NEW WIND18年目11月頃の中堅カードでの出来事です。
「一度で倒せなければもう一度だっ!」
龍子は再びロープへと走る。
「うおおおおおおっ!」
「えいっ!!」
みぎりも今度は迎え撃つ。左腕を横に薙ぎ払った。
「ぐっ…」
「きゃっ…」
勢いをつけた龍子のラリアートとその場で繰り出したみぎりのクローズラインが激突。二人はたたらを踏んだ。
「チッ…化け物めっ!」
キャリアに勝る龍子は素早く次の攻撃に移る。
「おおぞらっ!」
ショートレンジでのラリアート!!
「きゃああっ!」
みぎりの体が持ち上がり、再びリングへと叩きつけられる。
「いくぞっ!」
龍子は叫ぶと同時にコーナーへと駆け上る。
「くらええええええっ!」
右ひじでのダイビング背面エルボードロップ!
「ぐえっ!」
みぎりはうめき声をあげた。
「フォールだっ!」
ギムレット美月レフェリーがカウントに入るが、みぎりはカウント2.5でクリアした。
「ま、まだまだっ!」
ふらふらと起き上がるみぎりに対し、三度ロープへと走る龍子。
「うおおおおおおおおっ!」
「今ですっ!」
ラリアートで突っ込んでくる龍子に対し、体を翻しながらジャンプするみぎり。
「りゅう!!ガードだっ!」
花道から真帆の声が飛んだ。
「!?」
龍子は咄嗟に両腕をクロスさせた。
「ぐはあああああっ!!」
その直後に両腕にすごい衝撃が走り、龍子の体はロープ手前まで跳ね飛ばされていた。
「くっ…オーバーヘッドかっ!」
そう…突っ込んでくる龍子に対し、みぎりは真帆をKOしたオーバーヘッドキックをカウンターで繰り出していたのだ。
(真帆の声がなければ…危なかった…)
「りゅう!ころがれっ!!」
再び真帆の声がする。
「!?」
龍子は声にしたがい場外へと転げ落ちた。
「あらっ!あら?あらっ!」
大きく足を振り上げ龍子を蹴り飛ばそうとしていたみぎりは目標を失い思いきり空振りをしてしまった。
「きゃあっ…」
どって~~ん。バランスを崩し転倒するみぎり。
「やれやれ…こういうところは鍛えようがありませんなあ。」
ダンディ須永は嘆息するしかない。破壊力抜群のドライブシュートも空振りしてしまってはまるで意味がなかった。
「今だっ!」
龍子は素早くリングに復帰するとみぎりの髪の毛をつかんで引き起こした。
「くらえっ!」
みぎりの巨体を軽々と持ち上げる龍子。
「プラズマサンダー!!!」
龍子の必殺技プラズマサンダーボムが決まった。
「フォールだっ!」
場内割れんばかりの歓声の中、ギムレット美月レフェリーがカウントをとる。
「ワン!…トゥ……ス…」
「まだああああっ!」
みぎりは肩を上げようとするが、龍子はガッチリと抑え込んでいる。
「リー!!!」
ギムレット美月が3度目のマットを叩いた直後にみぎりが肩を上げたが、時すでに遅しであった。
「ただいまの試合はプラズマサンダーボムにより勝者、サンダー龍子!!」
パワーが自慢の大空みぎりがパワーによって敗れるという結末。
最後の強烈なボムは初代サンダー龍子、そして”最強の龍”吉田龍子のボムにも負けず劣らずの威力であった。
「完全に目覚めたな。これで面白くなる。」
風間社長はニヤリと笑った。
「ふふっ…勝った龍子クンにもそして負けたみぎりにも、意味のある試合でしたな。」
ダンディ須永は満足そうに頷いた。
「うわああああん、負けちゃいましたあああ~~~」
初めて味わう敗北に号泣するみぎり。
「誰だって負けるものことはある。その負けから何を学ぶか…だよ。」
龍子はそういってみぎりに右手を差し出した。
「はいっ…」
みぎりはその右手を握り返した。
場内からは暖かい拍手が両者に送られる。
しかし話はこれだけでは終わらない。
「…つううっ…」
控え室に戻った龍子は右手を氷水に突っ込んだ。
「あの馬鹿力…加減しろって…」
最後の握手で龍子は右手を負傷、次期シリーズの欠場が決まってしまった。
泣きながら握手に応じたため力加減を誤ったのが真相なのだが、試合には負けたものの”龍子を欠場に追い込んだ”というハクがみぎりに付加されることになる。
「なんででしょうか~~」
みぎりは困惑するしかなかった。
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