太陽のタッグベルトへ挑戦する事になったユイナと紫月。
二人は芝田の指導の下、特訓を重ねていった。
二人は芝田の指導の下、特訓を重ねていった。
◇1ヶ月後◇
ローズ・ウイップ初のドーム興行”華激競艶”
新日本ドームは超満員札止め。
名古屋・大阪・札幌・広島・博多・仙台・横浜では有料のシアターまで出現。
それすら完売になるという超ビッグイベントとなった。
もちろんペパービューで全世界へと配信されている。
「うわー満員だ。」
「すごいですう。」
「ローズ・ウイップ初のビッグ・イベント。神楽坂ユイナの参戦は宣伝効果大きいようね。」
「それも運命というものですね。」
「運命ですか・・・紫月さんのいう運命とは違うかもしれないけれど、全力をつくせば運命は変わると思いますわ。 ユイナさん、紫月さん、結果楽しみにしてますわよ。」
☆メインイベント☆
リング上ではすでに両チームが睨みあっている。
王者、ビューティ市ヶ谷&西園寺エリカ組 VS 挑戦者、氷室紫月&神楽坂ユイナ組
実力では王者組が上だが、人気では挑戦者組が上。
「エリカさん、今度は手加減無用ですわ。やっておしまいなさい!」
「はい!市ヶ谷様。」
エリカが先発、挑戦者組は紫月が出る。
「ユイナは控えていて。」
「でも・・・」
「大丈夫、運命は私が開くと占いに出てるから・・・」
「占い・・・?」
ユイナは訝る。
「なんでもないわ。」
紫月は微笑む。
そしてゴングが鳴った。
エリカと紫月では紫月の方が強い。
エリカもそれがわかっているからこそじっくりと攻める構えとを見せる。
「・・・!」
紫月が素早い動きを見せ、エリカの懐に潜りこむ。
「あっ!」
いきなり得意の紫龍(変形ドラゴンスリーパー)に捕らえ、エリカのスタミナを奪いにかかる。
「紫龍・・・あの占い師さんと同じ名前?」
ユイナの脳裏に占い師紫龍の姿が浮かぶ。
「あっ!!紫月さん、危ない!!」
いつの間にか市ヶ谷がリングへと飛び込んでおり、渾身のビューティボンバーで紫月の首を狩る。
紫月は紫龍を仕掛けているので防御が出来ず、ロープへと思いっきり吹っ飛ばされてしまった。
ただ、この攻撃はエリカにもダメージ。
エリカはそのままダウンしてしまう。
このローズ・ウイップルールではタッグの場合、両者をダウンさせないと試合は終わらない。
「さ、今度は貴方の番ですわ。」
紫月を仕留めた市ヶ谷は、コーナーに控えるユイナの髪を引っ張ってリングへと引きずり込む。
「いった~~ああ!!!」
髪を引っ張られたユイナは悲鳴をあげるが市ヶ谷は楽しそうに笑っている。
「あら、髪が痛いのですか?それでしたら・・・こうすれば!!」
市ヶ谷の張り手がユイナの左頬を捉える。
「っつ!」
ユイナが張り手を食らったのをみて客席から悲鳴があがる。
だが、悲鳴を上げずに、満足そうな顔をする客もいる。
ユイナの痛そうな顔をみて自分がユイナをいたぶっているという危ない妄想に走っているのだ。
自分たちには一生見ることのないお嬢様たちが上げる悲鳴・苦悶の表情・・・それを楽しみにしている危ないお客もローズ・ウイップには多い。
「いいですわ。その苦悶に満ちた表情。非情にそそります。」
市ヶ谷は今度は右手の甲をユイナの右頬に叩き込む。
「きゃう・・・」
ヒザから崩れるユイナ。
いくら鍛えたとはいえ、市ヶ谷の攻撃はユイナには重すぎる。
頼みの紫月はまだ昏倒したままだ。
「まだまだですわ!!」
市ヶ谷は髪を掴んで無理やりユイナを引き起こすと、ショートレンジのビューティボンバーをユイナの喉元に叩き込む。
「っぐぐ」
ユイナは倒れそうになるが、キッと市ヶ谷をにらみつけ、ノーモーションの裏拳を市ヶ谷の右頬に叩き込む。
これがライトニング・パンチである。
「あら、まだ戦意があったんですの?」
市ヶ谷は平然としている。
「ライトニング・パンチが効かない?」
「ライトニング・パンチ? おーほっほっほ。ライト(軽い)パンチでしたわね。」
といって市ヶ谷もノーモーションの裏拳。
「!!」
ユイナはとっさにその腕を掴み、飛びつき式の三角絞めに移行する。
「ライトニング・トライアングル!!」
ユイナは叫ぶ、
「だから軽いのです。極まってませんわよ。」
市ヶ谷はそのままユイナを高く持ち上げると、ビュティーボムでユイナをマットに叩きつける。
「きゅう・・」
白目をむいてダウンするユイナ
「終わりですわね。」
「甘い!」
「!?」
勝ち誇る市ヶ谷の顔面に大きくて硬いものが直撃する。
蘇生した紫月のヒップアタックが市ヶ谷の顔面を直撃したのだ。
「紫月さん・・・ちょっと大きいですわよ。」
「私だって好きで大きいわけではないわ。」
紫月はお尻に両手をあてる。
「スキありです!」
市ヶ谷はビューティボンバー!
