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外伝? 女子プロお嬢様伝説ユイナ その2
カリスマ占い師、紫龍の占いを聞いてやる気を持ったユイナ。
 (単純)
初めて生で見るプロレスにワクワクしつつ会場へと移動する。
 気分は完全に観客だった。


☆お嬢様ファイト ローズ・ウイップ試合会場☆

 今日の会場は5000人収容のホールだが、超満員札止め。
会場は熱気に溢れている。
 客層は若い世代が中心で構成比率は男女5:5といったところ。
女性が多いのは宝塚的雰囲気があるからかもしれない。
 (男役はいまの所いないが・・・)

「すごいねえ。あんなキレイな子たちなのに、すごい。技も綺麗だし。」
ユイナはセミファイナルまでの試合を見て自分の立場も忘れ熱中している。
「呑気ですねえ。」
ま、ユイナのこういう部分は今に始まった事ではないのだけど・・・

「本日のメインイベント シングルマッチ60分一本勝負を行います。」
 リング・アナの美声が響く。
ここまでお嬢様揃いなら、リング・アナもお嬢様が努めればいいのにと思うが、普通の男性が勤めている。
 ”引き立て役”なんだろう。  

今日のメインは 氷室紫月 VS 清流野清子 。

 ゴージャス系お嬢様揃いのローズ・ウイップでは格段に目立つ日本人形のような美人が氷室紫月だ。
「へえ、イケイケ意地悪ばかりかと思ったらあんな人もいるんだあ。」
ユイナは手に持ったポップコーンをむしゃむしゃと頬張る。
 やはりお嬢様アイドルとは思えないけど・・・
「イケイケが全員意地悪なわけではないと思いますけど。あの人・・・チャンピオンなんですよユイナさん。」
「ほへえ。そうなの?」
「ええ。 この“お嬢様ミニ写真集”に書いてありますよ。」
 由里が持っているお嬢様ミニ写真集とは、単純にいえばパンフレットなのだが・・・その仕様が豪華。上質の紙を使っているし、わざわざどこかでロケをしたと思われるお嬢様レスラーたちの写真が綺麗に並んでいる。
「カメラマンも超一流じゃない。これいくらするの?」
「えーと・・・5000円ですう。」
「・・・高くない?」
「うーんでも売れ切れましたよ。最後の一冊をなんとかゲットしたんです。興行ごとに新しいのを出すそうですよ。」
「お嬢様のやる事ってわからないわ・・・」
「ユイナさんもお嬢様ですよ?」
「う、うんまあね・・・」
あいまいに笑って誤魔化すユイナだった。

 試合の方はチャンピオンの氷室紫月が綺麗な弧を描く、“紫月の舞”(ジャーマンスープレックス)でフォール勝利。
 ここで一際荘厳なテーマ曲がかかりビューティ市ヶ谷が入場してくる。
「紫月さん、そんな相手ではご不満でしょう?」
リングへとあがったビューティはマイクアピール。
「・・・」
紫月は一瞥しただけで何も言わずにリングを降りようとする。
「あらこの私を無視するなんていい度胸ですわ。」
背を向けた紫月に向かって市ヶ谷が・・・不意打ち。
ビューティボンバー(アックスボンバー似だが美しさが遥かに上)を紫月の延髄に叩きこむ。
 不意打ちのどこがエレガントなのか?
という疑問は誰しも持つものだが・・・
「紫月さんにはお仕置き・・・もとい教育が必要なようです。やっておしまいなさい。」
 さすがに”アラホラサッサー”とはいわず「はい、市ヶ谷様」と声をそろえたお嬢様ファイター達が、ダウンした紫月にストンピングの嵐を浴びせる。
 ・・・どこか優雅さを感じさせるストンピングではあるのだが、やってる事は多数での暴行である・・・美しくない。

