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2024/04/19 09:42 |
NEW WINDの物語 第51話「ν遥は伊達じゃない!!」  

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその65「ν遥は伊達じゃない」に該当するお話です。)


『春』それは出会いと別れの季節だという。
「今の所別れには縁はないけどね。」
私は3分咲きの桜を観ながら呟く。
「さて、今年の新人さんはどんな子かな。素直だといいけど。それにしても俺もいい年になったものだ。」20代半ばで社長になった私も気づけば30代になっている。
「社長・・・テストのお時間ですけど。」と声をかけてきたのは伊達。
 言わずとしれたNEW WINDのエースだ。結城じゃないのか?って。 
 そりゃ結城の方が強いかもしれないけど、伊達には存在感があるし、伊達がいるだけで大丈夫という信頼感もある。伊達と南がいないNEW WINDは今の所想像できない。
 ・・・近い将来にその日が来るのはわかっているけど。
「分かった、行こうか。今年はどんな逸材がいるかな。」
「どうでしょうね。スカウトさんから・・・いい報告はありませんでした。テストでどれくらいの子がくるやら・・・。」
 伊達も大分しゃべれるようになったが、7年目になるというのにこの調子だった。

「次、25番のかたどうぞ。」
ここまで24人のテストを行ったが合格者はゼロ。この25番が最後のテスト希望者となる。
「えっ・・・伊達?」
「遥?」
ハイブリットが入団して来たときと同じような反応が起きる。私も正直びっくりしていた。
 道場に入ってきたのは伊達遥の入団時そっくりの少女。背格好、顔立ち、髪の長さまでほとんど同じだった。
「伊達・・・親戚か?」
私はとなりに座っている伊達に小声で聞いた。
「・・・」
伊達は答えなかったが、表情から読みとる限りでは・・・知っていると見た。
「宮崎県から来ました、片倉遥です。」
テスト受験に来た少女はそう答え、課せられたメニューをこなしていく。他の受験者たちが根を上げたNEW WIND式基礎トレーニングをなんなくこなした片倉遥。似ているのは容姿だけではないか。
「片倉さんはどうしてこのNEW WINDへ?」私は尋ねる。
「私は昔から似ていると言われ続けて育ってきました。それがいやだったから・・・違いを見せたいと思ってテストを受けました。」
片倉遥は伊達とは違いハキハキと喋る。この辺りは似ていない。
「誰に似ているというの?」
こう聞いたのは南だ。
「皆さんの反応をみればお答えするまでもないですが、伊達遥選手です。」
当然の答えだろう。
「なるほど。ところで、昔から伊達を知っているようだけど?」
「はい。知っています。もっとも最後にお会いしたのは、私が8つの時でしたけど。」
「伊達家と・・・片倉家は古くから・・・先祖代々親交があるんです。」
伊達がボソボソと呟くように言う。
「そう。多少は血のつながりもあるけど、それは古い話。きっと私達が似たのは遠い遠い隔世遺伝でしょう。私はずっと、伊達の遥ちゃんはそうじゃなかったって言って育てられました。大きくなってからは友達にもNEW WINDの伊達選手のニセモノ扱い。」
 思春期の少女にとってその言葉は心に傷を残したのだろうな。
「だから私は、同じ舞台で勝負したいんです。伊達遥と比較されるのは分かっているけど、私は私である!そう分かって欲しいんです。」
 誰かに似ている・・・それは長所であり短所にもなる。ハイブリットは南に似ているのを利点として、デビュー時から話題を呼んだ。これは姉妹というのもあっただろうけどね。
片倉遥は似ている事をよしとはしていない。だけど、この入団テストにおいて、その事実は逆に武器となっている事を彼女は気づいているのだろうか。
「片倉遥、合格。親御さんの許可はとってあるのかな?」
「社長!」
私の発言に選手たちがびっくりした顔をしている。
「えっ!?・・・一応とっていますけど。こんなに即決でいいのですか?」
「ああ。気持ちは伝わってきた。だけど、これだけは覚悟しておきなよ。伊達遥は偉大なるレスラーであり、ファンも多い。」
 伊達が顔を真っ赤にして下を向く。こらこらそれじゃ偉大に見えないでしょうに。
「似ているという事は、比較されるという事。”『なんだよ、似ているだけか!』って言われてしまう事だってたくさんあると思う。今までよりももっと傷つけられるかもしれない。それでも・・・片倉遥はNEW WINDでプロレスラーをやりますか?」
「やります!やらせてください!!」
躊躇なしか。
「分かった。なら採用する。ハイブリット、面倒を見てやってくれるか?」
私は隅で成り行きを見守っていたハイブリット南を指導役に指名する。
「しょうがないわね。社長の頼みならやってあげるわ。そのかわり、買い物に付き合ってもらっちゃおうかな。」
 こういうところも姉によく似ているよ
「はいはい、わかった、わかった。ともかくヨロシク頼むよ。」
「片倉遥さんよろしくね。」
「あの・・・フェニックス遥でお願いしたいのですけど。」
片倉遥はリングネームを用意して来たらしい。
「フェニックス・・・はまずくないか?」
「遥の代名詞だしね・・・」
「私は・・・かまいません。」
「はあ?」
「私は『伊達遥』ですから。」
伊達のこの意見で片倉遥のリングネームは決定した。本名は片倉遥、リングネームは『フェニックス遥』だ。
「去年が南で、今年が伊達。来年は順番的にはみことのそっくりさんが登場なのかもな。」
私は笑う。
「・・・可能性はあります。」
みことが真剣な顔をしている。
「おいおい冗談だろう?そんなにそっくりなのが連発するわけ・・・ないよな。」
「いえ、多分・・・そうなるのではないかと。」
「い!?」
「まだ分かりませんけど・・・可能性は・・・あるのではと。」
「そ、そうか。」
 おいおい本当か?そんなに似た奴っているのかよ・・・
私は同じ顔同士がタッグを組んで戦う試合を想像してみる。ちょっと怖いかも・・・


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2009/04/08 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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