だがそれを紫月は巧みにブロックし、背後へと回りこむ。
「甘いわね市ヶ谷さん。」
紫月は紫月の舞(ジャーマン)を狙う。
「甘いのはそっちですわ。」
市ヶ谷の声がしたかと思うと紫月の後頭部に衝撃が走る。
「私を忘れていたようね。」
エリカの綺麗な足が紫月の後頭部をトラースキックで捕らえている。
「しまった・・・」
「終わりですわ。」
市ヶ谷は紫月をビューティボムの体勢に捕らえ、豪快かつ華麗にリングへと叩きつける。
勝利を確信した笑みを浮かべる市ヶ谷。
だが・・・
「まだまだ・・・」
紫月は立ち上がり、油断していたエリカに背後から組み付くと“投げ放し式紫月の舞”で綺麗に投げ飛ばす。
エリカは受身をとりそこね、ダウン。
「市ヶ谷~~!!」
紫月は再びヒップアタックにいくが、市ヶ谷はそれを受け止めると、「はしたない攻撃ですこと!」とジャーマンで後方へと投げ飛ばす。
「何度も美しくない攻撃を受ける私ではございませんわ。 それにしてもさすがにしぶといですわね。 ですが、これで終わりですわ。」
市ヶ谷は紫月を無理やり引き起こし、ビューティボム。
紫月はさすがにダウンするが・・・
「まだまだなんだから・・・」
とユイナが立ち上がる。
「な・・・ほとんど素人同然のあなたが・・・なぜ?」
驚く市ヶ谷。
「私は負けられないのよ。財閥の力をバックに、つねに余裕のある戦いしかしない貴方には・・・絶対負けられないの。お金がなければ・・・何もできない貴方なんかに・・・負けられるか~~!!」
ユイナの絶叫が客席の心を捉える。
「ユ・イ・ナ! ユ・イ・ナ!」
ユイナコールに後押しされたのか、ユイナの体から放たれる力が強くなる。
「ライトニング・パ~ンチ!!」
ユイナの裏拳が市ヶ谷の右頬を捉える。
「軽いっていった・・・で・・・」
市ヶ谷の体が揺らぐ。
「そんな・・・さっきよりも重い・・・」
「人は必死になれば力を引き出すことができるのよ!」
ユイナは飛び上がると市ヶ谷の顔面にライトニングソード(シャンピングハイキック)を叩きこむ。
「そんな・・・ばかな・・・」
市ヶ谷はふらふらしながらも反撃をしようとする。
「必死に戦わない・・・貴方にはわからないでしょう!!」
市ヶ谷のビューティボンバーを交わしたユイナは市ヶ谷のバックを取る。
「市ヶ谷様!!」
またも蘇生したエリカがユイナの後頭部に体重を乗せたローリングソバットを叩きこむ。
これは効いたようで、ユイナはヒザをついてしまう。
「エリカ! ローズ・ウイップですわ!!」
市ヶ谷とエリカが同時にロープに飛び、ユイナへと突進する。
市ヶ谷のカカト落しがユイナの脳天に突き刺さり、エリカのシャイニングウイザードがユイナの顔面を同時に打ち抜く。
ユイナは前のめりにダウン。
「終わりましたわね。」
「ですね・・・きゃ・・・」
市ヶ谷の言葉に同意したエリカだったが、何者かに絞め技を食らい気を失ってしまう。
紫月の紫龍で落ちたのだ。
「紫月さん・・・あなたまだ・・・」
驚愕して目を見開く市ヶ谷。
「太陽と月が出会う時、大いなる力がうまれ、運命の扉を開く。この紫龍の占いは外れた事はありません。」
紫月の声にユイナが反応し、起き上がる。
「紫龍・・・さんだったのね・・・紫月さんは。」
「ユイナさん隠していてごめんなさいね。」
「さっきからそんな気がしてたんだ。」
