「そういえば!」
突然大きな声を出す風間社長。
「なんだコラっ!」
「そうそう…いくら素人さんが興奮していたとはいえ、うちの選手に暴行を加えたことは許されないな…この件は弁護士と相談して、キチンと賠償金は払ってもらいますよ。それ以外の用はないね。」
とどめとばかりに愚弄する風間社長。
「うるせえ!そっちになくても、こっちにはてめえに用がある!」
「そうだっ!」
二人はマイクを投げ捨てると素早くリング下に飛びおり、なんと風間社長を襲撃した。
「なにをするっ!」
体格では184cm 85kgの風間社長に分があるのだが、所詮彼は素人である。
いくら女子とはいえプロレスラー二人に襲撃されてはなすすべもなく、無理やりリングへと押し込まれた。
「うるせえっ!そっちに用がないなら、用を作るまでだっ!!」
「既成事実ってやつだぜっ!」
二人は風間社長を無理やり立たせると両腕をそれぞれ掴んでロープへと振った。
「うわああああああっ!」風間社長は恐怖に怯えた声を発しながらロープへと突っ込んでいく。
プロレスラーはいとも簡単にロープワークをしているが、あれは鍛え上げられた体だから大丈夫なだけであり、あのロープは見ためよりもはるかに硬い。
素人はロープワークなどできず、ロープに当たった衝撃でダメージを受ける悶絶するのが通常であろう。
村上姉妹はもちろんそれを狙っていたのだが、おびえた声だったわりに、風間社長はスピードをあげてロープに突っ込んでいく。
普通は恐怖で減速しそうなものなのだが…そして風間社長は素人とは思えない動きで反動をつけ、華麗なロープワークで戻ってきた。
「千秋!」
「ねえちゃん!!」
ロープで悶絶すればよし、戻ってきた場合は攻撃!と姉妹は考えていたらしく、なんとド素人の風間社長に対し、必殺のコンビネーション技である、二人同時のミドルキック”ツインシュート”を放った!!
「うおおおおおおっ!」
場内はまさかの光景に驚きの声をあげる。
「ぐえええっ…げふっ…」
ツインシュートをまともに腹部に受けた風間社長は一瞬前かがみになったのち、大きく後方に倒れたが”ばあああん!”といい音をさせて後ろ受身をとった。
「…ケッ、これで用ができただろ、風間?」
「風間っ!おまえはここまでやられて黙っているタマじゃないだろっ!」
村上姉妹は口々に叫ぶが、こんな攻撃を素人が受けたら返答するどころではないはずだ。もちろん、それをわかっていて罵声を浴びせていたのだが…
「ゲホッ、ゲホッ!」
だが風間社長はせき込むながらもすっくと立ち上がった。
「おおおおっ!」
観客がどよめき驚いて思わず腰を浮かした。
「なっ…なんだとっ!」
さすがにこれには驚く村上姉妹。
「やれやれ、スーツが汚れちまったよ。」
風間社長は何事もなかったかのようにスーツについた埃ををぱんぱんとはたいた。
「………」
「………」
村上姉妹は予想外の展開に言葉がでない。
「…オイ、お前らやっぱり素人だろ!……ズブの素人である、この私をKOできないようじゃなあ、うちのリングには上げられないな。」
風間社長は平然とした顔をしている。
「なんだとこらあっ!」
「なめてんじゃねえぞっ!」
風間社長をKOするつもりが、赤っ恥をかかされてしまった二人は動揺を隠せない。
「…だけどな、一言だけ言わせてもらおう。」
風間社長はここでいったん言葉を切った。
「な、なんだよ!」
「いっておくけど謝らねえぞ。」
気押されたのか弱気の虫が出てくる村上姉妹。
「……今のは痛かった…痛かったぞーーー!!!」
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