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2024/04/20 07:05 |
NEW WINDの物語 第50話「レイニーブルー」  

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその64「レイニーブルー」に該当するお話です。)


◇6年目1月◇

 書き忘れていたが、昨年の女子プロレス大賞は結城千種であった。
私は「エースは伊達遥」と言い続けていたが、この結果を受けては、さすがに現在のエースは結城であることを認めざるを得ないか。
 彼女の強さの秘密は『根性』と『穴のなさ』そして『投げの破壊力』にあると思う。現在のトップクラスの選手は、試合を諦めることをしないが、結城はその中でも抜群の粘り強さを持っている。勝負どころでフォールを跳ね返すことが非常に多く、いわゆるカウント2.9で返す回数が多いのだ。決まったと思っても返すという結城の粘り。あれこそが彼女の強さの秘密だろう。
 結城はMVP以外にも、カンナとのシングルでベストバウト受賞、武藤とのタッグで戦った、伊達&カンナ戦でタッグのベストバウトも受賞している。
 新人賞はハイブリット南。目立った活躍はなかったが、姉譲りのプロレスセンスを随所で見せてくれている。
 
 さてこの1月は色々あった。
 まずラッキーが練習中のケガでシリーズ欠場。タイミングのいい事に映画出演の話が来たので出演させる。人気連続学園ドラマの映画版で主人公の後輩の見習い教師役だそうだと
 そしてEWAタッグの返上が決定。ここまでNEW WINDを盛り上げてくれたベルトの一つだが、一つの団体にタッグ王座が複数あると混乱するので、返上することにした。AACタッグを残したのはNEW WINDで一番権威の高いとされているタッグベルトだからだ。
 そのAACタッグの防衛戦は、伊達&永沢の師弟タッグがホワイトスノーに挑んだが、Wドロップキック4連発からの合体パイルドライバーで伊達が撃沈。ホワイトスノーが4度目の防衛に成功している。
 なんで4連発も成功したかといえば、レフェリーに永沢の『たいあたり』が誤爆したのが原因。これでレフェリー不在となり、永沢を場外へ落した後、伊達に波状攻撃。合体パイルが決まってカンナがカバーした時、レフェリーが復帰して3カウント。ちょっと釈然としない終わり方ではあったが、これもまたプロレス。


 ◇シリーズ最終戦◇

 本日のメインイベントは伊達VS南のWWCAヘビー選手権試合。
 先のイシュタル・インパクトでは7位に終わった南、志願してのベルト挑戦だったのだが・・・
「28分53秒、28分53秒 バックドロップからの体固めで勝者、伊達遥!」
 王者伊達が初防衛に成功。南は伊達の余裕を崩す事が出来ず、試合内容としては完敗。 最後もシャイニングではなく、珍しいバックドロップ。
南はかなり憮然として引き上げていった。

 
 私は南を探していた。控え室から忽然といなくなってしまったのだ。
 私は会場近くの公園でコスチューム姿のまま電話ボックスにもたれてうつむいている南を発見し、近づいていった。
「南・・・探したよ。」
 雨が降っているのに南は傘すらさしていない。
「社長・・・」
「風邪ひくぞ。体が資本だろうに。」
 私は上着を南の肩にかける。 
「ありがとう。」
「何もコスチュームのままこの氷雨の中飛び出さなくたって・・・」
「私・・・自分が許せなくて・・・」
「南・・・」
 今回のタイトルマッチに対する南の決意を聞いていただけにかける言葉が見つからない。
「完璧な負けだった。」
「・・・」
 私は黙って南を見つめる。といえば格好はつくが、実際には言葉が出ないだけ。
「遥との差は、わかっていたはずなのに、追い続ける私がいて・・・届かない、終わったってわかっているのに・・・なんで私は追ってしまうのかな。」
 南はちょっぴり瞳を潤ませる。
「それはライバルだからじゃないのか?そして南利美というレスラーは伊達遥というレスラーが好き。だからこそ・・・終わった、届かないと思っても追いかけてしまうのだろう。」
「まるで失恋したみたいな言い方ね。」
「同じようなものじゃないのか?もう終わったはずなのに、何故か追いかける。恋も、プロレスも自分が諦めた時が終わりの時。恋愛なら振られたから・・・って諦めたらそこまでだし、勝つことを目指さなくなったら、そこまでさ。」
「私・・・まだ」
「そう、南利美はまだ諦めていない。だから追いかける・・・」
 南がつねに伊達を追いかけているのは知っている。プロレス名鑑のライバルの項に『伊達遥』、今年の抱負は『伊達に勝ってベルトを巻く』と書いてあるのだから。
「・・・」
「なんでも勝たないと気がすまないのではなかったか?」
「・・・言うわね、社長も。」
「そりゃどーも。」
「最近私も気が弱くなっていたのかな。まだやれるわよね・・・」
「大丈夫ですよ、南さん。まだまだやれますよ。」
 私はこの間の言葉をまたいう。
「あはは。社長も馬鹿ねえ。何度も同じセリフでこの南利美さんが励まされると思ったら大間違いよ。」
「でも元気でたみたいだな。」
 私は笑顔を取り戻した南を見て微笑みを浮かべる。
「それは・・・から・・・」
 南は何かをボソッといったが私はよく聞き取れなかった。
「なに?」
「なんでもないわ。さ、戻りましょう。」
 南は笑う。雨は相変わらず降り続いているが、南の心は少し晴れ間が覗いたようだ。

「似合わないからな・・・レイニーブルーなんて・・・」
 私は呟く。
「何か言った?社長。」
「いやなんでもないさ。南には雨の色は似合わないと思っただけで。」 
「そう?じゃなにが似合うのかしら?」
「曇りかな。」
「もう!そこはもっと違う表現があるでしょ?!」
「あっはっは。」
「まったく。さっきは大人ぽい事言っていた癖に。なんなのよ。」

 この後判明したことだが、伊達は南の関節技でヒザを負傷していた。それで最後はシャイニングではなく、バックドロップだった。南を甘くみたわけではないらしい。

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2009/04/07 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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