「市ヶ谷を倒します。」
「はい、紫・・月さん。」
市ヶ谷のバックにユイナが組み付き、紫月が市ヶ谷の正面に立つ・・
「こ、この!!!」
市ヶ谷が暴れてユイナのクラッチを外そうとするが、なかなか外れない。
「まだ・・・こんな力があるの?!」
ユイナも投げる事ができない。
「ビューティ市ヶ谷!覚悟!!」
紫月がロープに飛ぶ。
そして繰り出した技は・・・ヒップアタック!!
市ヶ谷の顔面にめり込むと同時に市ヶ谷の体は宙に浮き、綺麗な弧を描いてリングへと後頭部から突き刺さっていった。
「ライトニング・・・アロー!!!」
ユイナ最後の技が決まり、市ヶ谷がマットへと沈んだ。
すでにエリカは戦闘不能・・・市ヶ谷もまたマットに沈み・・・ゴングが鳴らされた。
芝田が授けた合体技でのフィニッシュ。
「勝者 氷室紫月、神楽坂ユイナ組!」
ユイナの腰に太陽のベルトが、紫月の腰に太陽と月のベルトが巻かれる。
この時ローズ・ウイップの主導権は紫月たちへと移った。
「紫月さん・・・ユイナさん・・・」
市ヶ谷がベルトを巻く二人に近づく。
緊張した空気が張り詰めるが、市ヶ谷は笑顔でこういった。
「おめでとう紫月さん、ユイナさん。私は間違っていたみたいですわね。」
「市ヶ谷さん・・・」
ユイナはびっくりした表情を浮かべる。
「今回は教えられましたわ。想いの強さが強さになると言うことを。だから”今は”あなたたちを祝福いたします。」
「今は?」
と紫月。
「ええ、すぐ取り返しますわ。」
市ヶ谷は笑う。
「勝者を称えるのはここまでです。次は負けませんわよ。それまでの間ベルトは貴方たちにお預けしておきます。 私の汗が染み付いたその太陽のベルトを管理できるんですから、感謝なさい。おーほっほっほ。」
市ヶ谷は高笑いをしながらリングを後にする。
その背中にはエリカを背負って。
「市ヶ谷さん・・・変わらないのね。」
「いいえユイナさん、市ヶ谷さんはあなたとの戦いを通じて運命の扉いえ、心の扉を開いたようですよ。」
「えっ・・・そうなの?」
「はい。そうですよね、芝田さん。」
「ですわね。今までの市ヶ谷さんならエリカさんを背負って退場なんてしませんでしょうね。」
「そうなの?」
「市ヶ谷の心の扉は確実に開いたんです。これで私達の団体も変わりますね。」
芝田は笑顔を浮かべ、ユイナと紫月の顔を見る。
「さ、帰りましょうか。」
「はい。」
拍手と歓声が惜しみなく続く中、ユイナたちは退場していった。
◇エピローグ◇
この後の市ヶ谷は財閥をバックにした独裁政治からは手を引き、リング上での実力で勝負するようになったという。
もっともリング上でも一番強いので、結局市ヶ谷の独裁は変わらなかったというが。
「まったく、手がつけられませんね。」
「でもこの方が面白いです。」
「ですわね。私も華麗に舞わせていただくとしましょう。伊集院さん行きますわよ。」
「はい!」
芝田・伊集院のコンビはローズ・ウイップの名物タッグへと成長。
そして紫月は・・・
「貴方の運命の人は・・・すぐ近くにいますよ。」
どうやら今まで通り昼間は紫龍として占いをし、夜はローズ・ウイップのトップお嬢様ファイターとして活躍しているようだ。
ユイナは再び元のアイドル生活に戻ったが、ちょっぴり退屈な思いをしていた。
「はあ・・・」
