっといい結果を出します。このままじゃ納得いきません。」
○伊達遥(2位)
「もっと…頑張らないと…って。選手としてもコーチとしても…」
 自分が優勝を逃した事も悔しいけど、担当コーチとしては永沢が全敗というのは相当悔しいのだろう。なおカンナとカオスは優勝を逃したことが悔しいらしく、コメントは出さなかった。

◇社長総評◇

 レベルの高い試合を見せてくれたと思うが、私の求める基準に満たない試合も多く、まだまだ上を目指せると感じた。これが終わりではないし、選手達にはさらに上を目指して欲しいと思っている。
 白星配給係になってしまった3人には頑張ってもらいたいし、あの3人に代わって出場する選手が出てくるようだと団体としても面白いよね。
 
◇大会終了後◇

「社長、私はちょっと自分が情けないわ。」
「南…」
「前に、『一流でいられる時間は少ない』って言ったことがあったわよね?」
「ああ、今年1年・・・せいぜいもって来年春までだと思うって奴だね。」
「・・・私はもう1流ではないのかもしれないわ。」
「!?」
「社長もそう思わない?リーグ戦でたった1勝・・・それも3年後輩の舞に勝っただけなんて、とてもじゃないけど1流とは言えないわ。」
 私は言葉に詰まった。
「肯定と受け取ってよいかしら?」
「そんな事はない。」
「そう。私は今年の春、妹がデビューしたあたりから感じていたことがあったの。」
私は黙って続きを促す。
「それは…成長しない自分に。技のキレとかは落ちてないし、体力的にも落ちてはいないわ。だけど、いくら練習しても…維持する事しかできないてない…」
「南…」
「私は現状維持で精一杯、でも他の子たちはずっと成長しているわ。その差が…」
「今回の結果か。」
「ええ。今はまだ維持しているという自覚があるけどいつまでそれが出来るか。最近少しずつだけど、自分のイメージとズレが出始めている気がするわ。」
「大丈夫だよ。南は決して落ちていない…ただ追い抜かれただけだ。」
 私の言葉に南は笑い出す。
「あっははは。それで人を励ましているつもり?落ち込んでいる人に止めを刺すようなことを簡単にいってくれるわね。」
「ふん。慰めを言っても聞くとは思えないしね。」
「ありがとう。そっか、『追い抜かれた』のね。」
「南は1流のレスラーだ。NEW WINDの南利美といえば、日本屈指のテクニシャンであり、関節技使いだろう。これは関係者、マスコミ、ファン、みんが知っている事だよ。」
 これは事実だ。一切の脚色はしていない。
「私まだ…大丈夫よね?」
「当たり前ですよ、南さん。元気を出してください。まだまだやれますから。」
「…そのセリフは何?」南は呆れ顔である。
「うん?昔読んだプロレス団体経営マニュアルって本に書いてあったセリフだ。『スーパレッスルなんとか』って本だったかな。元気になる魔法の言葉だって書いてあった。」
私は真面目に答える。
「ぷっ…クスクス。社長も馬鹿ね。そんな怪しい本を真に受けたのね?」
「うるさいなあ。」
「…でも間違ってないかもね。笑ったら元気になったわ。」
「おおそうか。やっぱり利くだろう?」
「でもね、社長…1流を維持できるのはもう少しだけよ。」
そういって寂しげな微笑みを浮かべ、南は控え室へと戻っていった。
「南…」
 南の表情から判断してそれは事実なのだろうな。一流でなくなった南は、たぶん引退を選ぶだろうのだろうな。

「社長、ちょっといいですか?」
珍しく武藤が私に声をかけてきた。
「あ、ああ。」
「南さんのことですけど…」
 ズケズケ物を言う武藤にしては口が重いな。
「試合をして、何か感じたか?」
「はい。言いにくいのですけど、イメージと動きに差が出ているかなって・・・」
「…やっぱりな。」
「はい。社長も気づかれましたか。」
「うん、なんとなく。」
「そうですか。うーん、ちょっとした違いなのですけど、打撃が来るのが遅かったり、ガードが遅かったり…たぶんコンマ何秒かのずれだと思うんですけど。」
「そうか。ありがとう、武藤。」
「いえ…私、南さんの事、レスラーとして大好きなんです。だからその…黙っていられなくて。」
 武藤はちょっとはにかみながら言う。こいつ時々可愛い顔するよな、普段は小生意気だけど。
「武藤、南からたくさん学んでおけよ。いまや実力では武藤が上かもしれないけど、南の引き出しの豊富さや戦略性などは、武藤よりずっと上だからな。」
「はい。分かっています。」
こうして最強決定リーグ戦イシュタル・インパクトは幕を閉じ、今年の興行は全て終了。ま、今年は年内にもう一仕事してもらう予定だけどね。


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2009/03/21 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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