 このビューティ市ヶ谷と氷室紫月の確執は今に始まった事ではない。
美貌と実力に絶対の自信を持つ市ヶ谷と、それとは違う美しさを持つ紫月はファイトスタイルも違うし、性格もお互い相容れないものだった。
だが、市ヶ谷財閥がバックのこの“ローズ・ウイップ”で市ヶ谷に逆らうということは、所属選手全てを敵にまわしているようなもの。
 芝田美紀のように中立な立場を守る選手もいるが、ほとんどの選手は市ヶ谷の意のままに動く。

「そんな・・・みんなでよってたかってなんて・・・ひどい・・・」
「あ、ユイナさん!」
由里が止めようとしたがすでに遅く、ユイナはリングサイドへと駆け出してしまっていた。
「もう!ユイナさんたら・・・」
由里もあわててあとを追う。
「おっと関係者以外は通れませんよ。」
ユイナは通した係員たちだが、由里の事は止める。
屈強な男二人に阻まれてしまい、由里の足は止まる。
「・・・意図的・・・」
そう由里は感じた。
「やめなさい!たった一人にこれだけの人数でかかって・・・そんなにこの人が怖いわけ?!」
リングサイドに颯爽と登場した少女がお嬢様ファイターたちに向かって叫ぶ。
「おや、誰かと思えば神楽坂ユイナさんじゃありませんの。」
ビューティ市ヶ谷が意味ありげに笑う。
「皆さん、お嬢様中のお嬢様、お嬢様アイドルの神楽坂ユイナさんのご登場ですわよ。」
市ヶ谷のマイクに客席から大歓声とブーイング。
「あらあら歓迎される方が半分、残り半分は貴方の登場をよしとしていませんわ。美しい紫月さんがボロボロにやられる姿を見たかったのに・・・ってね。」
「な・・・んてことを」
「ユイナ・・・さん、ダメ挑発に乗っては・・・」
紫月が呻くように声をあげるが、その声はユイナには届かない。
「それとも、紫月さんの代わりに貴方がボロボロになるのかしら?」
「・・・!?」
ユイナの顔に焦りが浮かぶ。
自分の状況に気づいたのだ。
(しまった・・・私なんて軽率な行動を・・・由里は置いてきちゃったし、私経験ないし・・・味方はいないし・・・この人は倒れてるし・・・どーしよー)
「安心なさい。 貴方が紫月を助けたいという心意気に免じてこの場は許してさしあげますわ。」
「ほっ・・・」
「貴方は目立ちすぎなのです。この私が直々にリングの上でオシオキして差し上げますわ。」
「えっ!」
「皆さん、この神楽坂ユイナさんは次の大会でお嬢様ファイターデビューをされます。せいぜい応援してあげてくださいね、おーほっほっほ。」
「市ヶ谷様、まずは私に対戦のお役目お与え下さいませ。」
エリカが進み出る。
「よろしいでしょう。本来なら私自ら教育して差し上げたいところですが、いきなり私が出るのも美しくありませんわ。まずエリカさんがたっぷりとお楽しみなさい。その後で私が楽しませていただきますわ。おーほっほっほ。」
「な・・ちょっと待ってよ・・・」
だがこのとき電光掲示板には 次回大会 メイン 神楽坂ユイナ VS 西園寺エリカと発表されていたのだった。
 手回しよすぎだが、もちろんこれは意図的な演出。
ユイナの正義感が強いというマネジャー田辺から得た情報を最大限活用した、ローズ・ウイップの罠だったのだ。
 まさに飛んで火にいる夏の虫・・・である。
「次回大会でお待ちしていますわよ、神楽坂ユイナ。」