「ユイナちゃんどうしたの? ため息なんてついて?」
マネージャーの田辺は声をかける。
「なんか退屈だなあ・・・って。」
「そう?スケジュールは一杯なんだけど。」
田辺はスケジュール帳をパラパラとめくる。
確かにスケジュールは埋まっているのだ。
ドーム大会のおかげでユイナ人気はさらに上昇し、スケジュールは埋まっている。
「ユイナ、お仕事の依頼が入ったよ。」
社長が声をかける。
「社長さん、断ってくれない?これ以上仕事したくないのよ。気分が乗らないから。」
ユイナは内容も聴かずに言う。
「いいのかい?ローズ・ウイップからのオファーなんだけど。」
「えっ?!」
「試合じゃないけど、ゲストと歌のオファー。市ヶ谷さんって女性の方から連絡があってね。」
「市ヶ谷さんから! じゃあ受けるね!!」
ユイナの顔に笑顔が戻り、社長も田辺もほっとした顔を浮かべていた。
ユイナと紫月が歌う”月と太陽の贈りもの”が流れエンドロールがはじまる。
☆出 演☆
神楽坂ユイナ =神楽坂ユイナ(風村プロ)
氷室紫月 =氷室紫月(NEW WIND)※特別出演
ビューティ市ヶ谷=ビューティ市ヶ谷(市ヶ谷事務所)※特別出演
芝田 美紀 =芝田美紀(ラ=ピュセルプロ)※特別出演
伊集院光 =伊集院光(ラ=ピュセルプロ)※友情出演
西園寺エリカ =西園寺エリ(風村プロ)
清流野清子 =清野まりこ(星プロ)
九部由里 =くさかべゆりい(星プロ)
田辺マネージャー=田所史郎(星プロ)
風村プロ社長 =風村正二(風村プロ)※友情出演
お嬢様ファイター=すずきまさみ、田村さや、遠藤みのり、春日部まき、飯村きりこ、岩井里香(上野女子プロレス)
リングアナ =山中宏和(上野女子プロレス)
レスリング監修&レフェリー=ダンディ須永(NEW WIND)
協 力:NEW WIND、上野女子プロレス、N’sGAME、ガールズ・ゴング、週刊女子プロレス
主題歌:「月と太陽の贈りもの」(歌:神楽坂ユイナwith氷室紫月)
挿入歌:「お嬢様のたからもの」(歌:神楽坂ユイナ)
製 作: 女子プロお嬢様伝説製作委員会
~終 演~
◇終演後◇
「紫月って凄いなあ・・・こんなに演技出来たんだ。」
「市ヶ谷さんも芝田さんも・・・凄いのね・・・」
「それに比べてアタシ達なんて・・・冒頭のセリフに出てくるだけじゃねえか。」
ジューシーペアがちょっぴりしょげている。
「でも、よくここまで演技できましたね、紫月さん。」
みことも感心している。
「ありがとう・・・自然にやってくれと言われてそれを心がけただけなんですよ。」
氷室が顔を真っ赤にして俯く。
「でも私も驚いたよ。ここまで出来るなんて凄いよ氷室。」
私は心底感心していた。
「社長まで・・・ありがとうございます。」
「かーっアタシも出たいなあ・・・映画。」
「私も!」
「私もでたいですう!」
「紫月だけずるいよね~!!」
「出てみた~い。」
ああ収拾つかない・・・
「南、なんとかしてくれ・・・」
私は南に助けを求めたが・・・
「紫月は完璧な演技だったわね。私も出たいなあ」
ああ・・・南まで・・・
「お嬢様なんてこんな風に騒ぐお前らに出来るわけないだろー!!」
うちは映画タレントのプロダクションじゃない!
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