 場内にはユイナと紫月と芝田が残る。
 芝田が紫月を抱えて控え室へと運ぶ。
芝田が顎で“ついてらっしゃい”と示したのでユイナはその後を追った。

◇芝田美紀 控え室◇

 ようやく通してもらえた由里も合流し、この芝田の控え室には5人の人間がいた。
長いすに横たわっている紫月と、それを心配そうに見つめるユイナと由里・・・そして芝田と芝田の付き人の伊集院光。
「どうして紫月さんを助けなかったんですか!芝田さん」
「私だって助けてあげたいのですわ。ですが多勢に無勢・・・」
「だからといって見殺しにするなんて・・・」
「あの・・・私、死んでませんけど・・・」
紫月が起き上がって笑う。
「大丈夫ですの?紫月さん。」
「はい、ありがとう美紀さん。」
「お礼言うの間違ってない・・・芝田さんはひどいのに・・・」
「そんなことありません!芝田さんだって私だって市ヶ谷さんのやり方は・・・気に入らないんです!でも・・・」
 ずっと黙っていた伊集院だったが、ついにこらえきれなくなる。
「ここは市ヶ谷財閥の経営する団体です。私たちでは・・・逆らう事はできません。」
「そんな・・・」
「しかたないんです。伊集院さんも芝田さんもお嬢様育ちとはいえ、市ヶ谷財閥との取引で大きくなったところですから。」
紫月が力なく笑う。
「他のお嬢様たちは市ヶ谷財閥の囲いのお嬢様たち。あの子たちは幼少のみぎりから市ヶ谷にべったりです。私と伊集院は違いますけどね。・・・それでも関与しないと言う名目で結局見殺しにしてるわけですから、紫月さんからすれば敵のようなものなんですけど。」
「そんな事ありませんよ芝田さん。私は芝田さんたちに親切にしていただいて感謝してますから。運命のお導きですよ。」
「紫月さんはどうして・・・?」
「私ですか?私はああいう人が嫌いだからですよ。」
「市ヶ谷が紫月さんをああやって狙うのは1対1だと負ける可能性があるからですわ。現に今紫月さんの巻いているベルトは市ヶ谷から奪ったものですわ」
「紫月さんは市ヶ谷の腰に巻かれているもう一つのベルトを奪いたいと思ってるんです。」
「もう一本のベルト?」
「ええ、ローズ・ウイップには“月のベルト”と“太陽のベルト”というものがあるんです。」
「月と太陽?」
「紫月さんが持っているベルトは月のベルト、市ヶ谷が巻いているには太陽のベルトです。」
「じゃあ挑戦すればいいのに。」
ユイナは気軽にいう。
「残念ながら太陽のベルトはタッグなんです。」
「タッグ?」
「紫月さんにはパートナーがいません。私も伊集院も紫月さんとは組めないし、力不足です。市ヶ谷と西園寺のコンビには・・・勝てません。」

「ところでユイナさんは・・・本当にエリカさんとやるんですか試合?」
伊集院がふと思い出したように言う。
「あ・・・どーしよー。」
「やれやれ、完全に嵌められましたのね。仕方ないですわね。」
「仕方ない・・って?」
「ユイナさんはやる気はあるようなので、私がデビュー戦までしごいて差し上げますわ。ローズ・ウイップの道場は市ヶ谷に支配されていますから・・・私のジムへいらっしゃい。きっちり仕上げて差し上げますわ。 あと1ヶ月しかありませんけど。由里さんもおいでなさい、紫月さんもよいですね?」
 
 そして特訓が始まった。
ユイナは市ヶ谷財閥の手回しで仕事を減らされてしまっているので、スケジュールを調整する必要はほとんどないが、それでも握手会や、イベントなどをこなしながらの特訓だった。
「驚きましたわ。意外とやりますわね。」
と芝田が認めるほどユイナには素質があったようだ。
グングンと実力を高めていくユイナは、スパーリングで伊集院から勝利を奪ってみせた。
「やった! 伊集院さんに勝っちゃった!」
「凄いですユイナさん。」
「・・・伊集院さん・・・基礎からやり直しですわね。」
「そんなあ・・・」

 そして試合当日。
「ライトニングアローとライトニングソード、ライトニングパンチ・・・っと。」
 ユイナは教えられた技を反芻する。
ライトニングアローは、後方へと投げるスープレックス技、ソードはジャンピングハイキック、パンチは裏拳だと思ってもらえば大丈夫だろう。
「ぜんぶ明るい技なんですねえ。」
「由里さん、それがユイナさんにはぴったりですからですわ。ユイナさんは明るくって、太陽のようなエネルギーを持っていますから。」
「さ、ユイナいくわよ。」
「はい、紫月さん!」
「由里、バックアップよろしくね。」
「はい。任せてください!!」

神楽坂ユイナはデビュー戦のリングへテーマ曲に乗って登場。
入場テーマは自らが歌う“お嬢様のたからもの”。
軽快な曲調なので、入場にはぴったりかもしれない。

「青コーナー 東京都出身 パウンドはアイドルの秘密~ 神楽坂ユイナー!!」
「赤コーナー 埼玉県出身 体重は秘密よ! 西園寺エリカー!!」

 ゴングが鳴り響き試合開始。
試合のはじまりは・・・ビンタ!
「いったーいわね!!」
顔を初めて張られたアイドルお嬢様神楽坂ユイナは思わず渾身の力を込めてビンタを張り返していた。
 これを食らったエリカは昏倒。
「ユイナ!カバーするのよ!!」
紫月の声が飛び、ユイナはあわててカバーする。

なんなくレフェリーの手が3度マットを叩き、ゴングがならされる。
「0分12秒・・0分12秒 ライトニング・ラッキーで勝者 神楽坂ユイナ!」

「えっ! 終わり!!?」
ユイナの張り手は張り手というよりは掌底ぎみに、エリカの頬ではなく顎をうちぬいていた。
 それにしてもリングアナも機転がきく。
ライトニング・ラッキーとはナイスネーミングだ。
「おーほっほっほ。おめでとう神楽坂ユイナさん。人気お嬢様アイドルにはただのお嬢様アイドルでは勝てませんでしたわね。」
「その声は・・・でたわね!ビューティ市ヶ谷!!」
このユイナの言い方に市ヶ谷の表情がかわる。
「人を化け物みたいに扱わないでくれるかしら。私が人並みの美貌ではない事は確かですけど。」
「で、何の用よ!」
「あらずいぶんな言い草ですこと。せっかく貴方によいお知らせをしてさしあげようと思ったのに。」
「なによ、どうせ悪巧みしてるんでしょ?」
「あら失礼ですわ。紫月さんのユイナさんにチャンスを差し上げようと思っただけですのに。」
「チャンス?」
「ええ。太陽のタッグベルトに挑戦させてあげてもよろしくてよ。ユイナさんも実績がおありのようですし。」
「市ヶ谷・・・まさか・・・」
紫月が何かに気づいたらしく市ヶ谷をにらみつけるが、市ヶ谷は意に介さない。
「次回大会でお会いしましょう。エリカさん、行きますわよ。」
「はい。」
いつの間にかエリカが立ち上がっている。
ダメージなんかはまるでなさそうな顔だ。
「やっぱり・・・わざとですね。」
紫月は呟く。
「わざと?」
「これは巧妙な作戦です。市ヶ谷は・・・ユイナさんを直接潰す気です。」
「ええっ?」
「これも運命なのかもしれませんけど・・・」

 紫月派の控え室。
「市ヶ谷・・・やりくちが巧妙ですわ。」
 芝田が呆れ顔をする。
「大観衆の前で恥をかかせ、人気を奪う・・・ですか。」
「次回大会はドーム大会です。中継も予定されていますし、お嬢様No1を自負する市ヶ谷にとっては、実力が拮抗しつつある紫月さんと、人気で上回るユイナさん。どちらも邪魔な存在です。」
「一挙に潰すわけですか。それも実力者のエリカをわざと負けさせるという手を使ってまで。」
「おかしいと思ったんです。あんなにあっさり勝てるなんて・・・」
ユイナは元気がない。
「でも・・・逃げないです。私にもできる事はあるし・・・それに事務所のためにも頑張らないといけないし。」
「よい決意ですわ。なら私も協力いたしますわ。」
芝田は笑顔をみせる。
きっと彼女には策があるのだろう・・・
「ここぞという時の合体技を練習しておきましょう!」


~続~


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2006/12/05 03:00 | Comments(0) | NEW WIND外伝

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